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黒警 [読書・冒険/サスペンス]

黒警 (朝日文庫)

黒警 (朝日文庫)

  • 作者: 月村了衛
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

36年ほど前、あるTVドラマシリーズが始まった。
タイトルは『ザ・ハングマン』。

法の網の目を逃れ暗躍する悪人たちを、
「ハングマン(絞首刑執行人)」と呼ばれるグループが
悪事を世間に暴く事で社会的に抹殺する。

名作時代劇『必殺』シリーズの現代版という位置づけだったのだが
本書の終盤を読んでいて連想したのがこれだった。

 うーん、書いてて思ったが、頭の中にある引き出しの中身が古い。
 やっぱり私はオジサンなんだねぇ・・・


主人公は警視庁組織犯罪対策課の刑事・沢渡。
中国人による犯罪にうんざりしながらも、
日々淡々と、クビにならない程度に最小限の仕事をこなす。
向上心のかけらもなく、妻にも逃げられ、一人アパート暮らし。

今日の仕事は生活安全課の若手刑事・小板橋に同行しての
外国人不法就労の疑いのある店の立ち入り調査。
実は『警視庁26時』という報道番組の撮影協力だったりする。
TVスター気取りの小板橋にアゴで使われる沢渡。
すっかり引き立て役である。

犯罪組織による違法コピー商品の摘発では、
子供向けキャラクター『らくがきペンちゃん』の担当と、
全くいいところがない。

 このあたりの沢渡のダメ人間さはホンモノ。
 世間の目を欺く仮の姿などではなく、
 ホントにダメダメな刑事なのである。

『ペンちゃん』の違法グッズは、
新興の中国人組織「義水盟」が扱っているという。
「義水盟」の幹部・枕(シェン)を追う沢渡の前に
滝本組のヤクザ・波多野が現れる。
彼もまた枕を探していた。

沢渡と波多野は、かつて同じ一人の女に関わり、
彼女を死に至らしめたという "負い目" を共有する仲だった。

そんな腐れ縁の二人に、なぜか沈のほうから接触をはかってくる・・・


『ペンちゃん』がらみの一件は、意外に奥深く、
老舗の中国人組織「天老会」も絡んできて、
さらには警察組織上層部にまでその闇は及んでいた。

所詮はダメ人間の典型のような沢渡。
巨悪に対しては全く無力な存在だし、
そもそもそれをどうにかしようなんて
思いもつかないはずだった。

しかし、この後に起こるある "出来事" によって、
燻っていた彼の心に熱い炎が燃え始める。

組織を越えて、同じ志を持つ者と力を合わせ、
鮮やかに、劇的に、そして痛快に巨悪を葬り去ってみせる
沢渡の活躍が本書最大の読みどころ。
読者の期待を裏切らないラストまで彼は突っ走る。


すっかり、藤田まこと演じるところの
『必殺』シリーズの中村主水(もんど)みたいなキャラに化けた沢渡。

本書はシリーズ化されるらしいので、
彼の活躍を再び読むことができるのだろう。
これもまた楽しみだ。


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コメント 3

mojo

はじめのDORAKENさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-11-14 00:28) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2016-11-14 00:29) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2016-11-16 22:05) 

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