SSブログ

月世界紳士録 [読書・ミステリ]


月世界紳士録 (集英社オレンジ文庫)

月世界紳士録 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・待宵澄雄(まつよい・すみお)の勤務するのは
宇宙技術振興推進株式会社、通称STeP。
とは言ってもハードを作る会社ではなく、射場や衛星の運営、
宇宙関連イベントの企画運営などを主な業務とする。

しかし、澄雄が異動した資料部は、「竹取班」との異名があった。
月にまつわる神話、伝承、はては都市伝説までを扱うなど
月に特化した部署だったからだ。しかも職員は彼以外にはただ一人。
"月狂い" と呼ばれる桂靖久という青年だけ。

靖久がホームズ、澄雄がワトソンという役回りで
この二人が出くわす事件を描く、"日常の謎" 系連作ミステリ。

「一、Cry for the Moon」
高名な実業家・斎木啓司から竹取班にランプが一台寄贈された。
『朧月夜』と名付けられたそれには不思議な力あるという。
そのランプを前にして嘘をつくと、灯火が消えるのだ。
しかし、竹取班を訪れた男・宗像は
『朧月夜』を譲って欲しいと申し出るが、
かねてより宗像を知っていたらしい靖久はけんもほろろに断るが・・・
ランプの "謎解き" はちょっと呆気ないが、それよりも
一台のランプの入手を巡っての駆け引きが読みどころか。

「二、心変わりの羽衣」
歌劇の男役スター・澤邑志信はファンから惜しまれつつ退団した。
そして、退団した卒業生による記念公演「竹取物語」において
澤邑はかねてから交際中で婚約寸前だった男性との関係を
白紙に戻すことを宣言する。それ以来、SNSではある噂が広がる。
澤邑がこのとき衣装として着ていた羽衣は、竹を原料とした新素材
CNF(セルロースナノファイバー)で作られていた。
そのCNFのせいで、彼女は「愛おしい」という感情を失ったのだと。
CNFを開発した鳴海製紙はJAXAにも関係があり、その伝手で
STePの「竹取班」に澤邑志信の "心変わりの真相" 調査の依頼が入る。
ミステリとしては他愛もないオチだが、それよりも
一人のスター女優を巡る周囲の葛藤のほうがメインなのだろう。

「三、月光の秘薬」
月のサイクルを利用した農業を研究している須賀植物園。
そこの職員・小花は愛想がなくて野暮ったい。
しかしその彼が、最近急に女性にモテだしたという。
"惚れ薬" を開発したのではないかという噂もあるらしい。
園を訪れた澄雄は、さっそく3人の女性が
小花を巡って火花を散らす光景を目撃するが・・・
靖久の推理は、三者三様の意外な理由を暴き出す。
本書の中ではいちばん日常の謎ミステリっぽいかな。
私は今までの人生でモテたことが皆無に近いので
(「皆無」ではない・・・と思いたいwww)よく分からないが
モテすぎる男というのも大変なのだそうだ(棒)。

「四、ルナパーク同盟」
金(きん)を扱う金融業者のもとへ
髙橋という男が1本の金の延べ棒を持ち込んでくる。
調べたところ純金100%。髙橋はその意外な出所を明かす。
一方、第一話のキャラ・斎木が再び登場し、
「竹取班」の二人に風変わりな遊園地の話をする。
ある高級住宅地にある公園に、突如として出現したその遊園地は、
二週間限定ながら、なかなか盛況であるという。
しかしその公園の近くで、不可思議な事件が起こっていた・・・
宝探しの物語と思わせて、さらにひとひねり。
靖久の推理は大がかりな "はかりごと" の存在を明らかにする。


ここで完結でもいいし、続けようと思えばずっと続けられる終わり方。
うーん、もう一冊くらいは読んでみたいかなあ。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 3

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-19 21:28) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-19 21:28) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-12-19 21:28) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント