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超動く家にて [読書・SF]



超動く家にて (創元SF文庫 み 2-3)

超動く家にて (創元SF文庫 み 2-3)

  • 作者: 宮内 悠介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/04/12
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

 16篇収録の短篇集。
 統一的なテーマはなく、内容もバラエティに富んでいる。


「トランジスタ技術の圧縮」
 かつて『トランジスタ技術』という雑誌があったのは知っている。買ったことはないけど、かつて『ASCII』を購読していた経験から、この手の雑誌にはやたら広告ページが多かったのは想像がつく。
 表題はこの『トラ技』から広告ページを切り取り記事ページだけに再編する、という架空の競技を指す。時間と仕上がりの綺麗さを競うわけだ。
 登場するのはかつてのチャンピオン、そしてそれを打ち破った元弟子。
 主人公はかつてのチャンピオンに弟子入りし、新たなチャンピオンを目指して元弟子と対決することになる。
 シチュエーションは少年ジャンプのバトルものを彷彿させ、対戦シーンでは『包丁人味平』を思いだしてしまったよ。

「文学部のこと」
 この世界の文学とは、発酵食品のようなもの(えーっ)らしいです。

「アニマとエーファ」
 物語を語る能力を与えられた人形・アニマと、人間の少女エーファが、祖国の内戦に巻き込まれていく話。

「今日泥棒」
 小松左京に『明日泥棒』って作品があったが、それとは関係ないみたい。

「エターナル・レガシー」
 主人公の前に現れた男は名乗る。「俺はZ80だ」
 MSXの妖精のようなもの、らしい。といってもZ80やMSXを知ってる人はもう少ないだろうなぁ。私だってよく知らないし(おいおい)。

「超動く家にて」
 密室殺人を扱ったSFミステリなんだけど、これは立派なバカミスだ。

「夜間飛行」
 夜間の偵察飛行しているパイロットが、ナビを務めるアシスタント・インテリジェンスと会話を交わしている・・・のだが。

「弥生の鯨」
 海女さんが海に潜ってメタンハイドレートを採ってくる・・・というイメージが斬新。そんな孤島での、少年と少女の物語。

「法則」
 ”ノックスの十戒”(ミステリにおける「べからず集」)が万物を統べる世界の物語。

「ゲーマーズ・ゴースト」
 駆け落ちした男女を含む4人が乗り込んだ車を、黒塗りのライトバンが追ってくる話。ミステリのようでSF。

「犬か猫か?」
 最後に掲げられた参考文献がオチになっていて、ちょっとびっくり。

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
 隕石が降った翌日、末期癌で寝たきりだった父が失踪してしまう・・・
アンソロジーで読んだことがある作品。

「エラリー・クイーン数」
 wikipediaの記事形式をそっくりなぞってるのが面白い。

「かぎ括弧のようなもの」
 ”「” と ”〈” はどう違うのでしょうか。やっぱり違うんでしょうね・・・

「クローム再襲撃」
 『クローム襲撃』+『パン屋再襲撃』。
 ウィリアム・ギブスンも村上春樹も私とは合わないようです。

「星間野球」
 宇宙ステーションで、地球への帰還権を書けて野球盤で対決する男2人。
 ”消える魔球” が懐かしい。

 この中でベスト3を選ぶとしたら「トランジスター」「アニマとー」「スモークー」かなぁ。


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