冬華 [読書・冒険/サスペンス]
評価:★★★☆
月島の便利屋・倉持の相棒、深江が消えた。常人離れした戦闘能力を持つ男だ。
同じ頃、山奥で漁師を営む植草の元に現れた男は、ある人物の狙撃を依頼してきた。
深江の行く先の情報をつかんだ倉持は、厳冬の穂高連峰に向かうが、そこでは既に生死を賭けた激闘が始まっていた・・・
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月島で便利屋を営む倉持(くらもち)は、前作『秋霧』で深江(ふかえ)という男と出会った。彼は元自衛隊員で高度な格闘能力をもち、武器全般を使いこなす。
倉持と深江は共闘して危機を乗り越え、その後は二人で便利屋として暮らしてきた。
その深江が、なぜか黙って姿を消してしまう。行方を追い始めた倉持の前に、謎の男たちが妨害に現れる。
一方、山奥で猟師を営む植草(うえくさ)のまえに "熊本" と名乗る男が現れ、破格の報酬で狙撃の依頼をしてきた。植草は、早逝した息子夫婦が残した幼い孫のために、それを引き受ける。
深江の残した言葉の断片を手がかりに、"警察のほうから来た男"・儀藤(ぎどう)と接触した倉持は、深江が "ある目的" のために単身で(そしておそらく丸腰で)、奥穂高岳へ向かったことを知る。
ちなみにこの儀藤、同じ作者の『死神さん』シリーズで主役を務めている男である。飄々としてつかみ所は無いが、仕事はきっちりこなす。
穂高連峰では、狙撃手・植草を中心に完全武装の男たちが深江を待ち構えている。
倉持は、儀藤が用意してくれた武器を深江に届けるべく、必死の追跡を開始するが、彼の到着を待たずして、既に戦端は開かれていた・・・
今回の "敵" の具体的な正体は明かされないが、資金や武器、移動手段も含めてかなりの物量を動員できることから、大きな組織であることが察せられる。
深江を狙う理由はわからないが、彼の過去に関係しているのだろう。次作以降でそれが明かされるのかどうかは判らないが。
"敵" のリーダー・"熊本" は、深江に対して個人的な恨みを抱いている。しかも元自衛隊員という深江の素性と能力を熟知してもいて、決して侮らない。
祖父の代からの猟師で、狙撃能力では深江と同等かそれ以上の力を持つ植草。
今回深江が対峙する相手は難敵揃いである。
厳冬の山中で繰り広げられる激闘を乗り越え、ラストは 深江 vs 植草 の一騎打ち。
二人の生死を分けた "あるもの" には泣かされた。
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