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実家暮らしのホームズ [読書・ミステリ]


実家暮らしのホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

実家暮らしのホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2024/01/11
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 ミステリ・マニアの資産家オリバー・オコンネルが率いる財団は "探偵発掘プロジェクト" を実施したが、その予選で最高得点を叩き出した人物は、なぜか本選には現れなかった。
 財団の調査で判明したその人物の正体は、実家暮らしのひきこもりの日本人青年だった。彼は財団を騙した代償として、様々な事件の解決に当たることになったのだが・・・

* * * * * * * * * *

 ミステリ・マニアの資産家オリバー・オコンネルが率いる財団は "探偵発掘プロジェクト" を実施した。四次にわたる予選を通過した12名には、本選参加を条件に3万ドルの報奨金が与えられた。
 しかし、予選で最高得点を叩き出した人物は、なぜか本選には現れなかった。

 財団の調査で判明したその人物の正体は、24歳の日本人で、実家暮らしのひきこもり青年・判治(はんじ)リヒトだった。
 彼は財団から報奨金3万ドルの返還を求められたが、既にもう使い果たした後だった。そこで財団は、その代償として様々な事件の解決にリヒトに命じることになった。

 財団の代理人として現れた女性ホルツマン・ユキとともに、リヒトは警察も解決できなかった怪事件に挑んでいく。


「Case 1 8ビットの遺言」
 オリバー・オコンネルの親友だったIT企業社長・城ノ戸純(きのと・じゅん)が自身の別荘で刺殺された。犯人は被害者の生活パターンをよく知った者と思われた。リヒトは遺体の不自然な状況から "ある意味" を読み取るのだが・・・
 リヒトは "何でもお見通し" のホームズ型の探偵なのだけど、この状況から○○○を思いつくというのはちょっとマニアック過ぎるかも。


「Case 2 自殺予告配信」
 『ナチュラル・ボーン・コレクター』と名乗る若い男性ユーザーが一本の動画を投稿した。内容は "24時間以内に自分を見つけてくれなければ自殺する" というもの。
 投稿者の父親から通報があって警察が自宅に乗り込んだが、既に本人は姿を消していた。
 居場所のヒントは彼の部屋に残されているはずとリヒトは判断するが、"コレクター" を名乗るだけあって、部屋の中は雑多な収蔵物であふれかえっていた。しかしリヒトはたちまちのうちにそこから手がかりを見つけだす・・・
 ○○○○○○○○○というアイテムもなかなか。これ気づく人いるのかな? 少なくとも私だったら絶対ダメだな。


「Case 3 撲殺モラトリアム」
 資産家の高須忠彦(たかす・ただひこ)が撲殺された。彼は脳疾患を患って身体が不自由だったが、介護をしている貴久代(きくよ)と春子(はるこ)という二人の娘に対してDVを振るっていた。警察の調べに対し春子が犯行を自供したのだが、状況に不可解な点が多い・・・
 犯行動機の異様さも被害者の性格の悪さ(笑)もひねりが効いている。読後感はイヤミスに近いが。


「Case 4 零下二十五度の石棺」
 漁港の冷凍倉庫で死体が発見された。睡眠薬を飲んで眠った状態で放置されたことによる凍死だった。遺体の持っていたスマホには遺書とみられるメッセージが残されており、さらに倉庫の扉の内部側レバーにはロープが結びつけられて固定されているという密室状態。自殺の可能性も疑われたが・・・
 リヒトが遺書の偽造を見抜くくだりは相変わらずマニアック。盲点と云えばそうなのだけど。
 密室トリックはある意味 "一発芸" なので見当がつく人もいそう。リヒトが出張ってこなくても、警察が地道に捜査すればたどり着ける気もするが。


「Case 5 ダイムの遺言」
 「Case 1」で殺害された城ノ戸社長からオリバー・オコンネル宛てに書簡が届いた。それは城ノ戸が生前、顧問弁護士に託してあったもので、死亡して半年後に投函することになっていた。内容は漢字だけで書かれた謎の文字列による暗号だったが、リヒトは一瞥しただけで解読する見当をつけてしまう。
 手紙には、城ノ戸の娘・北条千恵子(ほうじょう・ちえこ)ともに暗号を解読してほしいとあった。リヒトたちは彼女を連れて「Case 1」の舞台となった城ノ戸の別荘に向かうのだが・・・
 ○の○○が○○れた○○○がそのまま暗号解読表になるとは。云われてみれば "なるほど" なアイデアではある。
 しかしそれはとっかかりに過ぎず、真の解答に至るまでは二転三転するなどひねりが効いてる(効き過ぎてる)。
 さらに「Case 1」で持ち越されていた謎が「Case 5」で解明されるなど、この二編は前後編になってるとも云える。
 そして最期に得られた "もの" も、まあこんなことよく思いついたと感心してしまう。


 リヒトが負った3万ドルの借金は事件解決のたびに減額されるのだが、今回の五件を通じてもさほど減っていないので、さらなる続編があるのかも知れない。
 ひねくれ者のリヒトはともかく(おいおい)、ホルツマン・ユキさんはいいキャラをしているので、彼女にはまた会いたいかな(笑)。



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