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南極点のピアピア動画 [読書・SF]


タイトルにある「ピアピア動画」とは、
ネット上にある動画投稿サイトのこと。
もちろん「ニコニコ動画」がモデルだ。

表紙の女の子は、ボーカロイドの「小隅レイ」。
こちらは「初音ミク」がモデルなのはもう一目瞭然だね。

なんだかいかにも「パチモン」で胡散臭い。
そんなことを感じる人がいるかも知れないが、本作は
発達したネットによって、未来における宇宙開発が
どう変貌していくかを描いた連作短編集。
至って真面目で正統的なSFだ。

「南極点のピアピア動画」
彗星が月面に衝突し、大量の粉塵が舞い上がったために
月探査計画は "煙が晴れる" まで凍結されてしまう。
日本の探査計画に関わっていた大学院生・蓮見の夢もまた潰え、
恋人・奈美までも彼のもとを去ってしまう。
しかし、月面から放出された膨大なガスが地球へ降り注ぎ、そののち
両極から宇宙へと吹き出す "双極ジェット" を形成することが判明する。
これを利用すれば高度3000kmの宇宙空間へ到達できる。
蓮見は、「宇宙男プロジェクト」を立ち上げ、
二人乗りの宇宙機(もちろん奈美と乗るつもり)の製作を宣言、
「ピアピア動画」に決意表明の動画をアップする。
やがて彼のもとに、ネットを通じて
協力・支援を申し出てくれるメンバーが集まり始め、
プロジェクトは一気に動き始める・・・

「コンビニエンスなピアピア動画」
コンビニ・ハミングバード二本木店でバイトする美穂は、
ピアピア動画技術部の桑野と知り合う。
ある日、店頭の真空殺虫機を掃除していた美穂は
やたらと丈夫な糸を吐く蜘蛛を発見するが、
桑野はその蜘蛛の意外な利用法を発案する・・・
田舎のコンビニから始まった話が、
壮大な宇宙開発につながるという意外な展開に。
冒頭からこのラストは想像できないよ、ほんと。

「歌う潜水艦とピアピア動画」
音で "会話" する鯨に対して、こちらも音を発して反応を見る。
海洋生物の研究者・中野は、潜水艦を使っての
鯨の行動調査を発案するが、あえなく却下される。
しかし諦めきれない彼は、鯨に対して発声する部分を
ボーカロイド「小隅レイ」に歌わせ「ピアピア動画」に投稿したところ、
なんと自衛隊からオファーが来る。
退役してスクラップになるはずだった潜水艦かざしおの武装を外し、
国民的人気を誇る「小隅レイ」を "搭載" して鯨と "対話" させれば、
自衛隊のイメージアップになるという奇特な司令官が現れたのだ。
探査船となったかざしおは順調に鯨たちと"対話"を重ねていくが
やがて、とんでもないものと遭遇してしまう・・・

「星間文明とピアピア動画」
これは「歌う-」の直接の続編となっている。
かざしおが出会ったのは、数万年前に地球に飛来し、
海底に眠っていた地球外文明の "自動探査装置"、
要するにロボット探査機だった。しかもナノマシンを用いて
自らを作り替えることも、増殖することも可能だった。
"ファースト・コンタクト" によって
「小隅レイ」の外見をまとうことを決めた "探査機" は、
自らを「あーや」と名乗り、大量に複製を作りながら
地球人の中に入り込んでくるが・・・
表紙にあるような女の子が、街中をぞろぞろと
歩き回るような光景が出現するわけなんだが、
決して "萌え" ばかりではないので、誤解なきよう(笑)。
読んでいて、ジャック・ウィリアムスンの『ヒューマノイド』を
想い出したり、アシモフのロボットもの連作を想い出したり。
ネットや動画投稿サイトなど、でてくるガジェットは今風なんだけど
読んでるとなんだか昔SFを読み始めた頃のワクワク感が。
ラストで人類が宇宙へ進出する足場を得て終わるところは
古き良きSFの時代を彷彿とさせ、なんだか懐かしくて心温まる。

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mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-09-20 21:03) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-09-20 21:03) 

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