VR浮遊館の謎 探偵AIのリアル・ディープラーニング [読書・ミステリ]
VR浮遊館の謎:探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫 は 72-4)
- 作者: 早坂 吝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2024/03/28
- メディア: 文庫
評価:★★★☆
AI(人工知能)探偵・相以と助手の輔は、世界初のフルダイブ型VR(仮想現実)ゲームのテストプレイに参加する。
ゲーム内空間は、あらゆるものが浮遊するファンタジー世界。それは何者かがかけた魔法によって生じた異常事態。参加したプレイヤーはそれぞれ魔法使いとなり、彼らの中に紛れ込んでいる "犯人" を見つけ出すことがゲームクリアの条件。
しかしプレイヤーの一人が "死体" となって発見される。どうやら本物の殺人犯が紛れ込んでいるらしい。その裏では犯人AIの以相が糸を引いていた。
VR世界で ”実体” を得た相以とともに、輔は事件の謎に挑むのだが・・・
『探偵AI』シリーズ、第4作。
* * * * * * * * * *
主人公・合尾輔(あいお・たすく)の父が開発したのは、探偵AI・相以(あい)と犯人AI・以相(いあ)。お互いを競わせ、学習させることで能力の向上を図っていたが、父の死によって以相は世に放たれてしまった。
輔は残された相以の助手となり、共に以相を追って "彼女" が起こした事件を解決してきた。
今回、輔と相以は、産学官連携のプロジェクトで開発された、世界初のフルダイブ型VR(仮想現実)ゲームのテストプレイに参加することになった。
プレイヤーはEGG(Embodied Gaming Globe:身体性ゲーム球)と呼ばれる卵形のマシンに入る。脳に直接作用し、五感を司る神経系を制御することで、かつてない完全な没入感を実現するものだった。
通常は "スマホの中" にいる相以も、ゲーム世界内では "実体" を得て、普通の人間のように行動できることに。
ゲーム内に入った "二人" が見たものは、あらゆるものが浮遊している館。それは何者かがかけた魔法によって生じた異常事態だった。
参加した8人のプレイヤーはそれぞれが魔法使いとなり、彼らの中に紛れ込んでいる "犯人" を見つけ出すことがゲームクリアの条件。制限時間は2時間。
しかしプレイヤーの一人が "死体" となって発見される。どうやら、現実世界で "骨折りジャック" と呼ばれる連続凶悪殺人犯が紛れ込んでいるらしい。しかもそれは、以相の差し金によるものだった。
VR世界で ”実体” を得た相以とともに、輔は事件の謎に挑むのだが・・・
勝手の違うファンタジー世界の中で、「お互いの魔法を交換できる」などの奇抜なルールもあって事態は錯綜し、なかなか犯人に迫れない。
そして、"実体" を得た相以から「今回は対等のプレイヤー同士だ」と宣言されてしまった輔は、単独で捜査を続けることになるが・・・
前作でも、舞台になった館には途轍もない "秘密" があったのだが、今回の「浮遊館」にも、ある意味前作を超えるようなトンデモナイ設定が隠れている。その評価は意外すぎて好みが分かれそうに思う。
いままでずっとスマホやPCのディスプレイの中の2Dの世界にいた相以が、3Dの "実体" を得て浮遊館の中を飛び回るのは、なかなか新鮮な風景。これだけでもシリーズのファンには読む価値があるだろう。
コメント 0