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七丁目まで空が象色 [読書・ミステリ]


七丁目まで空が象色 (文春文庫)

七丁目まで空が象色 (文春文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/01/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★

楓ヶ丘動物園の飼育員たちが、
さまざまな動物がらみの事件に遭遇するシリーズ、第5弾。
今回は長編である。

語り手で主人公の飼育員・桃本、動物園のアイドル七森さん、
爬虫類担当のオタク・服部、そして獣医の鴇先生。
このレギュラーメンバーに加えてもう一人、今回は新キャラが登場する。

桃本くんの従兄弟・誠一郎は、従兄弟の背中を追うように
飼育員の道へと進み、山西市動物園に就職した。
そこへ桃本たち4人がやってきたところから物語は始まる。


楓が丘動物園で新たにマレーバクを飼育することになり、
飼育方法などのノウハウを学ぶ「研修」のために
桃本たち4人は山西市動物園を訪れる。

そこで桃本と誠一郎が久方ぶりの再会を喜び合ったのも束の間、
突如園内で爆竹のようは破裂音が連続して発生する。
それと時を同じくして、ゾウ舎からアジアゾウの
蓝天(ランティエン、繁体字だと藍天)が逃げだした。
園のゲートもなぜか開いていて、藍天は園外へ向かって歩き始める。

必死の捕獲を試みる飼育員たちを突破した藍天は、
意外な知性を発揮して麻酔銃の発砲からも逃れ、
公道へ出て住宅街を悠々と歩き出す。

ゾウというのは動物園で一番危険な生き物で、
その巨大な質量もあって足の運びや鼻の一振りも凶器になり得る。
飼育員さんが怪我をしたり亡くなったりすることも多いらしい。

そんな藍天が街中を歩きまわり、目の前にある障害物を
次々に突破してゆくのは、さながらミニ・ゴジラ的様相。

人が近づくことさえ命の危険が伴うが、そんな中で
藍天は飼育員の誠一郎だけは嫌がらない。
彼は藍天の横を一緒に歩いているうちに
藍天がどこかを目指しているのではないかと気づく。


4人組の皆さんは今回もキャラ立ちもバッチリで
シリーズものならではの馴染んだ雰囲気の中で読み進められる。

巻を重ねるうちに、すっかり「動物関係のトラブルシューター」と
なってしまった感のある4人組だけど、
今回も見事な連携でゾウ脱走事件に立ち向かっていく。
それと並行して、脱走を仕組んだ者の目的と正体にも迫っていく。

藍天自身にもある秘密が隠されており、それが事件の根底にあるのだが
不幸なのはそういう立場に置かれてしまった動物の方だろう。
それも人間のエゴが原因で。

毎回、登場する動物たちの蘊蓄が楽しいのだけど、
今回もゾウに関する話は興味深くて、
普段我々がもっていたイメージがいくつか書き換えられていく。

ヒトとゾウ、異なる種の間に完全な理解は不可能なのだろうけど
最後に明かされる藍天の目的(と人間が解釈したもの)は
それでも両者の間に何か通じるものがあるのだろうと思わせる。

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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-09 23:24) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-09 23:24) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-09 23:25) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-09 23:25) 

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