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探偵の殺される夜 本格短編ベスト・セレクション [読書・ミステリ]

探偵の殺される夜 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

探偵の殺される夜 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

一年間を通して発表された短編本格ミステリの中から選ばれる
「本格短編ベスト・セレクション」シリーズの14冊目。

本書には2011年に発表された作品を収録している。


「オンブタイ」長岡弘樹
 短編集で既読。
 部下にパワハラを仕掛けている最中に
 交通事故を起こし、後遺症で視力を失った西条。
 彼のもとへ、ある日「タミ」と名乗るヘルパーが現れる。
 変わったタイトルだけど、読み終わると実に秀逸。

「白きを見れば」麻耶雄嵩
 "貴族探偵"シリーズの一編。
 駆け出しの探偵・高徳愛香(たかとく・あいか)は
 大学時代の友人に招かれて山奥の別荘へやってくる。
 しかし、別荘の地下にある古井戸のそばで
 滞在客の一人が死体となっていた。
 本格ミステリらしく理詰めの推理が展開される。
 しかし "貴族探偵" とはねえ。よく思いついたもんだ。

「払ってください」青井夏海
 カリスマ助産師・明楽先生を探偵役とするシリーズの一編。
 助産師助手の陽菜(ひな)が
 先輩助産師・聡子とともに訪れた家には
 やくざが押し掛けてきていた。
 父親が借金をしたまま行方不明になり、
 さらに勤め先の会社の金も持ち出しているらしい。
 明楽先生は、父親の事情や行方を見通してみせる。
 青井夏海って、デビューの頃は読んでたけど
 最近、ご無沙汰だったなあ。久しぶりだ。

「雀の森の異常な夜」東川篤哉
 短編集で既読。
 烏賊川市の名家・西園寺家の令嬢・絵理に
 真夜中に呼び出された探偵助手・流平。
 彼女からの相談を受けようとしたその時、
 二人の前を通り過ぎたのは一台の車椅子。
 乗っているのは絵理の祖父・庄三、そして車椅子を押す謎の男。
 行動は胡散臭いが推理力はそれなりにある(笑)探偵・鵜飼が
 活躍するシリーズの一編。
 ユーモアたっぷりの語り口ながら
 ミステリとしての構造はしっかりしてる。

「密室劇場」貴志祐介
 劇団「土性骨」の公演中、控室で俳優が殺される。
 現場には出口があったが出入りした者はおらず、
 唯一の脱出路は舞台に通じている。
 しかし、演劇公演中の舞台は観客の注目の中にあった。
 犯人の脱出トリックだけ見たらバカミスだけど
 単純なだけに案外成功しそう。
 あと、探偵役の防犯コンサルタント・榎本って
 こんなキャラだったかなあ。

「失楽園」柳広司
 短編集で既読。
 太平洋戦争直前の英領シンガポール。
 米国の駐在武官・キャンベルは現地の娘・ジュリアと恋に落ちる。
 そしてラッフルズ・ホテルの滞在客が死亡する事件が起こるが、
 ジュリアが殺人犯として逮捕されてしまう・・・
 日本のスパイ養成組織・"D機関" の
 "卒業生" たちが活躍するシリーズの一編。
 日本のスパイの真の目的が明らかになるラストの切れ味が抜群。

「不良品探偵」滝田務雄
 女子高生・浜ナナカは、恋愛のもつれから
 周到な計画のもと、かつての恋人・辰彦を殺す。
 探偵役となるのは藍須救武(あいす・きゅうぶ)という
 ふざけた名前の高校生なんだが、
 これがまた刑事コロンボなみに鋭い推理でナナカを追いつめていく。
 序盤の何気ない描写がラストに効いてくる。
 これ、シリーズ化されてるのかなあ?

「死刑囚はなぜ殺される」鳥飼否宇
 ジャリーミスタン終末監獄には、死刑囚のみが集められている。
 死刑の執行が決まった者は独房に移されるのだが、
 その独房内で二人の死刑囚が殺される。
 密室状態の独房内で、しかも放っておいても
 死刑が執行される囚人をなぜわざわざ殺すのか?
 舞台も登場人物もみな特殊だけど、
 この状況下でしか成立しないミステリではある。

「轢かれる」辻真先
 介護士の優芽(ゆめ)が働く老人ホーム『やすらぎの巣』。
 そこへ新たに入所してきた認知症の男・鷺沢は、
 優芽の母・毬絵のかつての夫にして実の父親であった。
 毬絵には、左手の手首から先がない。
 優芽が幼い頃に列車事故に遭ったためだ。
 鷺沢に出会ったことをきっかけに、
 両親の間に起こったことを探り始める優芽。
 やがて彼女は、母の事故に秘められた真実を知る・・・
 ちょっと連城三紀彦の"花葬"シリーズを思わせる。

「東西「覗き」比べ」巽昌章
 うーん、私はミステリの評論って苦手みたいです。


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