SSブログ

コロロギ岳から木星トロヤへ [読書・SF]


コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/03/29
  • メディア: 文庫
評価:★★★

西暦2214年。
深刻なエネルギー不足に陥った小惑星ヴェスタの人々は、
木星前方トロヤ群の小惑星アキレスへ強制移住を図った。
アキレスの周囲を巡る人工太陽から得られる
豊富なエネルギーを手に入れるためだ。

ヴェスタの方が人口が多く、宇宙航行技術的にも秀でていた。
常備軍を持たなかったトロヤ人は宇宙戦艦アキレス号を建造したものの
衆寡敵せず、ヴェスタの軍門に降ってしまう。
人工太陽周辺のスペース・コロニー群はヴェスタ人に支配され、
トロヤ人たちは小惑星アキレスの地表に押し込められた。
アキレス号は敗戦の象徴として、小惑星アキレス地表の終戦広場に
弾薬と反応炉を抜いた状態で安置され、”見世物” と化していた。

そして2231年のある日。
アキレス号に忍び込んだトロヤ人の少年、リュセージとワランキは
なぜか艦内に閉じ込められてしまう。そして彼らは
艦底部で蠢く、差し渡し5mもの謎の ”根” を目にする・・・

2014年、北アルプスのコロロギ岳の山頂観測所では、
観測施設である大ドームが何者かによって破壊される。
そこで働く天文学者・岳樺百葉(だけかんば・ももは)は、
残骸の中に、赤紫色の巨大な ”大根のようなもの” を発見する。

意外なことに、”大根” は百葉に向かって会話を試みてきた。
やがて ”二人” はある程度の意思疎通をこなすようになる。
”大根” は自らを ”カイアク” と名乗った。
“彼” は、一種の宇宙生命体で、時間と空間を超越して
”回遊” しているらしい。

そして現在、”彼” の体の一端は2014年の北アルプスに、
もう一端は2231年の小惑星アキレスにあるのだという。
アキレスの方の一端は、何かによって ”固定” されてしまっていて
カイアクは ”身動き” ができない状態にある。

しかしこのまま放置しておくと、地球に壊滅的な被害が発生するらしい。
(カイアクの直径が刻一刻と大きくなっており、
 やがて地球の直径を超えるのだそうだ。)

百葉は、2231年にある一端の ”解放” を目指して
あらゆる手段を試み始める・・・


120年後の未来にどのように働きかけるか。
当然ながらタイムマシンなんて便利なものは存在しないので
百葉は(つまり作者は)アタマをひねるわけだ。

例えばメッセージを残すなら書物にして残す、とか
物資を渡したいなら、あらかじめロケットで打ち上げておき、
2231年にアキレスの近傍を通るように軌道を設定しておく。
このあたりは序の口で、作者はいろいろなアイデアを見せてくれる。
これが本作の読みどころだろう。

そして、それらの実現のために百葉が駆使するのは
ネットでありSNSなのだ。
それらを通じてこの事実を世界に知らせ、世界を動かしていく。

 設定だけなら1970年代SFの雰囲気もするが
 このあたりはさすが21世紀の作品だなあ、と思わせる。

時間SFでもあるので、こんなふうに時を超えて
過去と未来で情報のやりとりをしてしまったら
歴史が変わってしまうのではないか・・・?

なあんて心配もあるかも知れないが、
作者はそのへんも抜かりはない。

一連の ”やりとり” の結果、未来は微妙に変わっていく。
どう変わるのかはネタバレになるから書かないけど、
このあたりの収め方も70年代SF的かなと思う。

私は好きだよ、こういうの。

久しぶりに壮大なホラ話を読ませて頂いた。
SFはやっぱりこうでなくちゃねぇ。

nice!(4)  コメント(4) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-24 22:09) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-24 22:10) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-24 22:10) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-10-24 22:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント