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リミット [読書・冒険/サスペンス]

リミット (祥伝社文庫)

リミット (祥伝社文庫)

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公・安岡琢磨は放送局ラジオ・ジャパンの社員。
深夜の人気番組「オールナイト・ジャパン」のディレクターをしている。

その日は、カリスマ的人気を誇るお笑い芸人・奥田雅志が
担当することになっており、さらには、
奥田がパーソナリティとなって5周年という記念の日でもあった。

しかしその番組宛てに1通のメールが舞い込む。
「この番組が終わったら死のうと思います」

安岡は過去の ”ある事情” から、このメールを無視できなかった。
しかし上層部は挙ってこのメールを番組内で取り上げることに反対し、
奥田も5周年記念の番組を邪魔されたくないと拒否する。

そんなこんなで午前1時を迎え、番組は始まってしまう。

ところが、奥田は番組が始まると早々に
「5周年という記念の日にこんなメールを送りつけやがって迷惑だ。
 送ってきた奴はオレに対して直に謝れ」
と送信者を挑発する言動を始めてしまう。
ついでに、謝罪先の電話番号として告げたのは安岡の携帯番号(笑)。

 どうでもいい話だけど、奥田のモデルは誰だろうって考えてしまった。
 キャラ的に近そうなのは松本人志あたりかなぁ・・・?

当然ながら上層部は激怒するが、安岡は地元所轄署の刑事、
そしてリスナーたちまでも巻き込んだ ”送信者捜し” を始める。
しかし番組終了の午前3時が刻々と迫ってくる・・・

私も深夜放送はよく聞いていたなぁ。
「オールナイト・ニッポン」(あのねのね)とか
「パック・イン・ミュージック」(愛川欽也)とか
大好きだったよ・・・(遠い目)。

本署はその深夜番組の舞台裏を見せてくれるお仕事小説でもある。
もっとも、私が聞いていた1970年代と今では
ずいぶん様変わりしてるんだろうけど・・・

作中、安岡は報道機関としてのラジオ局のあり方と、
生命の重さとの兼ね合いを巡って上層部に叛旗を翻す。
フィクションの主人公としては当然の行動なのだろうけど、
実際にこんな場面はほとんどないのだろうとも思う。

 実際にこのような不審なメールなんてのは、TV・ラジオを問わず
 日夜、さまざまな番組に寄せられてるんだろうけど
 ほとんど表に出てこない。
 そこには、この作品中のラジオ・ジャパンの上層部のような判断が
 少なからず働いているのだろう。

 彼らはこの作品の中では主人公と対立する役回りなので
 悪役みたいに描かれているけど、公共放送という立場を考えれば
 決して間違った考え方ではない。
 むしろ安岡のような行動を取る者の方が異端なのだろうし、
 だからこそ、この作品が成立しているのだろう。

タイムリミットサスペンスとしてもよくできているし、
後半、安岡が繰り出す秘策はまさにラジオの特性をつかんだもの。

 もっとも、出てくる通信手段がメールとFAXだけなのは
 本書が書かれたのが平成22年(2010年)のせいだろう。
 今だったらtwitterとか他のSNSも使われるはずだろうね。

読んでいると、自分が深夜放送のリスナーだった頃のことを思い出す。
当時、もしパーソナリティがこんなことを言い出したら
自分はどうしたろう・・・なんてこともちょっと考えてしまった。

郷愁感たっぷりでとても面白く読ませてもらったけど
そのわりに評価が今ひとつなのは、
最後に出てくる送信者の正体がね・・・

いや、この人が深刻な事情を抱えていたのはよく分かるんだけどね。
ついついミステリ的にもうひとひねりしたものを期待してしまったんだ。

それは、ないものねだりだったのかな・・・


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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-31 03:34) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-10-31 03:34) 

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