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黒龍荘の惨劇 [読書・ミステリ]


黒龍荘の惨劇 (光文社文庫)

黒龍荘の惨劇 (光文社文庫)

  • 作者: 岡田 秀文
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/01/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

千葉で役所勤めをしている杉山潤之助を語り手に、
私立探偵・月輪(がちりん)龍太郎が活躍するシリーズ第2作。

基本的に明治から大正あたりを舞台にした作品は好みなので
前作『伊藤博文邸の怪事件』には飛びついて読んだんだが
評価はちょいと×××・・・

シリーズを続けて読むかどうか迷うところだったんだが
「2作目の方が出来が良い」という話も耳にしたので
「じゃもう一冊」と読んでみたら、評判に違わず素晴らしい作品。

シリーズ2作めというのは、”固定客” となるかどうかを決める
大事な作品だと思うのだけど、その結果は上の評価のとおり。


前作からおよそ10年後の明治26年。
龍太郎は官吏を辞め、東京で私立探偵となっていた。
休暇中の潤之助は彼の開いた事務所を訪れ、旧交を温める。

その事務所に依頼人が現れる。魚住と名乗ったその男は
自分は漆原安之丞(やすのじょう)の秘書だと告げる。

明治の元勲にして枢密院議長を務める山県有朋。
その ”陰の側近” として隠然たる力を誇るのが漆原だという。

その漆原が所用で大阪へ発ったまま消息を絶ち、
3日後に自宅の金庫室の中で死体となって発見された。
しかも遺体の首が切断された状態で。

漆原の妻・奈々枝は1年前に失踪しており、
現在彼の屋敷には従兄弟の健次郎、友人で医師の畠山、
そして漆原の4人の妾、喜代・すみ子・小夜子・珠江が暮らしていた。

真相解明を依頼された龍太郎は、潤之助とともに
”黒龍荘” と呼ばれる漆原の大邸宅へと向かう。

しかしそれは、漆原の郷里に伝わるわらべ唄の歌詞を
なぞらえるかのような、凄惨な連続殺人事件の幕開けだった・・・

次々に現れる首無しの死体、
衆人環視の中を跳梁する姿無き殺人者、
そして舞台は広大な旧大名屋敷(しかも座敷牢付き!)。

おどろおどろしい道具立ては揃っているのだけど
雰囲気は意外とあっさり目。
これでもかこれでもかと怪奇性を煽ることはないのだけど、
それだけに妖怪や悪霊の出番は無く、
あくまで人間の犯行であることが強調され、
なおさら不可能性が際立つことになる。

作者の目指すものは伝奇ミステリではなく、
正統派の犯人当てパズラーがだったのだろう。
実際、真相へ至る推理は二転三転し、読者を翻弄する。

文庫で約400ページなのだが、
320ページあたりで龍太郎が ”真相” にたどり着く。
これがまたよくできた内容で、このまま物語の幕を引いても
文句を言う人はいないだろうと思わせる ”ハイレベル” なものだ。

しかし、まだ80ページも残っているわけで、
読者は、このまま終わることはあるまいと思うだろう。
実際、この ”真相” は直後にひっくり返されてしまうのだが。

そして残り50ページほどのところで、仕切り直した龍太郎は
事件を構成する ”16項目の謎” を挙げていく。

そして、改めてそのすべてをきっちり説明する
”事件のからくり” を解き明かしていくんだが
いやはや、これはもう大胆不敵にして途方もない。脱帽である。
ここまで徹底して策を巡らし実行し完遂する。
これだけ肝の据わった犯人も珍しいかも知れない(?)。


もっとも、この ”トリック” は
この時代、この舞台設定でしか成立しないだろう。
現代でこれをやったら、「いくらなんでもそれはないだろう」と
石を投げられるかも知れない(笑)。

でもそれこそが ”時代ミステリ” の醍醐味だろう。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-20 20:59) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-20 20:59) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-20 20:59) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-20 20:59) 

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