SSブログ

異次元の館の殺人 [読書・ミステリ]


異次元の館の殺人 (光文社文庫)

異次元の館の殺人 (光文社文庫)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★

弁護士・森江春策が探偵役として活躍するシリーズの一編。

シリーズの準レギュラーとも言える検事・菊園綾子。
彼女が最も尊敬する、恩師ともいうべき
名城政人(めいじょう・まさと)検事が殺人罪で逮捕され、現在服役中。
しかし彼は無罪を主張し、再審を請求していた。
綾子は、犯行に使われたとされる毒物が、
名城に入手可能なものであったかどうかを鑑定してもらうために、
世界最大級の粒子加速器を擁する
放射光研究施設<霹靂Ⅹ>(へきれきテン)を訪れる。

 作中でも、和歌山毒入りカレー事件で使用された亜ヒ酸の鑑定に
 放射光施設SPring-8が使用されたことが言及されている。

その後、綾子は春策と共に
事件の関係者が集う西洋館『悠聖館』へ向かう。
しかしそこで二人を待っていたのは密室の中の刺殺死体。
さっそく捜査を始めた綾子は犯人の特定に至り
全員の前で推理を披露し始めるのだが・・・

折しも毒物を鑑定中だった<霹靂Ⅹ>の加速器が暴走を始め、
綾子は異次元の世界へ飛ばされてしまう・・・

飛ばされた先の世界は、一見すると何の変化も無いようだが
微妙なところで異なっている。
例えば、彼女の知る世界では「春策」と呼ばれていた弁護士は
"こちら" では「夏策」という名だったりする。

"こちら" の世界でも殺人事件は起こっており、綾子は捜査の結果
"元の世界" での推理は誤りであることに気づく。
新たに特定した犯人について、再び全員の前で推理を披露し始めると、
綾子は再び異なる世界へ飛ばされてしまうのだった・・・

どうやら彼女が誤った推理を口にするたびに
異世界に飛ばされてしまうらしい。
彼女が元の世界に戻るためには、正しい推理で
"真犯人" を見つけるしかないようだ。
しかし、飛ばされるたびに、たどりつく世界は
どんどん元の世界と異なったものに変わっていく。

果たして綾子は元の世界に戻ることはできるのか?


並行世界というかパラレルワールドをミステリに持ち込むのは
かなりリスクがありそうな気がする。
世界が異なればなんでもアリになってしまうから
世界Aで成立した推理が世界Bでは成立しないなんてことが
普通に起こりうるわけで、ヘタをすると収拾がつかなくなってしまう。

まあ、作者もその辺はよく分かっているようで
舞台を屋敷一つの中に限定して、登場人物も最小限、
経過時間も短くして事件をそのものをコンパクトにまとめて
読者が混乱しないように配慮していると思う。

そもそも何のためにこんな設定を持ち込んだのだろう?
って考えながら読んでた。
世界が変わるごとに綾子は推理をやり直すので、
基本的には "多重解決もの" の一種といえるだろうが
それだけのためにこんな大がかりな仕掛けが必要かなぁ・・・
なんて思ってたら、最後の最後に背負い投げを食らいました。
そうかあ、これがやりたかったんですねぇ・・・

nice!(3)  コメント(3) 

nice! 3

コメント 3

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-04-01 20:35) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-04-01 20:35) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-04-07 21:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント