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オービタル・クラウド 上下 [読書・SF]

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 藤井太洋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫




オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 藤井太洋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

時に2020年12月。

 順当にいけば東京オリンピックも終了している(はず)。

主人公の一人・木村和海(かずみ)はフリーランスのWeb制作者。
渋谷のシェアオフィスで、流れ星の発生を予測するWebサイト
<メテオ・ニュース>を運営している。
そしてもう一人は沼田明利(あかり)。
彼女もフリーランスのITエンジニアで、
和海とおなじシェアオフィスで働いている。

和海は、各国のロケットの追跡もしていた。
打ち上げで生じたスペースデブリもまた
流れ星の "もと" になるからだ。
ある日、彼はイランが打ち上げた
ロケットブースターの2段目<サフィール3>が
大気圏内に落下することなく、高度を上げ続けていることに気づく。

折しも、著名な起業家ロニー・スマークは、
自ら立ち上げた民間宇宙ツアーのPRイベントとして、
娘とともにISS(国際宇宙ステーション)へ向かおうとしていた。

明利の協力を得て、<サフィール3>の軌道を解析した和海は、
宇宙空間を舞台にした壮大なテロの可能性に気づく。

この "スペーステロ" の首謀者は、
かつてJAXA(宇宙航空研究開発機構)の職員だった白石蝶羽(あげは)。
北朝鮮の後ろ盾で実行するこの作戦で、
彼は自らの "ある野望" を実現しようとしていた・・・

日本政府、JAXA、そしてCIA、アメリカ空軍、etc
様々な組織の様々なキャラクターが登場する。

その中にあって、
和海と明利はこのテロ計画にいち早く気づいたことで
図らずも計画阻止のキーパーソンとして活躍することになる。

本書にはジェームズ・ボンドのようなスーパーヒーローは登場しない。
科学者も軍人も諜報員も、その道のエキスパートではあるけれど
一人でこの事件を解決できるような活躍はしないし、できない。

主役の二人も、普通のIT技術者だ。
もちろん、自ら銃を持って戦ったりしないが
その代わり、彼らの本分である思考力と技術を存分に発揮して
国際的なテロ計画に立ち向かう。

しかし、蝶羽の計画はカンペキで、
クライマックスでは、テロの完遂まで目前に迫る。
絶体絶命の危機かと思われたときに、
和海が繰り出す "一手" が本書の白眉だ。

「そうか、その手があったか!」
読んでいて思わず叫びそうになったよ(叫ばなかったけどwww)

まさに "起死回生" のアイデアで、
このあたりのストーリー展開には唸らされた。

これだけでも本書は読む価値があると断言してしまおう。


今回、テログループが "悪用" した "発明" も、
使いようによっては限りない未来を開く夢のツールとなりうる。

「科学技術は、使う人の心によって幸福も不幸ももたらす」

昔から使い古され、言い尽くされてきたテーマだけど
現代科学文明の最前線における事象とテクノロジーの
オンパレードだったこの物語が、
すべてが終わったエピローグにおいて、この言葉に帰着する。

私くらいの年代にとっては、それが
ちょっとホッとするものを感じさせるのでした。


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コメント 3

mojo

はじめてのDORAKENさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-11-18 00:43) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2016-11-18 00:44) 

mojo

リホさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2016-11-18 00:47) 

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