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儚い羊たちの祝宴 [読書・ミステリ]

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06/26
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

「イヤミス」なる言葉があるそうな。
「読後、イヤーな気持ちになるミステリ」のことだという。

ならばさしずめ本書は「イヤミス」の典型じゃないかな。
私は本を読むのは、基本的に楽しみのためなんだけど
その "楽しみ" の中には、
「イヤーな気持ちになる」ってのは入ってないんだなあ。

・・・なんだけど、本書は一生懸命読んでしまったし
けっこう楽しませてもらった。
それはやっぱりこの作者だからかなあ。
本格ミステリからホラーまで詰まった連作短編集だ。

某大学に通うお嬢様たちがつくった読書サークル「バベルの会」。
各作品の共通点は、このサークルに所属する女性が登場すること。
それも主役とは限らず、端役の一人がメンバーだった、くらいの
"ゆるーい" つながりでしかない。
だから「連作」とは言っても、作品相互に
ストーリー上のつながりは全くない。

時代設定は明記されていないのだけど、かなり昔のようである。
少なくとも昭和後期以降ではないだろう。

どの作品も、ラストの一行は登場人物の台詞で終わっているのだが
この一行が実にえぐい。


「身内に不幸がありまして」
 実業家として大きな勢力を振るう丹山(たんざん)家。
 身寄りがなく孤児院で育った娘・村里夕日(ゆうひ)は
 丹山家に引き取られ、長女・吹子(ふきこ)の世話係を命じられる。
 大学で「バベルの会」に入った吹子だが、
 その合宿の直前に惨劇が丹山家を襲う。
 長男・宗太が錯乱し、ライフルで三人の人間を射殺したのだ・・・
 これはアンソロジーで既読。
 個人的にはこの短編のラストが一番インパクトがあったかな。

「北の館の罪人」
 実業家・六綱虎一郎(むつな・こいちろう)の妾腹の娘・あまり。
 母が亡くなったことをきっかけに六綱家に身を寄せるが
 現当主にしてあまりの異母兄・光次から
 "北の館" で暮らす兄・早太郎の世話を頼まれる。
 なぜか館から出ることを許されていない早太郎は、
 あまりに一風変わった買い物を託すのだが・・・
 ミステリとしては「身内に-」と「北の館-」が双璧だと思うけど、
 どちらかというとこっちの方が好みかな。

「山荘秘聞」
 貿易商・辰野家の別荘「飛鶏館」の管理を任された屋島守子。
 しかし館の整備を万端に整えても、一向に辰野家は別荘に現れない。
 冬を迎え、周囲を雪に閉ざされたある日、
 守子は遭難した登山者・越智を発見し、手当をした。
 やがて越智を救助するべく捜索隊がやってきたが・・・
 結末の意味がわかるまでちょっと時間がかかった。
 理解した後は、笑ったらいいのか怒ったらいいのか悩んだ。
 でもいちばん衝撃だったのは守子さんの年齢(笑)。
 終盤近くで明らかになるんだけど、まあびっくり。

「玉野五十鈴の誉れ」
 名家・小栗家の一人娘・純香(すみか)。
 母もまた一人娘で婿養子をもらって純香をもうけた。
 将来は婿を迎えて家を継ぐことを運命づけられた彼女は、
 15歳の時に、五十鈴という娘を使用人として与えられた。
 身分の枠を超えて親愛の情をはぐくむ二人だったが
 伯父(父の兄)が殺人事件を起こした時から運命は一転する。
 純香の祖母がとにかく凄まじい。
 この短編集の中で最強のキャラだと思う。

「儚い羊たちの晩餐」
 大学生・大寺毬絵の父は資産家である。
 財力にものを言わせて、一流の料理人を雇うことにした。
 大寺家に現れたのは美しき女性料理人・黒井と "厨娘"・夏。
 彼女らの作る料理は絶品ではあるものの、
 毎回なぜか通常の数十倍の食材を必要としていた。
 そんな料理人たちに不審を抱きつつも、毬絵の父は
 黒井に "未だ作ったのことのない料理" を作らせようとする。
 そのために毬絵が提案した料理とは・・・
 いやあもうこれはミステリではありませんね。


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