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ファースト・エンジン [読書・その他]


ファースト・エンジン (集英社文庫)

ファースト・エンジン (集英社文庫)

  • 作者: 未須本 有生
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/03/17
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

岩見沢原動機は、ロケットから自動車まで幅広く手がける総合メーカー。
特に航空機用ジェットエンジンでは国内シェア第1位を誇る。
しかし航空自衛隊の戦闘機用エンジンに関しては、
海外製のライセンス生産に甘んじてきた。

そんな岩見沢原動機に転機が訪れる。
防衛庁が新規導入を目指す純国産超音速機、
そのジェットエンジンを開発することになったのだ。

既存の国産ジェットエンジンIJ-3に、アフターバーナー(AB)機構を
付加する研究を続けてきた本庄直樹を中心に開発チームが組まれた。
中でも、最重要となるAB開発は、グループ長の城内(きうち)朋美、
気鋭の新入社員・中河和弥など11名が充てられた。

前半は新型エンジンの開発にまつわる奮闘が描かれていくのだが
トラブルというのは「モノ」だけに潜んでいるのではない。
何事もそうかも知れないが「ヒト」もまた開発の障害となるのだ。

社内には、コストがかかって成功の可能性が低い
新型エンジンの開発にリソースを注ぎ込むよりも、
ライセンス生産で着実に利益を上げていればそれでいい、
という思考の者も少なからずいて
彼らは陰に陽に本庄たちの足を引っ張りに来るのだ。

そんな妨害を振り払い、AB機構を付加した新型エンジンは
燃焼実験の日を迎えた。
試運転は順調に推移したが、終了直前に突然異常を来し、爆発してしまう。
それによって中河が死亡し、プロジェクトは中止となってしまう・・・

チームは解体、メンバーはそれぞれ異動となり、
本庄もまた事故の責任を問われて閑職へと左遷されてしまう。

辞職を考えて中河の遺族に会いにいった本庄だったが、
彼の父親から逆に叱咤激励される。
中河の遺志を無駄にしないためにも、
エンジンは完成させなければならない・・・


なおざりにされた事故の原因を突き止め、自らの復権を果たす。
その上でエンジン開発プロジェクトを再開させる。
そのためには人脈も腹芸も駆使するし"外圧"だって利用する。

後半は、技術者としての矜恃を賭けて行動してゆく本庄が描かれる。
技術者というと、モノ相手の仕事で、
対人関係は苦手な人が多そうなイメージがあるが
本庄はその点、人間関係をうまく利用することに長けていて、
ある意味 ”スーパー技術者” として描かれている。
後半の本庄の活躍に溜飲を下げる人も多いだろう。

実際には、こういう人はなかなかいないだろうし、
現実の社会では、一旦失脚してしまえば、
再度浮上することはまず不可能なんじゃないかとも思うが。

NHK番組「プロジェクトX」の小説版という趣もある。
大手メーカーで航空機設計に関わっていた作者でなければ
書けない話ではあると思う。

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コメント 3

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-26 20:33) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-26 20:33) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-01-26 20:33) 

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