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水族館の殺人 [読書・ミステリ]


水族館の殺人 (創元推理文庫)

水族館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

第22回鮎川哲也賞受賞作である前作「体育館の殺人」に続く第2作。

創元推理文庫恒例の英語での副題は
「THE YELLOW MOP MYSTERY」

前作は「THE BLACK UMBRELLA MYSTERY」だったので
「THE + 色 + 物体 + MYSTERY」というパターンか。

夏休み中の8月初旬。
風ヶ丘高校新聞部部長・向坂香織は2人の部員を引き連れて
横浜丸美水族館へ取材に訪れる。

館長・西ノ洲の案内で館内を巡る香織たち。
個性的な職員たちと触れあいながら見学を進めていくが
体長3メートル近いサメの展示室まで来たとき、
突如として水槽の中に男が一人飛び込んできた。
そして次の瞬間、サメは男の首筋に食らいついていた・・・

死んだのはサメ飼育員の雨宮。
水槽の上部にあるキーパースペースの状況から
何者かが雨宮をサメの前に突き落としたものと思われた。

事件の起きた時刻に水族館内にいた職員など
容疑者となり得る関係者は11名。
しかし警察が聴取を進めていくと
全員に強固なアリバイがあることが判明する。

捜査に行き詰まった刑事・袴田は、妹の柚乃へと連絡を取る。
前回の事件を見事に解決した高校生、裏染天馬を呼び出してもらうためだ。

風ヶ丘高校でトップクラスの秀才にも関わらず
なぜか自宅ではなく学校にある部室棟の一角に住み着き、
そこでアニメ三昧の生活を送っているダメ人間。
しかし類い希なる推理力を持つ。それが裏染天馬。

ヒロイン兼ワトソン役は前作と同じく、
風ヶ丘高校卓球部1年の袴田柚乃。
(たぶん表紙に描かれてるカワイイ子がそうだろう)
面倒くさがる天馬を引っ張り出して捜査に向かわせるのだが
その過程で彼にさんざん振り回されてしまうのは前回と同じ。
なんと今回はスクール水着まで着させられてしまうことになるのだが
どんな経緯でそうなるのかは読んでのお楽しみ。

中盤以降の天馬は何か新しい手がかりを得るたびに
「あと○人」「これで○人まで絞れた」とか推理の経過を呟くので
読者も彼と一緒に犯人あてに参加できるはず・・・なのだが
私にはさっぱり分からなかったよ(笑)。

そして犯人指摘のためのすべての情報開示が終了して
最終章の手前には「読者への挑戦」が挿入される。
これも前作と同じ趣向で、堂々の本格ミステリぶり。

解決編に入ると、関係者一同を前にして、
自らの推理を開陳して犯人を指摘する。

前回もそうだったが、このあたりの論理展開は見事。
英語名のタイトルにもなっている一本のモップも
重要なポイントになっている。
まさに "平成のエラリー・クイーン" なる称号が
伊達ではないことを証明している。

そして、エピローグで最後のダメ押し。
いやあたいしたもの。


そして、事件発生から解決までの途中経過も
個性的な高校生たちがたくさん登場して、読者を飽きさせない。

例えば、冒頭の水族館のシーンと交互に描かれるのが
柚乃が参加している4校合同の練習試合の様子。
ここだけ取り出してもキャラ小説としてよくできている。

上に書いたスクール水着を巡る一件もそうだが
文庫にして430ページ近い長編の本格ミステリを
ライトノベルの雰囲気で楽しく読ませる。
このあたりも前回と同様、実に達者だ。

本作で新しく登場したキャラもいて、
次作以降にどう絡んでくるのか、今後が楽しみなシリーズだ。

nice!(6)  コメント(10) 
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コメント 10

mojo

はじドラさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:01) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:01) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:02) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:02) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:02) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-25 01:03) 

おか

mojo様、こんにちは
このシリーズの1巻目ですが、アマゾンプライムで無料だったので、読んでみます。
とは言え、他に読んでるのが終わってからなんですが。
今は、「ロボット・イン・ザ・ガーデン」って言うのを読んでます。
by おか (2017-12-25 14:57) 

mojo

おかさん、こんばんは。

「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、買って手元にあるんですけど
未読なんですよねえ・・・
そんな"積ん読"本が我が家には山積です。
かみさんも呆れて最近は文句さえ言いません(笑)。

電子書籍に切り替えてしまえばすっきりするんでしょうねえ。
まだそこまでの思い切りが出来ないでいるんですけど。
還暦も近づいてきたんで、そろそろ"断捨離"を始めなければ・・・
とは思ってるですが、それがなかなか。

ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。
by mojo (2017-12-26 01:33) 

おか

mojo様 こんばんわ。
本作までは読み終わりました。なかなかきっちりしたミステリなんですが、私も犯人へはたどり着けませんでした。
3作目買おうと思ったんですが、高いですね。
とりあえず、短編集だけ買ってみました。
それにしても、主人公が「オタク」という設定だから、そういう小ネタが多いのは分かるんですが、
「○○○○博士」なんて、我々世代だけですよねぇ。
あっ、「ロボット~」の方も読み終わったのですが、あちらは「大人向けのパディントン」みたいですかねー。
おかげで「ヤマト」のノベライズには手が着いていません。
by おか (2018-01-12 21:33) 

mojo

おかさん、こんばんは。

>私も犯人へはたどり着けませんでした。

いやあ、素人に簡単に当てられたらプロではありませんからね。
私も生まれてから今までけっこうな冊数読んでるつもりですが
そうそう当たるものではないですね。

>3作目買おうと思ったんですが、高いですね。

私も文庫になるのを待ってます。
ミステリって再読に耐えるものが少ない気がして
単行本や新書で買うのは躊躇ってしまいます。
独身の頃は自由になるお金があったのでたまに買いましたけど
結婚してからは文庫一本槍(笑)。

>主人公が「オタク」という設定だから、そういう小ネタが多い

作者よりも古い時代のネタも多いですね。
古い作品が好きなのか、書くために勉強したのか(まさかね)。

>「ロボット~」の方も読み終わったのですが、

うーん、そっちにはまだしばらく手が回らないかなあ。

>おかげで「ヤマト」のノベライズには手が着いていません。

記事にも書きましたが、ボリュームたっぷりで
こういうノベライズは楽しく読めます。

ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。
by mojo (2018-01-14 00:01) 

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