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モノクローム・レクイエム [読書・ミステリ]


モノクローム・レクイエム (徳間文庫)

モノクローム・レクイエム (徳間文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/09/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

警視庁が試験的に創設した特捜五係は、
奇妙不可思議な事象の中に潜む犯罪を専門に扱う部署だ。
メンバーもわずか3人しかいない。
係長は元捜査一課の稲葉実。あだ名は ”昼行灯”。
交通部から異動してきた萬千尋(よろず・ちひろ)、
そして元・探偵という異色の経歴の菱崎真司(ひしざき・しんじ)。

さらに本書には、もう一つの ”組織” というか人物が登場する。
奇妙な話、不思議な体験を買い取ってくれるという「怪譚社」。
ネット上で ”買い取り” を依頼すると、黒服の謎の男が現れて
体験の内容を聞き取り、そしてかなりの高額を支払ってくれる。

全五話構成で、各話ごとに事件は独立しているが
最終話で、物語の背景にある意外な事実が明かされる連作短編集だ。


「第一話 火中の亡霊」
女子大生の里奈は、深夜に異様な光景を目撃する。
彼女の隣家の3階で、戦時中の防空頭巾のようなものをかぶった人が
炎に包まれて苦しんでいる様子を。
いやあ、犯人が必死に工作した結果なのは分かるのだけど
ここまでやるかなあ・・・ってレベル。
私は好きだけどね、こういう展開(笑)。

「第二話 踊る百の目」
フリーターの陽太はバイトが終わった深夜、
家に帰るためにバイクで郊外の公園を走っていた。
そこで見たのは、闇の中に点々と光る ”目”。その数およそ100あまり。
やがてその ”目” たちは空中高く飛翔し始めた。
その体験談を買い取ると申し出たのは、「怪譚社」だった・・・
怪奇幻想ムード満点なんだけど、
これ、明るいところでみたら、けっこうお間抜けな光景かも。
それをここまで不気味にみせる手腕は流石。

「第三話 四次元の凶器」
大学生の歩は、母親の再婚が原因で引きこもりとなり、
実家の離れで一人で寝起きしていた。
しかしある夜、彼は異様な光景を目撃する。
部屋に飾ってあった模造刀が、突然血を流し出す光景を。
その夜、歩の高校時代の同級生・帆乃香が刺殺されており、
刀が流した血のDNAは穂乃香のものと一致していた・・・
これもまた、犯人の工作が涙ぐましいばかり。
人を殺すより、刀に血を流させる方がよっぽど手が込んでて
大変に見えるのだけど、それは言ってはいけない約束だね(笑)。
だけどこういう犯人のおかげで、私たちは面白いミステリを読める。

「第四話 怨霊の家」
30過ぎまで女性に縁のない生活を送ってきた下浦は、
ある日、咲良という派遣社員の女性と親しくなる。
彼女と過ごす日々に充実感を憶えていたそんな日、
たまたま病気で寝込んでいた夜、彼は不気味な体験をする。
物音に目覚めた下浦は、部屋の片隅で
こちらに背を向け、ひたすら小石を積み上げている謎の男を目撃する。
幻覚だと思い込んだ下浦は布団にくるまって寝てしまうが、翌朝、
箪笥の引き出しの中に小石が無数に詰まっているのを発見する・・・
咲良がグルであることは早々に見当がつくが、もう一幕ある。
最後のページの下浦の台詞が心に刺さる。
そして本書全体を貫くストーリーの点から見ても、転回点となる話。

「第五話 見えざる犯罪者」
特捜五係が設立された真の目的、「怪譚社」と菱崎との関係など、
物語の背景が明かされる。そこには警察内部の勢力争いも絡んできて
誰が敵で誰が味方かも分からず、事態に翻弄される千尋の姿が描かれる。


発端の怪奇性と結末の合理性、って言葉がある。
横溝正史作品を評したものだったと思うのだけど
第一話から第四話までは、それにきっちりと当てはまるつくり。
第五話の展開には怪奇性はないけれど、”犯人” の哀しみは胸に沁みる。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-01 21:52) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-01 21:53) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-12-01 21:53) 

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