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怪獣文藝の逆襲 [読書・SF]

怪獣文藝の逆襲 (幽BOOKS)

怪獣文藝の逆襲 (幽BOOKS)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/03/28
  • メディア: 単行本



評価:★★★

怪獣小説のみを集めた書き下ろしアンソロジーの第2弾。

前作が「怪獣文藝」で今作が「怪獣文藝の逆襲」。
そのうち「怪獣文藝対キングギドラ」とか
「怪獣文藝の息子」とか出るのかねぇ。まさかね。

ああ、でも「三大怪獣文藝 地球最大の決戦」とかいう
タイトルだったら購買意欲がそそられるなあ・・・

閑話休題。


「怪獣二十六号」樋口真嗣
 25年前に樋口真嗣監督が書いた企画書なのだとのこと。
 ちなみに「二十六号」というのは、
 昭和二十九年に上陸した怪獣(もちろん初代ゴジラ)を「一号」とし、
 登場(発見?)順に番号を振ったもの。
 本作は昭和六十六年の出来事と設定されているので、
 それまでに24種の怪獣が出現したわけだ。
 オリンピック会場の建設が進む信越地方で、
 トンネル工事現場から現れた身長18mの怪獣に対し、
 建設技師や現場監督、自衛隊員などが協力して怪獣に立ち向かう。
 武器はトンネル掘削用の土木工作機械。
 でも本編より、最後に載ってる
 樋口監督へのインタビューの方が面白いって何(笑)。

「怪獣チェイサー」大倉崇裕
 怪獣対策が進み、怪獣そのものが脅威ではなくなりつつある日本。
 ヒロイン・岩戸正美は。怪獣の移動進路/上陸地点の予想、
 作戦区域への誘導、近隣住民の避難などを司る "怪獣予報官" 。
 しかし封鎖された作戦区域に現れた謎の一団。
 それは、怪獣に接近して迫力満点の動画を撮影し、
 ネットにアップしている "怪獣チェイサー" だった・・・
 これ、面白いなあ。シリーズ化希望。

「廃都の怪神」山本弘
 主人公は赤道直下の密林で生まれ育った少年。
 秘密結社ガダイバ教に捕らえられ、古代都市の遺跡で
 彼らの崇める神に捧げる生け贄とされようとしていた。
 やがて現れた "ガダイバ神" は体長30mにおよぶ大蜥蜴だった・・・
 生身の人間と怪獣が戦う話として良くできていると思うけど
 私としてはやっぱり「MM9」シリーズの新作が読みたいなあ。
 それとも、これもシリーズのスピンオフなのかなあ・・・

「ブリラが来た夜」梶尾真治
 50歳を過ぎてから急激な老化現象が現れた母が、
 未確認の巨大生物が現れた、とのニュースを聞いたとき
 「私を山に連れて行ってくれ」と言い出した・・・
 『ウルトラQ』のエピソードのひとつ、といわれても違和感ない話。
 さすがは短編の名手らしく、切なくて恐い。

「黒い虹」太田忠司
 クラスメイトからのいじめにあっている "僕" がのめりこんだのは
 大昔のテレビドラマ『世紀の大怪獣ドノポリカ』。
 "僕" の描いた "大怪獣" の絵に、転校生の悠矢は興味を示すが・・・
 作品の雰囲気はNHKの「少年ドラマシリーズ」に近いかな。
 作中に登場するドノポリカも、「ウルトラQ」よりは
 往年の大映怪獣映画?かなあ。

「怪獣の夢」有栖川有栖
 幼い頃から、怪獣の夢を見てきた主人公。
 間もなく還暦を迎えようという現在までの回想が
 怪獣の夢の数々とともに語られる。
 終盤で明らかになる主人公の正体にちょい驚き。
 さすがは本格ミステリの名手? って書いたら褒めすぎかな。

「孤独な怪獣」園子温
 自伝小説のようなエッセイのような作品。
 80年代の高円寺を舞台に、映画監督を目指す主人公の
 鬱屈した日々が綴られていく。
 異色作ではあるが、このアンソロジーの中では浮いてるなあ・・・
 って思って巻末の作者紹介を観たら、昨年(2015年)公開された
 "怪獣映画"「ラブ&ピース」の監督さんだって。
 公式サイトの予告ムービーが面白そうだったので
 レンタルビデオで観てみようかな。

「トウキョウ・デスワーム」小中千昭
 東京の大深度地下を縦断するトンネルの掘削中に
 直径11mを超える大きさの巨大ミミズに遭遇し、
 シールドマシンは体液で腐食してしまう。
 調査に向かった生物研究者・高光は、掘削現場で
 すべての記憶を失った謎の少女を発見する。
 私はこの手のナガイモノは苦手なんです・・・
 これはSFというよりはホラーですねぇ。

「聖獣戦記 白い影」井上伸一郎
 1274年、元の皇帝・クビライによる日本侵攻、
 いわゆる文永の役は、"神風" によって失敗に終わった。
 そして7年後、ふたたび元はやってきた。
 御家人・龍造寺家清(いえきよ)は7年前、謎の勾玉の守護によって、
 元軍を相手に奮戦した。そして今、
 もうひとつの勾玉を持つ若者・対馬小太郎に出会った・・・
 怪獣小説と言うよりは伝奇ファンタジーだけど、とても楽しく読めた。
 巻末の作者紹介に、井上伸一郎氏は元編集者で、
 「現在は(株)KADOKAWAの代表取締役専務」でびっくり。
 「小説執筆ははじめて」で二度びっくり。
 仕事柄、量産は難しいだろうけどたまには書いてほしいなあ。


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