『ゼーガペインSTA』&『エンタングル:ガール』『ホロニック:ガール』 [アニメーション]
『ゼーガペイン』は2006年に放映されたTVアニメ(全26回)。ジャンルとしては、いわゆる ”ロボットアニメ” である。
2016年にはTVシリーズの前日譚を描いた映画『ゼーガペインADP』(タイトルロゴは ”ZEGAPAIN adaptation”)が公開された。
そして今年(2024年)、TVアニメから数えて18年目に公開された『ゼーガペインSTA』(”ZEGAPAIN statement alpha”)は、TVシリーズのその後を描いている。
wikipedia にある「ストーリー」を要約・編集したものを掲げる。ちょっと長いが、設定が作り込まれているというか複雑というか、なかなか一言で表せないもので。
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舞台となるのは千葉県舞浜市。主人公のソゴル・キョウは、幼馴染みのカミナギ・リョーコとともに舞浜南高校へ通っている。
そんなある日、ミステリアスな雰囲気のシズノ先輩と出会ったキョウは、彼女に導かれて世界の ”真実” を知る。
キョウが高校生活を送る舞浜市は、量子コンピューターサーバー内に構築された仮想空間であり、生物としての人類は既に滅亡していること。自分もリョーコも、その他の生徒たちも、全て「幻体」と呼ばれる人格記憶体であり、コンピューターに保存されたデータでしかないということ。
そして、量子サーバーの ”外側” の現実世界では ”ガルズオルム” という勢力が現れ、地球環境の改変と、人類の「幻体」データを収めた世界各地の量子サーバーの破壊を行っていること・・・
しかし、「幻体」たちの間には、サーバーコントロールから離れた(記憶がリセットされない)「セレブラント」とよばれる者たちが現れた。彼らは ”ガルズオルム” への対抗組織「セレブラム」を設立。彼らは「ゼーガペイン」と呼ばれる、光装甲を纏った「ホロニックアーマー」を開発し、荒廃した現実世界で ”ガルズオルム” と戦い続けていた。
「セレブラント」として覚醒したリョウも、人型兵器「ゼーガペイン・アルティール」に乗り、シズノととに ”ガルズオルム” と戦うこととなる。
物語の後半、「幻体」データから元の肉体を復元する(「生身の人間」になる)ことができる ”レザレクション・システム” の存在が明らかになり、キョウたちは ”人間に戻ること” を目指して戦い続けていくことになる。
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この手のアニメとしては、SF設定は難解の部類に入ると思うが、26話という長尺を使って背景説明をじっくり行い、視聴者に受け容れさせることができていたと思う。
メカも一部CGで描かれているが、2006年でのレベルなので現在の基準からすると物足りないかも知れない。だが、物語に入り込むのに支障はない。
キョウ - シズノ - リョーコ の ”三角関係” を軸に、多彩なキャラたちのドラマもなかなか見応えがある。ちなみに私のお気に入りは舞浜南高校生徒会副会長のミナトさんだ(笑)。
■『ゼーガペインSTA』について
これは公式サイトの「STORY」から
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最終決戦「プロジェクト・リザレクション」を完遂したセレブラントたちは、世界各地のガルズオルムの残存部隊との戦いを続けていた。
セレブラントとして舞浜サーバーを守ったソゴル・キョウは、雪が降る冬の舞浜で目を覚ます。
記憶の欠損に戸惑うキョウの前に、新たな脅威オルタモーダが出現。自らをヒカリタツモノと名乗るハル・ヴェルトは、サブスタンスシェイドと呼ばれる未知の能力で襲ってくる。
AI・ルーパの助けによってこれまでの記憶をダウンロードしたキョウは光対装備で立ち向かうが……。
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正直なところ、綺麗に終わっていたTVシリーズ最終回の後をどう続けるのかと思っていたが、”新たな敵”・オルタモーダとの戦いが描かれていくことに。
さすがにCGは高水準。戦闘シーンもグルグル動く。そういう技術的な部分では申し分ないとも思うけど、その他の点ではいろいろと問題があるように感じた。
まず上映時間が約90分なのだが、その序盤の30分がTVシリーズの ”総集編”。そしてその内容が、(少なくとも私には)分かりやすいものではなかったように感じられた。
いちおう、『STA』を観るために、7月下旬頃から8月上旬にかけて配信でTVシリーズ26本を見直しておいたのだけれども、それでもこの30分の中でストーリーの流れを追うのはかなり辛いように感じた。
TVシリーズのファンへのサービスのため(だけ)に、さわりの部分をつなげたPVみたいなものを作ったのかな・・・とも思ったのだが。
そして肝心の本編は約60分。こちらも手放しでは褒められないように思う。
(1)キョウが登場する
主役なんだから当たり前じゃないか、と思われるかも知れないが、TVシリーズの設定と終盤の展開を考え合わせれば、リョウが登場すること自体に矛盾というか無理があるように思う。
でも、リョウが出ないとゼーガペインじゃないって意見も多そうだが。
(2)オルタモーダ
・新たな敵 ”オルタモーダ” の正体や目的がよく分からない。
作中で言及されはするのだが、断片的な台詞ばかりで
わかりやすいとは云えない。
・オルタモーダのキャラが8人もいるのは多過ぎ。なにせ尺は60分。
観た後に「印象に残るキャラは?」って聞かれても答えに困りそう。
・序盤~中盤までは、キャラ同士の肉弾戦が主体。ゼーガペインが出ない。
はて、ゼーガペインってバトルアニメだったっけ?
(さすがに終盤には登場するが)
でもまあ、ファンの中には「作ってくれただけで大満足」って人もいるのだろうから・・・
■スピンオフ小説
『ゼーガペイン』にはスピンオフ小説がいくつかあるのだけど、ここではSF作家・高島雄哉氏が書いた2冊を取り上げる。高島氏は『STA』のSF考証も担当されている。
2冊とも、リョウの幼馴染みのカミナギ・リョーコが主役。彼女の視点から『ゼーガペイン』の世界が描かれていく。
舞浜南高校に入学したリョーコは映画研究部に入り、仲間たちと共にコンテストを目指して長編映画を制作していく。その過程で、彼女は世界のあちこちに奇妙な ”ほころび” を見つけていく・・・
前日譚『ゼーガペインADP』とTVシリーズ『ゼーガペイン』の間に入る物語、って考えるとわかりやすいかな。もっとも、この作品世界の中では ”時系列の前後” というのはそう単純なものではないのだが・・・
●「ホロニック:ガール」
舞浜南高校で2学期を迎えたリョーコは、転校生ツクルナたちとともに演劇の練習を始めることになるが、オルタモーダとの戦いは舞浜量子サーバーの ”仮想空間” にも及んできて・・・
内容的には「エンタングル:ガール」の続編で、『STA』の物語の裏で同時進行していた舞浜サーバー内の話、のようにも思えるが、実際は『STA』とはパラレルワールドの関係にある話、と考えた方が正解かも知れない。
中盤以降、物語は舞浜を飛び出し、地球を飛び出し、ついでに太陽系を飛び出して宇宙の彼方へぶっ飛んでいくのだが、このあたりは大河SF『三体』の第三部の後半を彷彿とさせる。いやあ、こうなると私の手には負えません。
こういうの、流行ってるんのかなぁ。
私はSFが好きな人間のつもりなんだけど、最近はSFの方が私を相手にしてくれなくなってきてるみたいで、ちょっと淋しい今日この頃(おいおい)。
まあ、私のアタマが固くなってついていけなくなってるだけなんだろうけど。
TVシリーズ最終話のラストシーンは、いろいろ視聴者の想像を刺激するようにできている。ここにいるキャラは誰で、どんな経緯を辿ってこのシーンにつながるのだろう、と。
この小説版の終盤にも、このラストシーンがでてくる。私が思うに、ここに辿り着くために、いちばん ”遠回り” をしているのがこの小説版じゃないかな。