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セルフ・クラフト・ワールド (全3巻) [読書・SF]

セルフ・クラフト・ワールド 1 (ハヤカワ文庫JA)

セルフ・クラフト・ワールド 1 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 芝村 裕吏
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/11/30
  • メディア: 文庫
セルフ・クラフト・ワールド 2 (ハヤカワ文庫JA)

セルフ・クラフト・ワールド 2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 芝村 裕吏
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫
セルフ・クラフト・ワールド 3 (ハヤカワ文庫JA)

セルフ・クラフト・ワールド 3 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 裕吏, 芝村
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

日本で開発された、大規模多人数同時参加型
オンラインRPG〈セルフ・クラフト〉。

この電脳世界と現実世界が、相互に関わりながら
変化を遂げていく模様を描く。

「1」では、〈セルフ・クラフト〉内が舞台となる。

この世界の中では、”G-LIFE” と呼ばれる人工生命体が設定されたが、
〈セルフ・クラフト〉内での時間の経過と共に
現実世界での鳥や獣の存在に相当するものから
異形の怪物まで、様々な形態へと独自の進化を遂げていた。

 ちなみに〈セルフ・クラフト〉内の時間は、
 現実世界の100倍のスピードで流れている。

主人公・GENZ(ゲンツ)はプレイヤーとして
〈セルフ・クラフト〉にやってきた。
その目的は、”G-LIFE” の生態の研究だ。
ゲーム内のキャラクターである少女・エリスとともに旅するうちに、
謎のハッカー集団がゲーム世界内に ”侵入” しているところに遭遇する。

「2」では、〈セルフ・クラフト〉と現実世界が並行して語られる。

まずは総理大臣・黒野無明(くろの・むみょう)にスポットが当てられる。
ここで明かされるのは、〈セルフ・クラフト〉の現実世界での価値。
なんと、このゲーム世界は日本の技術革新の要となっている。
独自進化を遂げた ”G-LIFE” から様々な情報が
現実世界へとフィードバックされ、新たな技術を産み出していたのだ。

世界の各国でも同様の電脳世界の構築を目指していたが、
仮想生物の独自進化に成功したのは日本のみ。
よって、〈セルフ・クラフト〉は世界から垂涎の的であり、
常にハッカーの脅威にさらされていたのだ。

一方、〈セルフ・クラフト〉内では超戦士カトーが目覚め、
ゲームキャラの神官・えり子、半妖(はんよう)のマイドンと共に旅立つ。
カトーの目的は、〈セルフ・クラフト〉内に生きるキャラたちすべてに
”民主主義” を ”布教” することだった。

 なぜに「民主主義」? って思うのだが
 それはかなり後にならないと分からない。
 それにしても、ファンタジー世界のなかに
 民主主義を広める、って発想はなかなか斬新だ。

そして現実世界では、とてつもない災厄が起きようとしていた・・・

完結編となる「3」では、「2」の時代より25000年が経っている。
(あくまで電脳世界の中での時間経過であるが)

〈セルフ・クラフト〉内では、世界の一部が
原因不明のまま ”消失” していく現象が発生していた。
”民主主義教” を奉じる竜の高僧ミンドンは “消失” 現象の原因を究明し、
食い止めるために寺人エミカとともに旅立つ。

 ちなみに「寺人」というのは、作中では ”寺院の下働き” くらいの
 意味で使われてるようだが、本来の意味は違うみたいだ。

一方、現実世界では、「2」のラストで起こった大災厄によって
こちらも滅亡の危機に瀕していた。
〈セルフ・クラフト〉には、人類救済への希望が託されていた・・・

語り口はコメディ調なのだけど、ストーリー自体はかなり深刻。
とくに現実世界で起こる事象はかなり絶望的なのだけど
この作者の持ち味なのか、登場するキャラがみな楽天的というか
変に悲観的になって鬱になることがないのは救いだ。

ゲーム世界内では、恋愛フラグが立つと変な音楽が流れたり(笑)、
荷物は四次元ポケットみたいに収納できたり、
服装や髪型はコマンド一つで変更できたり。
まあゲームだから当然なのだが。

ゲーム内キャラのエリスが熊本弁で喋ったり
カトーとマイドンの掛け合いは往年のギャグマンガそのまんまだったりと
ユーモラスな描写も事欠かない。

エリスもえり子もエミカも、そして黒野首相の秘書AIも、
女性(?)電脳キャラがみんな実に健気なのもポイント高い(笑)。

〈セルフ・クラフト〉内の出来事と、現実世界の出来事が
必ずしも同時進行で描かれていないので、
何がどこでどうつながるのかが明かされる伏線回収は
終盤を待たなければならない。

ラストでは、滅亡に瀕した現実世界を救うために
〈セルフ・クラフト〉から ”ある技術” がもたらされるのだが・・・

このあたりは好みが分かれそう。私は今ひとつ好きになれないのだが、
滅亡から逃れる方法は作品ごとにそれぞれだからなぁ(笑)。

作者はハヤカワ文庫で既に3冊上梓しているのだけど、
本書は既刊の「この空のまもり」と同じ世界の話になっている。
というか、「この空ー」のほうが本書の前日譚という位置づけなのだろう。

田中翼くんも、その妻となった七海さんも出てくる。
七海さんは超少子化社会の中でも「ばんばん子供を産む」って
宣言してた人なのだけど、彼女の有言実行ぶりも描かれる。

あと、作品中のアイテムとして「まめたん」が登場する。
”まめたん開発に関わった伊藤夫妻”、って名前も出てくるので
「富士学校まめたん研究分室」も同じ世界の話なのだろう。

 どちらも、直接的なストーリーのつながりはないので
 本書の前に読んでおく必要はないけど、
 田中くんは後半になるとけっこう出番があるので
 「この空ー」を読んでいた方がより楽しめるかな。

 ”伊藤夫妻” はそれこそ名前だけしか出てこないのだけど
 「富士学校-」はとても面白い話なので、機会があったらぜひ。

こうなると「宇宙人相場」もつながっていてほしいのだが
少なくとも私が読んだ限りでは関連は見つからなかった。
まあ、本書の中に宇宙人が出てきたら、
それなりに厄介な話になったかも知れないからなぁ・・・


nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 01:58) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 01:59) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 01:59) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-12-16 01:59) 

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