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世界推理短編傑作集6 [読書・ミステリ]


世界推理短編傑作集6 (創元推理文庫 M ン 1-6)

世界推理短編傑作集6 (創元推理文庫 M ン 1-6)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/02/19
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 江戸川乱歩が選んだ「世界推理短編傑作集」全5巻が、2018年にリニューアルされて刊行された。本書はそれに漏れた作品の中から選んだ13編を収録した拾遺集。

* * * * * * * * * *

「バティニョールの老人」(エミール・ガボリオ)[1870]
 元理容師の老人が殺される。"わたし" は、アパートの隣人・メシエ氏に誘われて現場へ赴く。死体が残したダイイング・メッセージによって容疑者が逮捕されるが・・・。
 メシエ氏の正体を巡る話かと思ったが、さにあらず。


「ディキンスン夫人の謎」(ニコラス・カーター)[1894]
 資産家ディキンスン氏の夫人が、宝石店で万引きを繰り返しているという。相談を受けて調査に乗り出した探偵カーターは、何者かがディキンスン氏の小切手を偽造していることに気づく・・・


「エドマンズベリー僧院の宝石」(M・P・シール)[1895]
 かつてエドマンズベリー僧院にあった宝石は、ジョスリン・ソウル卿の手に渡っていた。卿はイギリス東部の片田舎に、アル=ジャバルという東洋人と二人で暮らしていた。
 彼の日記に残された異様な記述の謎を、プリンス・ザレツキーが解き明かす。


「仮装芝居」(E・W・ホーナング)[1898]
 ローゼンタールという男が南アフリカのダイヤモンド鉱区で巨万の富を築き、ロンドンへ帰ってきた。怪盗ラッフルズと相棒の "わたし" は、ローゼンタールの屋敷で開かれる宴会に忍び込むことにしたが・・・


「ジョコンダの微笑」(オルダス・ハックスリー)[1921]
 病弱な妻を持つハットン氏は、美貌のミス・ジャネットに近づく一方、若い愛人を囲っていた。そんな中、ハットン夫人が死亡し、やがて彼が妻を殺したとの噂が立ちはじめる・・・


「雨の殺人者」(レイモンド・チャンドラー)[1935]
 カーメンという娘にスタイナーという男が言い寄っている。カーメンの父ドラヴェックは、スタイナーに手を引かせるように "わたし" に依頼してきた。
 スタイナーの家に行った "わたし" が見たものは彼の死体と、その傍らで笑っているカーメンだった・・・


「身代金」(パール・バック)[1938]
 そこそこに裕福なケントは、妻アリン、ブルースとベッツィという幼い二人の子どもたちとともに平和に暮らしていた。しかしベッツィが誘拐され、身代金が要求されてきた・・・
 もうちょっとミステリ的なひねりがあると思ったのだけど。


「メグレのパイプ」(ジョルジュ・シムノン)[1946]
 メグレ警視の元へやってきたルロワ夫人は、自分の留守中に家へ何者かが侵入していると訴える。彼女が帰った後、メグレは愛用していたパイプが消えていることに気づく。そして再びやってきたルロワ夫人は、こんどは息子が失踪したと言い出す・・・


「戦術の演習」(イーヴリン・ウォー)[1947]
 ジョン・ヴァーニィは従妹のエリザベスと結婚した。戦争によって足を負傷した彼は、財産も失い、資産家の妻に養われる身となった。鬱屈した思いは、やがて彼女への殺意へと変わっていく。そんなとき、彼はエリザベスが睡眠薬を服用していることに気づく・・・


「九マイルは遠すぎる」(ハリィ・ケメルマン)[1947]
 「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。ましてや雨の中となるとなおさらだ」たまたま耳にしたこの言葉から引き出した推理が、殺人事件の犯人逮捕まで至るという、古典的名作。これ以降、同じ趣向の作品もたくさん生み出されるなど、後世への影響も大きい。


「緋の接吻」(E・S・ガードナー)[1948]
 アニータは、愛人クエメンツを殺害し、その容疑を彼女のルームメイトのフェイ・アリスンになすりつけるべく工作をする。フェイの叔母ルイーズは、弁護士ペリー・メイスンに依頼する。法廷で検事と外連味たっぷりにやりあうのは、日本では見られないシーンだ。


「五十一番目の密室またはMWAの殺人」(ロバート・アーサー)[1951]
 アメリカ探偵作家クラブ(MWA:Mystery Writers of America)の月例会で、ミステリ作家ワゴナーは画期的な密室トリックを思いついたと言い出す。それは彼の五十一番目の密室ミステリになるはずだった。しかしそのワゴナーが、密室の中で首を切断された死体となって発見された・・・
 トリック自体は解説にもあるとおり、バカミスに類するものだが、ミステリファンなら一度は聞いたことがあるくらい有名なもの。その元ネタが本作だったんだね。


「死者の靴」(マイケル・イネス)[1953]
 デリィが載っていた列車のコンパートメント席(仕切りのある準個室)に転がり込んできた娘。彼女の座っていた席の向かいにやってきた男は、左右で色の異なる靴を履いていた。男の言動に不審なものを感じた彼女は逃げてきたのだ。
 そしてその日の朝には、色違いの靴を履いた男の死体が発見されていた・・・


 ミステリとしての切れ味なら「九マイル-」「緋の-」かな。結末の意外性では「死者の-」、ストーリー・テリングの巧みさでは「雨の-」「メグレ-」だろう。
 「五十一番目-」もミステリ史的には貴重かな(笑)。



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