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ジョン・ディクスン・カーの最終定理 [読書・ミステリ]

ジョン・ディクスン・カーの最終定理 (創元推理文庫)

ジョン・ディクスン・カーの最終定理 (創元推理文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ジョン・ディクスン・カー生誕100周年記念祭が日本で開かれ、
その展示物の一つとして1冊の本がやってきた。

それはイギリスで発行された未解決事件の記録集だったが
カー自身による短い走り書きが随所にあり、
その中にはカー自身の推測通りの真相が明らかになった事件もあった。

しかしその中で、カー自身が「推理で解決した」との書き込みをしながら
未解決に終わったものが1件だけあり、その事件は
”ジョン・ディクスン・カーの最終定理” と呼ばれていた。

 本書のタイトルは、数学者フェルマーが「証明した」と書き残しながら、
 その内容を記さなかったために後世の数学者が証明に奔走したという
 「フェルマーの最終定理」からとったものだ。
 ちなみに証明されたのは、フェルマーの死から330年後だという。

記念祭開催を4日後に控え、その本は三浦半島にある屋敷にあった。
そこは大学生・友坂の一族が所有する別荘で、
大学教授テイラーと、その教え子である大学生たちが集まっていた。

カーの書き込みをもとに、推理を巡らせる学生たちだったが・・・

本書では、3つの謎が提起される。

まずは「未解決記録集」から ”フランドル魔弾事件”。
自宅で病床にあった老婦人が、窓に向けて銃弾を放った。
同時刻、運河を挟んで対岸にあった治療院に入院していた
金貸しが銃弾を受けて死亡した。
しかし治療院は、老婦人の家からはどんな銃でも届かない距離にあり、
しかも、老婦人が撃った窓は、治療院とは正反対の方角だったのだ。

カー自身の書き込みをヒントに、学生たちは事件の真相に迫る。

2つめは、タイトルでもある ”ジョン・ディクスン・カーの最終定理”。
連続放火殺人事件が起こっていたイギリス。
マッギルとシュナイダーの2人は、かつての放火犯・ギャレットを訪ねる。
しかし彼らが目撃したのは、部屋の絨毯の上で炎に包まれている
ギャレットの焼死体だった。しかし、絨毯には一切の焼け跡はなく、
しかも遺体の左手の肘から先だけが生身で残っていた。

これにカーは ”解決した” と書き残したのだ。

そして3つめは、現在の事件。
別荘の中庭で友坂の死体が発見される。凶器は水中銃だったが
犯行時刻には現場は衆人環視の状態にあり、
犯人の出入りは不可能だったのだ・・・

文庫で270ページほどの中に3つも密室/不可能犯罪を放り込んで
ものすごく読者サービスにあふれた作品なのは間違いない。

ただ、現実の事件と並行して過去の事件が語られ、解決されていくので
どうにも現実の事件のほうの印象が薄くなってしまう。
私は現代編の登場人物、とくに学生たちの名前とかが
さっぱり頭に入らなくて終盤まで全員のキャラが把握できなかった。

 たんに、私のアタマがの記憶容量が小さくて
 なおかつマルチタスクできないだけなのだろうが・・・

私としては、最初に提示される魔弾事件の解決が好きだなぁ。
実現の可能性は低そうだが、あの時代ならアリかも、って思える。

放火事件と友坂殺害事件の解決には、
ある ”発想の転換” が適用されるのだけど、
このあたりはちょっと島田荘司的なモノを思い出させるかな。

終盤、この2つの事件に意外な共通点があることが分かるのだけど
ラストが今ひとつ不明瞭なんだよねぇ・・・
このへんも、私としては減点ポイントなんだけど。

これを余韻と取るか、中途半端と取るか。


nice!(3)  コメント(3) 
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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-25 01:42) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-25 01:42) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-11-25 01:42) 

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