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人類資金 [映画(レンタル)]

人類資金 [Blu-ray]

人類資金 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: Blu-ray



「読んでから観るか、観てから読むか」
大昔の角川映画のキャッチコピーだけど、
映画と小説のメディアミックスによる本作品は
まさにそれに該当するのだろう。

「人類資金」小説版全7巻を読み終わった後、ふと考えた。
映画の公開はもう2年近く前のはずだから、
当然もうビデオがレンタルしてるだろうことに思い至って、
「じゃあ観てみよう」とばかりに近所のTSUTAYAへ。
そしたら3本だけ置いてあった。2本がDVDで1本がBlu-ray。

DVDは2本とも貸し出し中だったのでBlu-rayの方を借りた。
驚いたのはレンタル料の安さ。何と税込み108円。

ちょっと前まで1本400円くらい払っていたような気がするんだが
意外なくらい価格破壊が進んでいたのですねえ。
まあネット配信もあるし郵送レンタルとかもあるみたいだから
わざわざ店まで足を運んで借りる人は減ってるんだろうなあ。
私自身、レンタルビデオ借りたのは久しぶりだし、

閑話休題

さてこれから、この映画の感想を書いていこうと思うんだけど
けっこう不平不満を書くことになると思う。
なので、この映画を愛して止まない人からすると
かなり不快な文章になっているだろう。このことを予め断っておく。


以下の感想は「読んでから観た人」(つまり私)のもの。
「観てから読んだ人」の感想はまた異なると思う。


観ながら思ったことをつらつら書いていくが、
一番の問題は、脚本のわかりにくさだと思う。

例えば映画の冒頭は原作通り終戦の日で、
日銀から笹倉雅実大尉が金塊を運び出し、舟に積み込んでるシーン。
金塊を隠匿する理由、この資金が戦後日本で果たすであろう役割、
このあたりを笹倉大尉が滔々と語る。
物語の根本設定だから、その説明のためだろうなあとは思うのだが
いかにも説明口調でしかも長い。

現代編でも、ロシアで鵠沼を抱き込んでの詐欺の部分は
やっぱり台詞が説明的で長い。
まあ、引っかける仕掛けを観客に分からせるためなんだろうが。

しかし、その後は途端に説明不足になる。

特に、もっとも重要で、物語のキーになる、
カペラ共和国で "M" が行おうとした "実験" の内容が
今ひとつわからない。これは致命的。

もちろん、原作を読んでる私は分かってる。
だけど、その私が思う。こんな描写じゃ、
原作読んでない人には分からないんじゃないか、と。

 少なくとも、もし私が原作読んでなかったら絶対に分からないと思う。
 もちろん、映画の描写だけでよく分かる人もいると思うのだけど
 そういう人にとっては、以下の文章は全くの的外れなのだろう。
 「すみません、アタマ悪くて」とまず謝っておきます。

だから、"実験" 自体がもたらす "効果" もよく分からない。
"M" が命を賭けてまでそれを実行するに至った理由も。

そして、真舟はそういう "M" の理想に触れ、
彼の "覚悟" のほどを知ったからこそ、彼を救い出すために
巨大資本に立ち向かう決意をしたはずなんだが、
真舟にそこまで思い込ませるような描写があったとは
思えないんだよなあ・・・

これはラストまで尾を引く。
クライマックスの国連総会での石の演説に至っても、
カペラで起こっていることがいかに画期的なことで
世界を変える可能性を秘めているということが今ひとつ伝わってこない。
だから、本来もっとも感動的なシーンのはずなのに
感動できないんだよなあ・・・


次は、日本映画では宿命とも言える製作費の問題と
物理的な映画の尺との兼ね合いの問題。

要するに、原作で盛り上がるところが
映画ではカットされたり縮小されたりしてること。

真舟と石がバイクを使って "市ヶ谷" の追っ手から逃げ回るシーン。
これはばっさりなくなった。

真舟と美由紀が "M" の救出のために "市ヶ谷" から脱走するシーン。
ここは首都高の高架上を舞台に
巨大トレーラーや手榴弾を使ってのド派手なシーンなんだけど、
代わりに登場するのはオープンカー1台のみで場所はトンネルの中。

真舟と石と美由紀が、大群衆に紛れてニューヨークの街中を、
"清算人"・遠藤を相手に追いつ追われつするシーン。
ここも、酒田の親分を巻き込んでサスペンスたっぷりに
ハラハラドキドキするはずが・・・

 もちろん、小説の完成は映画の完成より後なので
 上記のシーンは企画の段階では存在せず、
 小説化の段階で追加されたのかも知れない。
 映画の製作スタッフに言わせると
 「そもそもそんなシーンがあるなんて聞いてない」
 なのかも知れないけど。

でも、当然ながら「読んでから観た人」からしたら、
「あのシーンはどうした?」とか「なんであそこがこうなるの?」
という疑問が湧いてくるのが当然だよねぇ・・・


演出の問題もあるように思う。

例えば、作中で真舟がローゼンバーグを相手に株の仕手戦を仕掛ける。
そのために株の売買のプロ集団が必要になるのだけど
小説では、真舟が日本最大の広域暴力団の親分に直談判して、
彼ら専属の凄腕チームを借り受ける。
映画では、弱小ヤクザの親分・酒田が
知り合いのチンピラみたいなのを集めてやらせてる。
もちろん、チンピラが実はすごい切れ者の集まりで・・・
っていう演出もアリだと思うし、
そんな集団が世界を牛耳る財閥に一泡吹かせる。
そこがうまく描ければ、すばらしく面白いだろう。
でも残念ながら、スクリーンの中の彼らは
やっぱりチンピラの集団にしか見えないし、
相手が一泡吹いたかどうかもよく分からないんだよねえ・・・

ディズカバリー・オイルの株価が高騰して
世界中の株式市場が大騒ぎになるのだけど、
そのへんがよく分からない。
画面に株価の数字がどーんと出てきて、
数字が変わったり色が変わったりしても
素人の私には判断できないんだもの。
それとも、現代日本に生きてる人は、当然の常識として
あの画面で株の世界で重大事が起こってるって分かるのでしょうか。
このあたりも、もうすこし分かりやすい見せ方は
なかったのだろうか・・・って思う。


最後に役者さんの問題。

主役の真舟は佐藤浩市。これはまあ妥当。熱演してると思います。

石は森山未來。これはもうどんぴしゃりの配役。
イメージも原作通りだし、ロシア語や英語を話すシーンも
堂に入っていて、もう素晴らしいの一言。
惜しむらくは上述のように脚本や演出が彼を生かし切れてない。

美由紀は観月ありさ。実は観る前はミスキャストだと思ってた。
普段CMでしか観てないので、イメージに合わないなあ・・・と。
でも、動いて話す美由紀を観たらそんなに違和感がなかったのは意外。
まあ、理想を言えば20代後半~30歳くらいで
アクションもこなせる女優さんがいれば一番いいんだけどね。
志穂美悦子みたいな人って、今いないよねえ・・・

"M" は香取慎吾。私は基本的にジャニーズタレントって嫌いなんだけど
観る前は「意外とあってるかも」って思ってた。
(いい意味で)坊ちゃん育ちで、明るく優しい性格で
しかし理想に殉じる覚悟をもった青年、という役どころだからね。
ところが蓋を開けてみると、やたら台詞回しが重々しい。
なんだか、「軽く見られちゃいけない」と肩肘張っているみたいで
「本当は好青年」という部分が見えてこない。
だから、本気になって彼の命を救うために
真舟が乗り出してくるところがいまひとつ共感できない。

ローゼンバーグの代理人、ハロルド・マーカスはヴィンセント・ギャロ。
この人、はっきり言って良く知らないので論評はしないけど
クライマックスでハロルドが
真舟・美由紀・"M" と対峙するシーンが冗長すぎる。
石の演説で自らの "負け" を悟るのだけど、
上述のように内容がよく分からない演説ではねえ・・・

"清算人"・遠藤はユ・ジテ。韓国の俳優さん。
台詞がほとんど無い上に、最後の行動が意味不明。
わざわざ外国から招いたのにああいう使い方じゃ失礼だと思うよ。

笹倉暢彦は仲代達矢。
日本映画の重鎮で、流石に貫禄充分なんだけど
これも生かし切れてないように思う。
切り捨てたはずの "M" に、一転して救いの手をさしのべるのも唐突。
終盤の株の仕手戦に介入して、真舟に助け船を出してるんだけど
観客には彼が何をしたのか分からないんじゃないかなあ。
製作スタッフだけが分かってて、観客は置いてきぼりな気がする。


なんだかもっとたくさん書きたいことがあった気もするんだが
そろそろやめましょう。


結論として、映画のスタッフは、原作の内容を
「何とか2時間20分という映像に収める」ということに一生懸命で、
「この映画で観客を楽しませる」ところまで
気が回ってないような気がする。

原作者の福井晴敏も脚本に加わってるけど、ここは思い切って
別の人に脚本を書かせた方が良かったような気もする。
なまじ原作に関わってるから、自分の「思い入れ」が
自由な脚本化の邪魔をしてるような気もする。

同じ予算、同じ上映時間でも、もう少し見せようがあった気もするし。
じゃあどこをどうすればいいんだ、って聞かれても困るんだけどね。


福井作品は長大なものが多くて、正直なところ映画には向かないと感じる。
個々のシーンは「映画にしたら見栄えするだろうなあ」って思うけどね。

実は一番合うメディアはTVアニメじゃないかと思ってる。
ずっと以前に書いたけど、「終戦のローレライ」なんて、
2クールくらいの深夜アニメにしたらもう最高だと思うんだけどね。

もし映画にするんなら、「6ステイン」収録の短編とかが
長さ・分量としてはいちばんちょうどいいかな。


私がもし映画のプロデューサーだったら、迷わず
「C-blossom case729」を映画化するなあ。

如月行には、福士蒼汰みたいな
仮面ライダーか戦隊もの出身のイケメン、
ヒロイン松宮香奈には広瀬すずみたいな若手女優さん、
そして自衛隊の全面的な撮影協力があれば
ものすごくカッコいいラブストーリーになると思うんだけどねえ・・・


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