ポストコロナのSF [読書・SF]
評価:★★★
本書の刊行は2021年4月。コロナウイルス流行に伴う3回目の緊急事態宣言(最大21都道府県が対象)が出た頃だ。
未だ出口の見えないコロナ禍の中で、19人のSF作家が「コロナ後」の世界をテーマに競作した書き下ろしアンソロジー。
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いずれも文庫で20~30ページほど。
「黄金の書物」(小川哲)
「オネストマスク」(伊野隆之)
「透明な街のゲーム」(高山羽根子)
「オンライン福男」(柴田勝家)
「熱夏にもわたしたちは」(若木未生)
「献身者たち」(柞刈湯葉)
「仮面槽」(林讓治)
「砂場」(菅浩江)
「粘膜の接触について」(津久井五月)
「書物は歌う」(立原透耶)
「空の幽契」(飛浩隆)
「カタル、ハナス、キユ」(津原泰水)
「木星風邪(ジョヴィアンフルウ)」(藤井太洋)
「愛しのダイアナ」(長谷敏司)
「ドストピア」(天沢時生)
「後香(レトロネイザル) Retronasal escape」(吉上亮)
「受け継ぐちから」(小川一水)
「愛の夢」(樋口恭介)
「不要不急の断片」(北野勇作)
いままでの日常生活がコロナによって変質していく様子を描いたもの、
コロナに適応した生活に移行したはずが次第に異様な状況へ変質していってしまうさまを描いたもの、
コロナと闘う医療従事者を描いたもの、
コロナが蔓延してもいっこうに進歩しない人間の愚行を描いたもの、
抗菌滅菌に異様に拘る人間を描いたもの、
コロナ禍での男女の愛欲の有り様を描いたもの、
ウイルスが次第に毒性を高めて人類を滅亡へ追いやっていく様を描いたもの、
遙か遠未来にまでウイルスの脅威が残っている世界を描いたもの・・・
コロナ禍のもと、将来に対する漠然とした不安から悲観的かつ過激な妄想まで、いろんなことを考えたと思うのだけど、SF作家さんはそれらを独自に拾い上げて作品に仕立て上げている。
歳をとるに従って、新しいSF作家さんの作品に対して理解に苦しむことが多くなってきた(笑)のだけど、今回は「コロナ禍」というテーマの縛りがあるせいか、比較的分かりやすいものが多かった印象。
タグ:SF
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