KAIJU黙示録 [読書・SF]
評価:★★
未曾有の気象変動が地球を襲い、海水面は上昇、多くの陸地が沈んだ。わずかに生き残った人類は文明の再興を目指すが、そこへ異形の巨獣〈KAIJU〉が出現した!
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全体は三部構成になっている。
「レムーラの勝利」
未曾有の気象変動が地球を襲い、海水面は上昇、多くの陸地が沈んだ。わずかに生き残った人類は文明の再興を目指すが、そこへ異形の生物〈KAIJU〉(怪獣)が出現する。
80mを超える巨獣である "マザー" が5体出現し、それによって内陸部へと追いやられる人類。怪獣に対抗して最新鋭の兵器を備えた "基地" が各地に建設された。
しかし "マザー" に続けて出現したのは身長3mの小型怪獣・"ドッグ"。無数に沸いて出た彼らによって、人類の基地は次々に潰されていく。そして今、最期に残ったのがレムーラ基地だった。
ジャコビー・バッチ博士は、戦闘時の "ドッグ" からある種のエネルギー波が発せられていることを検知した。そこから怪獣たちをコントロールしている "オーバーマインド" とも云うべき個体がいるという仮説を立てる。
レムーラ基地は、その "オーバーマインド" が存在していると思われる島へ特殊部隊を派遣、急襲するのだが・・・
「アルゴー号の帰還」
気象変動が始まった頃、地球を脱出して他星系への移住を目指して建造された宇宙船アルゴー号。人工冬眠した数千人の植民者を載せ、怪獣が出現して猛威をふるい始めた地球を後にして、ケンタウルス座α星系へと向かった。
しかしその星系にあった居住可能な惑星には、すでに二足歩行の知的生物が存在していた。文明レベルは低いが、彼らを排除するには時間と武器が足りない。
残りのエネルギーも乏しいことからアルゴー号は地球に帰還することに。出発から2年が経っていたが、地球では相変わらず怪獣たちが跋扈していた。
作中では明示されていないが、この時点で前章「レムーラの勝利」から数ヶ月後のことと思われる。レムーラ基地は "オーバーマインド" の撃破には成功したものの、その勝利はあくまで一時的なものだったようだ。
アルゴー号は、廃墟となっているレムーラ基地へと調査隊を降下させる。彼らの前に現れたのは辛うじて生き残った者たち、そして "マザー" を遙かに超える巨獣だった・・・
驚くことに、アルゴー号はワープ機関を装備している。だから1年もかからずに目的地へ到達する。ちょっと技術的なギャップが大きすぎる気もするが。
アルゴー号を含め、この章の設定は日本のアニメ映画『GODZILLA 怪獣惑星』(2017)とダブるところがある。本書(原書)の刊行は2014年らしいが、このあたりは偶然だろう。内容というかテイストもかなり異なるし。
「黙示録の終焉」
怪獣と人類の、地球の覇権を賭けた最期の "戦い" が描かれるのだが・・・
ラスボスとも云える超巨大怪獣の設定や、それへの人類の対抗策については好みが分かれそう。文明や人類の終焉を描いた "終末SF" の一作としてみれば評価する人もいるかもしれないが・・・
正直なところ、読む前は "超B級" とか "ゲテモノ小説" というイメージがあった。だいたい文庫表紙のイラストからして、そんな雰囲気がぷんぷん。
でも内容はアクションSFとしてはそれなりに読ませる出来になっていて、"意外とまとも"(笑)だったのはちょっとビックリ。
でもそれだけに、この結末はちょっと残念。私としては、SFとして "もうひとひねり" がほしかったところ。
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