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夏のロケット [読書・青春小説]


夏のロケット (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/05/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

新聞社で科学部に所属する記者・高野は、
過激派のアジトが爆発した事件を扱うことになった。

原因はミサイルの密造らしいが、現場から発見された破片から
精密な誘導装置や噴射制御の技術を持ち込んだ
高度で本格的なものだったことが判明する。

高野は高校時代、天文部のロケット班に入り
火星到達に憧れる仲間たちと共に、ロケットの打ち上げを目指していた。
しかし、打ち上げには成功しないまま卒業の時を迎え
仲間はそれぞれの進路へとバラバラになった。

斑のリーダー的存在だった北見は押しが強い体育会系。
いまは一流商社で宇宙事業部に配属されている。

仲間から「教授」と呼ばれていた日高は大学で航空宇宙工学を専攻、
大学院を終えて宇宙開発事業団の研究者となった。

手先が器用な職人肌の清水は大学で材料工学を専攻、
大学院を終えて大手特殊金属加工メーカーの研究者となった。

そして秀才だった氷川は、親の後を継いで医者になるはずが、
なんとロックミュージシャンに転身、ミリオンヒットを連発して
いまは芸能事務所の社長に収まっている。

高野は、事件について助言を請うために日高に連絡を取ろうとするが
彼は配属先の種子島宇宙基地から失踪していた。

やがて高野は、日高たち ”旧ロケット班” の仲間が密かに集まり、
衛星軌道へのロケット打ち上げを目論んでいることを知る。
うまくいけば、民間で初のロケット事業の立ち上げになる。

同僚の純子とともに、彼らの ”プロジェクト” に
協力することになった高野だが、
過激派が密造していたミサイルに使われていた技術は
日高から流出したものではないか、
との疑惑を持った警察も、彼の行方を追っていた。

”旧ロケット班” のメンバーたちは
太平洋の無人島に集まって計画を進めることになる。
氷川が資金を提供し、北見が必要物品の調達と補給を担当、
日高と清水がロケットの製作にあたる。

彼らは、警察の手が伸びる前にロケットを完成し、
打ち上げに成功することができるのか・・・時間との闘いが始まる。


サスペンス・ミステリっぽく始まるのだけど
その要素は早々と背景に退いてしまって、
高校時代の、不完全燃焼に終わった自らの夢に
再挑戦する男たちの物語へと移行する。

あのころは金も才能もなかったが、十数年の時を経て、
メンバーそれぞれが ”新たな力” を得た。
いまなら、あの頃の夢をかなえることができるのではないか?

まさに、人生の第二ラウンドへの挑戦。
登場人物はやや薹が立っているが、王道の青春小説だろう。

もちろん、たった5人で宇宙まで行こうというのだから
そう簡単にうまくいくはずもなく、試行錯誤あり仲間との衝突ありと、
このへんの ”お約束の展開” もまた王道。


打ち上げそのものは、物語のラストで決着がつくのだけど、
彼らの進む道はそこで終わらない。
メンバーそれぞれが、第三ラウンドへの挑戦を始めるところまでを描いて
本書は幕を閉じる。

ロケット1本を作り上げるためには、
長年にわたる膨大な技術の蓄積が必要になる。
そのへんのハード/ソフト面の描写がリアリティを高めている。
テクニカルな話も多いので、堅苦しく感じる人もいるかも知れないが
馴染めなかったら読み飛ばしてしまっても大丈夫。
それでも十分、爽やかな読後感が味わえると思う。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-22 21:58) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-22 21:58) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-22 21:58) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-11-24 21:47) 

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