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「白い巨塔」の誘拐 [読書・ミステリ]


「白い巨塔」の誘拐 (宝島社文庫)

「白い巨塔」の誘拐 (宝島社文庫)

  • 作者: 平居紀一
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2022/11/05

評価:★★★★


 探偵社で調査員を勤める真二と悠人。二人のもとへやってきた女子大生は、「弟が殺人を犯したかも知れない」と云う。
 一方、医療法人の理事長・三代木は何者かに誘拐、監禁されてしまう。法人の未来を決める重要な理事会が迫る中、秘書の結花は対応に奔走するが・・・

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 デビュー作『甘美なる誘拐』の続編。ストーリーに直接的なつながりはないので前作は未読でも理解には困らないかな。でも前作もとても面白かったので、読まないのはもったいないとは思う。


 チンピラだった真二と悠人は、現在は探偵社の調査員。とはいっても、暴力団・麦山組の息が掛かった、いわゆる "企業舎弟" の会社なので、相変わらず組幹部の荒木田からは無茶降りされる日々。

 そんな二人のもとへやってきた女子大生・白石めぐみの依頼は、高校生の弟・敦史の尾行。たちの悪い YouTber・五味武志に誘われて、事件に巻き込まれたらしい。「人を殺したかも知れない」

 一方、医療法人エンライトグループの理事長・三代木達也は、製薬会社主催のパーティから帰る途中、何者かに誘拐され、監禁されてしまう。
 近々、法人の未来を決める重要な理事会が開かれる。誘拐は反対派の理事の陰謀なのか? 誘拐犯を通して三代木の指示を受けた秘書の阿部結花は、対応に奔走するが・・・

 めぐみの依頼で敦史の周辺調査を始めた真二と悠人は、五味が撮影していた心霊スポット・ドクロ沼で白骨死体が発見されたことを知る。

 そしてその騒ぎの中、二人は荒木田から「誘拐をしろ」と命じられる。ターゲットは医療法人理事長・三代木達也。しかし彼らがその準備のために下調べ始めると、三代木はここ数日、自宅に帰っていないらしい・・・


 白骨事件と誘拐事件。二つがどうつながっているのかが皆目わからないまま、ストーリーは進行していく。

 その間にも、三代木の複雑な生い立ちとか、彼が学生時代に同人誌に書いたミステリが作中作として登場したりとか、彼が支援している養護支援施設のエピソードとか語られていき、背景はなかなか盛り沢山。

 前作でもそうだったが、今回もキャラ立ちが見事。なかでも秘書の結花さんの有能ぶりや、三代木と懇意の敏腕医療コンサルタント・酒井かおるさんとか、女性陣が大活躍。

 そして終盤に入ると意表を突く展開が連続する。「いったい何が起こっているのか?」と悩む暇もなく、ラストに至ると、アっと驚く種明かし。
 前作でもすっかり騙されたけど、今回も見事にうっちゃられてしまいました。

 それにしても、真二と悠人の主役二人は、この二作を通してずいぶん成長したねぇ。もう少し彼らの活躍する話を読みたいな。彼らが、最終的にどこへ向かうのかも気になるし。



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