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最後の敵 [読書・SF]

最後の敵 (河出文庫)

最後の敵 (河出文庫)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/10/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

巻末にある初出の記載によると、本作品は
1981年から、今は亡きSF専門誌「SFアドベンチャー」に連載され、
1982年に単行本化。文庫化が1985年とあるので
たぶん私が読んだのはこの文庫版だろう。
ということは、29年ぶりの再読ということになる。
道理で内容をほとんど忘れてるわけだ・・・
ちなみに第3回日本SF大賞受賞作。


遺伝子工学を専攻する大学院生・森久保与夫(もりくぼ・よぶ)。
彼は原因不明の性的不能状態に陥っていたが、
彼の悩みはそれだけではなかった。
"自分には戦うべき敵がいる" という、強迫観念にも似た思い。
心の底には、かつて自分は藻類だった、あるいは肺魚だった、という
"太古からの生物進化" をなぞるような、謎の "記憶" 。

与夫は精神分析医の鳥谷部麻子(とやべ・あさこ)の元を訪れて
治療を受けるが、二人はなぜか強く惹かれ合うものを感じる。

そして、与夫の前に現れた謎の女性、大木うるわし。
彼女の語る「カローン」とは何か。
赤いマフラーの美青年・醍醐銀(だいご・ぎん)は敵か味方か。

物語が進むにつれ、与夫の暮らす世界は不気味に変貌を遂げていく・・・


山田正紀がデビューしてから7年後の作品らしいんだけど
テーマ的には処女作「神狩り」と共通しているような気がする。
私には、本書における与夫の "敵" である「○○」は、
ほとんど「神」とイコールのような概念に思えるから。

 ていうか「○○」を「神」と入れ替えても、
 この作品は成立してしまうんじゃないかなあ・・・

この頃の山田正紀の作品のテーマを
「超絶対者への挑戦」って書いた文章を
むか~し読んだ記憶があるんだが、まさに本書は
およそ人が戦えるような相手じゃない強大な "敵" に対し、
果敢に挑み続ける人間たちを描いている。
それも、超人的なヒーローじゃなく、本書の与夫のように
不器用で自分に自信が持てないような "弱い" 人間が、
勇気を振り絞って圧倒的な強者に立ち向かっていく。
これがなかなかいいんだなあ。

山田正紀の描く冒険小説には、
"プロフェッショナルvs素人" を描いた作品がたくさんある。
例えば「火神(アグニ)を盗め」とか「謀殺の弾丸特急」とか。
常識的にはまず勝てないプロを相手に、素人ならではの発想と行動力で
プロの盲点を突いて逆転していく、ってパターン。

このあたり、山田正紀の好きな創作テーマは
SF/非SFを問わず、一貫しているんだろうと思う。

やっぱり山田正紀は面白い。改めてそう実感した。

・・・と思ったら、なんと「謀殺のチェス・ゲーム」が
ハルキ文庫から再刊されてるのを見つけてしまったぞ!

うーん、読もうかなあ・・・
でも、30年くらい前の初読の時に、ものすごく感動した
「インベーダー・サマー」(菊地秀行)を、何年か前に再読したら
ちょっとがっかりしたことがあったので
(たぶん私の感性が鈍ってしまったんだね)
「チェス-」は読むのが恐ろしくて手が出せないでいる。
「この本はめちゃくちゃ面白かったなあ・・・」って
キレイな思い出に留めておいた方が幸福なのかなぁ。

いやいや山田正紀だからきっと大丈夫?
それとも・・・?


最後にどうでもいいことを2つ。

冒頭にも書いたけど29年ぶりの再読で、
内容もほとんど憶えていなかったんだけど
なぜか最後の最後、結末まで40ページを切ったあたりの
クライマックスシーンだけは憶えていたよ。
よっぽど印象が強かったんだろうねえ・・・
ちなみに、与夫と銀が○○○で○○をするシーンです。

あとひとつは、本書に登場する大木うるわし女史。
れっきとした女性だし、顔だけ見ればけっこう美形らしいんだが
読んでいると、どうしてもマツコ・デラックスが浮かんできてしまう。
まあその堂々たる体躯と、話し方が彼女(?)にそっくりなんだよなぁ。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-10-28 21:11) 

mojo

makimakiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2014-10-28 21:12) 

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