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翼のある代理人 慶子さんとお仲間探偵団 [読書・ミステリ]

翼のある依頼人: 慶子さんとお仲間探偵団 (光文社文庫)

翼のある依頼人: 慶子さんとお仲間探偵団 (光文社文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/06/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

探偵役は有名女優と同姓同名の松坂慶子さんという女性。
さらに、息子が大輔というんだから念が入っている。

この慶子さん、時と場所を選ばず、突然眠り込んでしまう
ナルコレプシーという持病を抱えていて、
物語の途中ではたいてい寝ている。
で、最後に目が覚めて推理を披露する、というパターン。
シャーロッキアンという同じ趣味を持つ仲間たちとともに
いろいろな事件に巻き込まれていく。


「女性恐怖症になった男」
 語り手は、バイト先の人間関係が原因で
 女性恐怖症になりかかっている大学生の野村敬吾くん。
 叔母の所有するマンションで暮らしているが、
 ある日シャーロッキアンの集まりに招かれる。
 ところが当日マンションの一室から火事が発生、
 焼け跡から住人の他殺体が発見される。
 しかし火災発生当時、現場は密室状態だったのだ。
 事件が解明されるにつれ、非情によく練られた
 計画的殺人だというのが明らかになってくる。
 ミステリとしては本書中いちばん好きかな。
 愛すべき性格の野村くんは、レギュラーかと思いきや、
 本作のみの出演らしい。ちょっと残念。

「翼のある依頼人」
 慶子さんの家に迷い込んできた白いインコ。
 インコの "しゃべる" 言葉の断片を手がかりに、
 飼い主を探し始める慶子さんとお仲間たち。
 インコの飼い主を突き止めて終わりかと思いきや、
 事態は意外な方向に進んでいく。
 これも良く出来てる。
 冒頭の数ページから、このラストはちょっと想像できないだろう。

「見えない射手の、立つところ」
 文庫で約210ページと、本書の約半分を占める。
 長めの中編というか短めの長編というか。
 量に比例して、盛られている謎も大きい。
 ガンスミス(銃器職人)を営む弓弦家に招かれた慶子さん一行。
 当主の娘の芳(かおる)と、その婿の雄太郎の夫婦は、
 3年前に一人息子の泉を喪っており、
 それが弓弦家に暗い影を落としていた。
 客人たちが屋敷の中を見学している時、突如轟く銃声。
 慶子が目撃したのは、誰もいない場所で空中に静止した銃。
 そこから発射された弾丸が一人の人間の命を奪った瞬間だった・・・
 まさしくタイトル通りの、魔法のような犯行だ。
 いったいどんな解決をつけるのだろうと興味津々だったが・・・
 うーん、これはどうなんだろう。
 不可能ではないが、これを "可能" と言っていいのかなあ・・・
 かなり強引な大技を繰り出してきたが
 大技過ぎて土俵の外へ出てしまったような・・・
 (これじゃわからんよなぁ)
 これ、かなり評価が分かれそうな気がする。
 「スゴいじゃん」って素直に驚く人と
 「ありえん!」って受け入れない人と。
 私は「スゴい」3割「ありえん」7割かなあ・・・

「黄色い夢の部屋」
 慶子さんの夫の一臣は、やり手の実業家だがそのぶん敵も多い。
 松坂家の一室から、一臣の苦しむ声が聞こえる。
 家人達が集まってくるが部屋は中から鍵がかかっていた。
 扉を壊して中に入った人たちが見たのは、血まみれの一臣。
 そして首には絞められた跡が・・・
 古典的名作のオマージュにして本書のトリ。
 両親を心配する息子の視点から語られるが
 ここにもひとひねり。


実は慶子さんは初出ではなく、既刊の「マスグレイブ館の島」が
シリーズ第1作だったとのこと。全く気がつかなかったよ。

なんだか「これで完結」となってもあまり違和感ないつくりだけど
巻末の解説によると、まだ続きがあるのかな。
「マスグレイブ-」から本書の間が11年あったそうなので
次巻もそれくらい先だったりして。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2015-10-12 21:50) 

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