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テニスコートの殺人 [読書・ミステリ]

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/22
  • メディア: 文庫

評価:★★★

創元推理文庫の新版改訳シリーズの1冊。


ボブ・ホワイト、ジェリー・ノークス、ニコラス・ヤングの3人は
大学時代からの親友だった。

極貧のうちにボブは世を去るが、残された娘・ブレンダは
ニコラスが後見人となって養育されることになった。

そして、金融街で成功したものの子宝に恵まれなかったジェリーは、
甥のフランクを養子に迎える。

そしてニコラスとジェリーは
ブレンダとフランクが結婚することを条件に
全財産を二人に贈ることを決めた。

しかし、ジェリーに甘やかされて育ったフランクは
道楽の限りを尽くす放蕩者になっていた。

ブレンダに想いを寄せる弁護士ヒュー・ローランドには、
この結婚が彼女にとって幸福なものになるとはとうてい思えなかった。

ブレンダに結婚を思いとどまらせようと、
ヒューがニコラスのもとを訪れた日、
テニスコートでフランクの死体が発見される。

現場はまさに雨が上がったばかり。
その中央付近でフランクは絞殺されていた。
残された足跡は被害者のものと、
第一発見者であるブレンダが死体まで往復したものだけだった。

ブレンダの無実を信じるヒューは、彼女から容疑を逸らすために
現場に細工をするのだが・・・


"足跡のない殺人" というのも、ミステリのシチュエーションとしては
ポピュラーなものだが、不可能犯罪専門(笑)の
名探偵ギデオン・フェル博士は、どんな種明かしをひねり出すか?

と書いてはみたものの、『ユダの窓』を読んだ後で本書を読むと、
その出来の違いにちょっと驚く。

巻末の解説を読むと、本来は中編に収めるべき作品を
無理矢理書き伸ばして長編にしたもののようで、
作者自らその "出来の悪さ" を認めているとのこと。

確かにメインのトリックはちょっと首を傾げる。
あまりにも犯人の思惑通りに被害者が動きすぎる。
これ、絶対途中で被害者は気づくだろ~って思う。
短編ならまだしも、これで長編を支えるのはちょっと荷が重い。

後半に起こる第二の殺人もちょっと雑すぎる。
いくらなんでも、あの状況で犯人に気づかないなんて
現場にいた人はみんな眼科へ行ったほうがいい(笑)。

なんだか悪口ばかり書いてるが、
ストーリーテラーとしての才能はしっかりあるカーのこと。

ニコラス邸の近所に住む熟女とか
フランクの浮気相手のショップ店員とか
その恋人がサーカスの芸人だったりとか
登場人物それぞれのキャラも立っているし
背負ったドラマもちゃんと描写されてる。

そして何より、主役カップルが迎える危機の描き方がうまい。
小賢しくいろいろ工作をするのだけど、それが裏目裏目に出て
だんだんドツボにハマっていくところとか(笑)。

ラブコメと呼ぶにはちょっと暗い話だけど
物語としてはとても面白い。

ミステリとしてなら星二つだけど、
語り口の上手さで星一つ増量ってことで。

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コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-05-31 21:28) 

mojo

@ミックさん、こんばんは、
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-05-31 21:29) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2017-06-06 21:47) 

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