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機動戦士ガンダムNT(ナラティブ) [アニメーション]


「機動戦士ガンダム」と名のつくシリーズは数あれど、
その中でも本家と言える「宇宙世紀(U.C.)」を舞台にした作品群に連なる
新作アニメーション映画である。

G-NT.jpg
一年戦争(U.C.0079)時に、ジオン軍のコロニー落としを
事前に察知した3人の子どもたち、ヨナ、ミシェル、リタ。

戦後、孤児となった3人は連邦軍のニュータイプ研究所で
被験者として研究対象となる。

グリプス戦役が終了した(U.C.0088)後、
ヨナは地球連邦軍士官学校へ入学、モビルスーツパイロットとなる。
ミシェルは巨大財閥ルオ商会会長ルオ・ウーミンの養女となり、
組織の中で頭角を現してゆく。
そしてリタは、U.C.0095に能力を見込まれて
ユニコーンガンダム3号機・フェネクスのテストパイロットとなるが、
起動実験中に暴走事故を起こして消息不明となっていた。

U.C.0096には「ラプラス戦役」(『機動戦士ガンダムユニコーン』)が
起こり、本作の舞台となる時代はそのさらに1年後となる。

U.C.0097、行方を絶っていたフェネクスが再び地球圏に姿を現した。

その追撃・捕獲を任務とするシェザール隊とその母艦・ダマスカスに
新型モビルスーツ・ナラティブガンダムとそのパイロットとしてヨナが
増援としてやってくる。

そしてルオ商会運用の宇宙輸送船ローズバッドとともに
ミシェルもまたフェネクス追撃に同行する。

一方、ジオン共和国軍のゾルタン大尉が率いる部隊もまた
フェネクス確保を目論んで行動していた。

フェネクスを巡る連邦軍とジオン軍の戦いは、やがて
思いもよらぬ巨大な災厄と化していくのだが・・・


メインのストーリーは、『機動戦士ガンダムユニコーン』の
外伝として執筆された中編小説『不死鳥狩り』をベースに、
大幅に増補・再構成したものと思われる。

90分という尺に収めるためもあるのだろうが
ヨナ・ミシェル・リタの幼少期のエピソードが断片的かつ短くて
3人の間に何があったのかが把握しづらい。

そのせいか、主人公のヨナの行動に今ひとつ感情移入がしにくく
なかなか物語に ”乗れ” なかった。
終盤近くのミシェルの台詞までいくと
だいたいのところが見えてくるので、もう一度観ると
また受け止め方が変わってくるのかも知れない。

あと、好みの問題なのだろうが本作のキャラデザには
最後まで馴染めなかったなあ。
特に主役のヨナの造作がどうも好きになれないのには参った。

私は小説でも映像でも、キャラに ”入れ込んで” 観る人間なので
この映画は、私に対して ”分が悪い” 作品だったように思う。

メカ作画の素晴らしさはもう折り紙付きなのだろうけど
それに比べてキャラの作画がちょっと安定さを欠いていた気も。
このへんは円盤では修正されるのかな。


ここから先はネタバレになりそうな内容を書くので
未見の方はここで止めておきましょう。


観ていて一番気になったのは、
”ニュータイプ” と ”サイコフレーム” の扱い。

この二つが揃ったら不可能はないのではないか?

『逆襲のシャア』では星を動かし、
『ユニコーン』ではコロニーレーザーすら蹴散らし、
今作ではヘリウム3の核融合まで引き起こす。

そしてさらには、死者の ”魂” までも取り込んでいく。

リタは十数年後に起こる人類の危機を予感するし
ニュータイプは過去も未来も見通すのか。
極大の世界から極小の世界まで、さらには時間も超えて。

「人の意思の力が物理法則をもねじ曲げる」

フィクションでは往々にして描かれることではあるし、
実際にそれが起こると強烈なカタルシスを感じることも事実だが・・・

”ニュータイプ” ってそんなにものすごい力を秘めたものだったの?
そして、”ニュータイプ” をそういう風に描いてしまっていいの?

なんだかどんどんエスカレートしていってしまって
これからの「宇宙世紀ガンダム」の物語が
みんなこういうパターンになっていってしまいそうな心配が
頭をよぎる。

”ニュータイプ”(または強化人間) と ”サイコフレーム” があれば
どんなカタストロフだって引き起こせるし、
それを止められるのもまた
”ニュータイプ”(または強化人間) と ”サイコフレーム” だけ、
なんて話になっていってしまいそうな。

まあ、最後の最後には ”人の可能性” を示して終わるし、
それを描いてこそのガンダムなんだろうけど。


 なんだか、狂った ”ニュータイプ” によって
 ”サイコフレーム” が暴走して、
 すべての人類の ”意思” を吸い込んでしまい、
 最後にはその ”サイコフレーム” を搭載した
 モビルスーツが1機残るだけ、なんて未来を想像してしまった。
 どこぞの第六文明人みたいである。
 劇中での ”II(セカンド)・ネオ・ジオング” の戦いぶりを観て
 イデオンを連想した人もいるんじゃないかなあ・・・


なんだか否定的なことを長々と書いてしまったけれど
これからの宇宙世紀シリーズがどう描かれていくのか
ちょっと心配になったので。

誤解されないように書いておくと
私もガンダムファンの端くれのつもりである。
ファーストガンダムの放映時は大学3年生だった。
それから40年近く、まあつかず離れずって感じでつきあってきた。

現代日本における最高のアニメコンテンツの1つであるのは間違いないし
これからも面白い作品を生み出して頂きたいし、
それで楽しませてもらいたい。
純粋にそう思っている。

上に書いた心配が杞憂であることを願っている。


最後に余計なことを。

映画の終わった後、『閃光のハサウェイ』の製作予告が。
うーん、あの原作を
どの程度改変するのか、それともしないのか・・・
もしもそのまま映像化するんだったら
観に行くかどうか二の足を踏んでしまうなあ・・・


あともう一つ。

この映画『ガンダムNT』にはノベライズが出ている。
これも手元にあるので近々読む予定。
読んだら、この映画に関する感想も変わるかな?

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はねゆき

mojoさん、こんばんは。
NTに関する感想、興味深く拝見いたしました。
キャラデザに関しては、自分もウ~ンと思いました。
この方はUCの時、安彦氏から挿絵を引き継いだ方と記憶しています。
(勘違いだったら申し訳ないのですが。)
当時、少なからずがっかりしたことを覚えてています。
本作でも、UCのキャラ達との違和感がありましたね。
サイコフレームの無双ぶりは、UCのラストでコロニーレーザーをしのぎ
連邦の戦力を無効化したときに「いくらなんでも・・・・。」とは思いました。
ファーストガンダムの時にガンダム一機では戦局を変えることはできない
ようなことを言っていたように記憶しているのですが、今は違うようです。
 本作でうれしかったのはバナージが無事だったことです。UCのラストで
どのような形でバナージがかえってきたのか、不明だったので、
無事に人として戻っていることで安心しました、
 月並ですがミネバと幸せになってほしいと思ってしまいます。
同じく「それでも」というセリフをいった古代と雪に対しても同じく幸せに
なって欲しいのですが・・・・・・・。
それだはまた、お邪魔させてください。

by はねゆき (2018-12-23 11:09) 

mojo

はねゆきさん、こんばんは。

>キャラデザに関しては、自分もウ~ンと思いました。
>この方はUCの時、安彦氏から挿絵を引き継いだ方と記憶しています。

公式サイトを見ると、メインキャラクター原案が高橋久美子さん、
キャタクターデザインが金世俊さんとなっています。

小説版UCの挿絵を引き継いだのは虎哉孝征さんで、
こちらは『終戦のローレライ』のマンガ版を描いた方です。
今は「ガンダムエース」で宇宙世紀ガンダムのマンガを
連載されてるみたいですね。

>本作でも、UCのキャラ達との違和感がありましたね。

まあ、『宇宙世紀のガンダム』といえば、どうしても
安彦良和のキャラデザインを思い浮かべる人は多いでしょうから。

>サイコフレームの無双ぶりは、(中略)「いくらなんでも・・・・。」

ニュータイプを描かなかったらガンダムではない、
とも思いますが描き方が問題かな、と。
超能力的描写を否定するものではありませんが、
リアリティとの兼ね合いをもうちょっと考えて欲しかったかなぁ。

個人的には、もう少し ”普通の人間” の戦いを観たいとも思います。
『第08MS小隊』とか『0083』とか
ニュータイプがほとんど登場しない作品も好きなんですよねぇ。

>ガンダム一機では戦局を変えることはできない(中略)今は違うようです。

観終わってみて考えたのですが、40年近くも経つと
ファンのほうも世代交代していますから、今作のような描き方のほうが
若い人には ”受け” がいいのかも知れません。

私のような ”オールドタイプ” な価値観のファンは
これから減っていくのでしょうねえ・・・

新作に対してあんまり文句ばかり言ってると、
そのうち ”老害” って呼ばれるようになったりして(笑)。
(もうすでに呼ばれてるかも知れませんがwww)

>本作でうれしかったのはバナージが無事だったことです。

私もバナージの登場は素直に嬉しいのですが、
あの役回りはミシェルにやって欲しかったなあ・・・とも思いました。

 でもそしたら『UC』や『映画版Zガンダム』の二番煎じかなぁ・・・

まあ、ミシェルはそこまでできるキャラでなかった、
ということなのかも知れませんが。

>同じく「それでも」というセリフをいった古代と雪に対しても
>同じく幸せになって欲しいのですが・・・・・・・。

これは全くの同感です。
気がつけば3月1日までもう2ヶ月ちょいです。
楽しみに待ちましょう。


ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

by mojo (2018-12-23 20:48) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-23 20:49) 

mojo

はじドラさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-23 20:49) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-23 20:49) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2018-12-23 20:50) 

はねゆき

mojoさん、こんばんは。
ナラティブのキャラデザの件おっしゃる
通りです。
虎哉さん、ごめんなさい。
なんで、そう思ったのでしょう・・・・。
勝手に思い込んでいたのでしょうね、
本当にすみませんでした。(歳かな)
福井氏のローレライは小説(終戦のローレライ
)は読んだのですが、コミカライズは未読
です、ちょっと読んでみたいなぁ。
コミカライズといえば、現在、クラッシャー
ジョウのコミックが連載されていますね、
こちらの絵はかなり安彦氏の雰囲気に似せて
書かれています、ハーロックや999のコミカライズも第三者によってなされていますし
かつてヒットした作品が、別の漫画家さん
によってリメイクされることが多くなって
ますね。ちょっとこわいなと思います。
それでは、またお邪魔します。
by はねゆき (2018-12-24 00:33) 

mojo

はねゆきさん、こんばんは。

>福井氏のローレライは(中略)、コミカライズは未読です

マンガ版「終戦のローレライ」については
このブログでも記事に書きました。
2007-11-29の記事です。よろしかったらご覧下さい。

>クラッシャージョウのコミックが連載されていますね、

それは寡聞にして知りませんでした。読んでみようかな。

>かつてヒットした作品が、別の漫画家さんによってリメイクされる
>ちょっとこわいなと思います。

良い方に考えれば、その作品に時代を超える力があった、
ってことなのでしょうけど、
意地悪く考えれば、新しいネタを考える余裕がなくなったのか
旧作ファンを当て込んで楽に金儲けができそうと踏んだのか・・・

そうなると、漫画作品がリメイクばかりになってしまうのも
考えものですかね。

リメイクされて、喜ぶファンばかりではないでしょう。
中には怒り狂う人もいるでしょうし・・・

なにより、新しいものを作り出そうという気概が
業界からなくなっていってしまうのがいちばん心配ですかね。
攻めの姿勢から守りの体勢に入ってしまうと、あとはジリ貧・・・
てのが、だいたいのお決まりのパターンですから。


ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

by mojo (2018-12-24 01:24) 

はねゆき

mojoさん、こんばんは。
クラッシャージョウのコミカライズですがイブニングKCより
「クラッシャージョウ REBIRTH」というタイトルで1巻がでてます。
それからハセガワ(模型メーカー)から「ファイター1」が来月1月に
発売予定になっています。(新規金型です。)
なぜ「ミネルバ」からじゃないんだろうといツッコミはありますが
ここは素直に喜びたいと思います。
ここ最近になって動きが出てますので、ぜひまたアニメ化を期待
したいですね。
年末の寒波が襲来して、結構積雪も多いです。車の運転もひやひや
ものです。
mojoさんも、身体や事故に気をつけて、よいお正月をお迎えください。
来年もmojoさんにとってよい年になりますようお祈り申し上げます。
それでは、またお邪魔させていただきます。

by はねゆき (2018-12-29 07:30) 

mojo

はねゆきさん、こんばんは。

>「クラッシャージョウ REBIRTH」というタイトルで

私も確認しました。
画風が安彦氏にそっくりで驚きました。
これならキャラの顔をはじめ、作画に文句を言う人は少ないでしょうね。

なぜか原作の2巻からの開始なんですね。
たぶんアルフィンをはじめから出したかったのでしょうが(笑)。

>ハセガワから「ファイター1」が来月1月に

原作の刊行開始からだと42年、映画化から数えても35年ですか。
それを考えるとたいしたものですね、

>ぜひまたアニメ化を期待したいですね。

今の技術ならさぞかし素晴らしいものができるでしょうから
私も期待してしまいますね。

「ダーティペア」の方も新作が刊行されましたし、
高千穂氏にはまだまだ頑張ってもらわないと。

>mojoさんも、身体や事故に気をつけて、よいお正月をお迎えください。

体に ”ガタ” が来ているって、以前の記事にも書きましたが
年明け早々にも医者の世話になりそうです(おいおい)。

まあ、ここらできちんとメンテナンスをしておいて
後顧の憂い無く(笑)3月1日を迎えようと思ってます。


ありがとうございました。
はねゆきさんもよいお年をお迎えください。

by mojo (2018-12-29 23:25) 

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