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ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた [読書・ノンフィクション]


ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた (新潮文庫)

ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた (新潮文庫)

  • 作者: 青山 通
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 文庫
「ウルトラセブン」とは、1967年(昭和42年)10月1日から
TBS系で毎週日曜日19:00 - 19:30で放映された特撮テレビドラマ。

「ウルトラQ」「ウルトラマン」に続くウルトラ・シリーズの3作目であり
いわゆる「ウルトラ・シリーズ」の最高傑作だ、と書いても
異論を唱える人は少ないだろう。

日本特撮の雄、円谷プロダクションが総力を挙げて製作にあたり、
当初は3クール39話の予定が、30%を超える視聴率を
たたき出したことから10話増やされ、全49話が放映された。

そして1968年(昭和43年)9月8日、
最終話「史上最大の侵略(後編)」が放映された。

満身創痍の体で、死を覚悟したウルトラセブンの最後の戦い、
そして暁の光の中、宇宙の彼方へと消えていく彼の姿に
滂沱の涙を流した少年たちも多かろう。

私もその一人であり、
本書の著者・青山通(あおやま・とおる)氏もまた、その一人だった。


「ウルトラセブン」は音楽監督・冬木透氏の作曲による
素晴らしいBGMの数々でも有名だが、
クラシックの名曲がそのまま使われたところもある。
その中でも特に有名なのが上記の最終話だ。

物語も最終盤近く。
モロボシ・ダンが、実は自分がウルトラセブンであることを
アンヌ隊員に告白するシーン。

ダンが告白した台詞の直後から、実に劇的な
オーケストラとピアノ・ソロの楽曲が流れ始めるのだ。
ここはウルトラセブン屈指の名シーンであり、
音楽の面でもクライマックスになる。

当時の私はストーリーを追うのに精一杯で音楽にまで気が回らなかった。
その後何度か再放送でも観たけれど、
「なんかいつものBGMとは違うな」くらいは感じたかも知れないが
その ”正体” まで知ろうなんて思わなかった。

ところが、青山氏は違う。彼は初見の時から大きな衝撃を受け、
この曲の正体を突き止めることを決意する。
青山氏は1960年生まれであるから、このとき8歳。

 私の方がほんのちょっぴり年長ではあるが大差ない。
 彼とは同世代と言っていいだろう。

本書ではまず、彼の7年に及ぶ探索の道のりを描く。
同時に、当時の家庭における音楽環境の変遷も描かれる。
とくにカセットテープ・レコーダー普及のくだりなどは懐かしい。

そして中学3年になった青山少年は、
TVのN響アワーで演奏されていた曲を聴いて
「これだ!」っと思い当たる。

そのとき青山少年から「これ何の曲?」と聞かれて、すかさず
「シューマンのピアノ協奏曲よ」って答えるお母さん。
親子でそろってクラシック番組を観ているあたり、
彼の音楽への鋭い感性は、その家庭環境によって培われたのだろう。

しかし青山少年の ”探索” は、実はここでは終わらない。
そして、彼のクラシック音楽への傾倒がここから始まることになる。

その理由は本書を読んでもらうことにして、
前半は、このウルトラセブン最終回の曲名探索にはじまり、
クラシック音楽鑑賞の醍醐味を知っていくまでの過程が描かれる。

後半では、ウルトラセブンの中から
”音楽と物語が密接に関連した” 3作として
「第四惑星の悪夢」「ダーク・ゾーン」「狙われた街」を、
”音楽が突出して印象的な” 5作として
「ひとりぼっちの地球人」「悪魔の住む花」「零下140度の対決」
「ノンマルトの使者」「セブン暗殺計画(前篇・後編)」の
計8作を取り上げて、音楽的な面から詳細に解説を加えている。

著者の青山氏は大学卒業後に音楽之友社に入社、
『週刊FM』の編集にも携わっており
本書の中でも当時のFM放送のブームについて、ちょっと語っている。
このあたりも懐かしいねえ。
”エアチェック” なんて単語、久しぶりに目にしましたよ、はい。

懐かしさと面白さであっという間に読み終わってしまった。

同じ曲でも指揮者・演奏者が異なれば、異なる演奏になる。
そのあたりの差を説明する部分はかなり専門的で
ちょっと素人には分かりかねる部分もあるのだが
そういうところは軽く読み飛ばしてしまいました(おいおい)。

それでも本書が十分にユニークで、”ウルトラセブン愛” と
”クラシック愛” に満ちていることはよく分かる。

ウルトラセブンが好きな人、クラシックが好きな人、
どちらが読んでも楽しめるだろう。

もちろん両方好きな人は、本書を100%楽しめる。
そういう人が羨ましい。


久しぶりにウルトラセブンを観たくなったよ。

どうせコロナ騒ぎで外出できないんだから、
ちょっとネット配信で観てみるのもいいかも。

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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-12 00:41) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-04-12 00:42) 

めとろん

mojoさん、こんばんは。

mojoさんにこの本を教えて頂き、早速購入し、週末の大雨の日に一気に読了いたしました。

いやあ、とても面白かったです!私も音楽的には門外漢で、「譜例」など見てもチンプンカンプン(死語?)でしたがそれを補って余りある面白さでした。

先日のmojoさんに頂いた「麒麟がくる」についてのコメントに一気に妄想が膨らみました。
駒「いいえ。十兵衛さまは十兵衛さまに変わりないじゃないですか。」
光秀「ありがとう」

素敵な本を紹介して頂き誠にありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。
by めとろん (2020-04-20 18:11) 

mojo

めとろんさん、こんばんは。

>早速購入し、週末の大雨の日に一気に読了いたしました。
>いやあ、とても面白かったです!

それはようございました。
やっぱり同じものを見て育ってきた方が書くものは心に響きますよね。

>私も音楽的には門外漢で、「譜例」など見てもチンプンカンプン

私も幼少の頃にちょっぴりピアノを習ってたんですけどね。
練習が嫌で嫌ですぐに止めてしまいました。
続けていたらなあ・・・って、このトシになって思います(苦笑)。

>「麒麟がくる」についてのコメントに一気に妄想が膨らみました。

コロナのおかげで収録がストップしてるんですよね。
6月半ばくらいには収録済みのストックが尽きるとか・・・

現在の感染の様子を見ていると、
連休明けの収録再開は難しいんじゃないかなあ・・・

もう「年末に放送終了」なんて ”恒例” は無視して、
とにかく当初予定の話数まで完走してほしいですね。
最終回の放送が2021年でも22年でもいいじゃないですか。

 まあ、埼玉県北部のほうには吉沢亮君の渋沢栄一を
 心待ちにしている人もいるのでしょうが・・・


ありがとうございました。
また、よろしくお願いいたします。

by mojo (2020-04-22 02:10) 

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