「格差が遺伝する! ~子どもの下流化を防ぐには~」 [読書・ノンフィクション]
格差が遺伝する! ~子どもの下流化を防ぐには~ (宝島社新書 231)
- 作者: 三浦 展
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2007/05/19
- メディア: 新書
評価:★★★
東大の学生の親は、東大出身が多いという話を聞いたことがある。
親の学歴・収入・家庭環境によって、子どもの成績が決まってしまうのか。
何となくみんながそう思っていた事なのだが、
この本はそれを、統計的に検証したものである。
インターネットを通して、小学生の子供を持つ母親
1400人に対してアンケート調査を行った。
この本の内容のほとんどは、その集計を分析したものなのである。
その結果はどうか。
確かに、親の収入と子どもの成績には相関がある。
しかし、それ以外にもいろいろな要素が
子どもの成績に関わっていることが判明する。
例えば
「母親が料理好き」「父親が土日に休み」
な方が、子どもの成績はよい、とか。
子どもについても
成績がよい子ほど「明るい」「がんばりや」「スポーツ好き」
成績が悪い子ほど「消極的」「だらしない」「友だちが少ない」
とか。
アンケート結果の分析が延々と続くのである。
読んでいくと、子どもの学力格差の背景に、現代の社会システムがあることがわかってくる。
コンビニ・スーパー・宅配便が365日24時間営業している
→そのためには土日・深夜に働く人が必要になる
→父親・母親の就労時間が不規則になる
→一家揃っての食事・会話・旅行が難しくなる
→家族や子どもを大切にしようにも、その時間がとれない
そして、「構造改革」のもと、「リストラ」された人たちが
この「コンビニ・スーパー・宅配便」に代表される
就労時間の不規則な第3次産業へ大量に流入している。
そこで生じる「生活の質の格差」が、「子どもの成績の格差」へ現れてくる、
と著者は言う。
あくまで、一つのアンケート結果による統計であるから、
これですべてがわかるというものではないが、
読んでいると、この国の現在は、
(前から思っていたことではあるけれど)
「子どもがまともに育つのが難しい時代」
なんだなあ、というのを改めて実感した。
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