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魔法使いと最後の事件 [読書・ミステリ]


魔法使いと最後の事件 魔法使いマリィシリーズ (文春文庫)

魔法使いと最後の事件 魔法使いマリィシリーズ (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/10/05

評価:★★★☆


 八王子警察署の刑事・小山田聡介の家にいる住み込みのメイド・マリィは、実は魔法少女。聡介が取り組む事件に毎回介入するが、魔法で犯人が分かっても逮捕はできない。かくして聡介の奮闘が始まる・・・というシリーズ。
 前巻のラストで失踪してしまったマリィは無事に帰還するのだが、今度は聡介との関係が進展する(進展させられる?)展開で、本書にて完結となる。


「魔法使いと幻の最終回」
 売れないピン芸人・服部富雄は、人気時代小説作家で叔父の服部憲次郎を、保険金目当てに殺害することに。憲次朗の仕事場に忍び込んだ富雄は首尾良く犯行に成功するが、その直後、憲次郎の妻に発見されそうになる。そこで得意のモノマネで被害者の声を偽装、事なきを得るが・・・
 今回のオチも、現代ならではのネタ。防犯カメラの普及とか、技術の進歩によってミステリが書きにくい状況にもなりつつあるが、一方、その時代ならではの新たなアイテムも使えたりする。ミステリ作家さんは勉強熱心でないとやっていけないね。


「魔法使いと隠れたメッセージ」
 熊田司郎はしがない塾講師。一方、妻の美幸(みゆき)は大学の経済学准教授。時流に乗って人気者となり、ワイドショーのコメンテーターとして引っ張りだこだ。そんな中、些細な口喧嘩がきっかけとなって、司郎は美幸を殴り殺してしまう。現場を去る直前、司郎は妻が書き残したダイイング・メッセージを発見、無事回収するのだが・・・
 後半、そのダイイング・メッセージを使って第三者へ罪をなすりつけようと画策する司郎の陰謀を逆手にとり、聡介が逆に追い込んでいく展開はとてもよくできている。


「魔法使いと五本の傘」
 音無辰哉(おとなし・たつや)は、社内恋愛のもつれから先輩社員・松山健人(けんと)を殺害してしまう。犯行の夜は雨だったが、音無は現場から間違えて松山の傘を持って帰ってきてしまう・・・
 タイトルに "五本の傘" とあるように、あと3本の傘が登場する。いつどこで事件に関わってくる傘なのかは読んでのお楽しみだが、それぞれの傘の移動を追うことで真犯人に行き着くまでの聡介の推理が秀逸。個人的にはこの短編集でいちばん好みの作品。


「魔法使いと雷の奇跡」
 高岡祐一は親の資産をネットトレーディングにつぎ込むが、食い潰すばかり。無職の従兄弟・和田剛(つよし)と組んで資産家の叔父・高岡源次郎を殺害することに。源次郎と体型の似た剛に叔父を演じさせてアリバイを作り、見事犯行に成功するが・・・
 源次郎を殴り殺すのに使われた薪をめぐる推論が犯人に迫る決め手になる。しかし、正直言って、そこまで凶器にこだわる理由がいまひとつ伝わってこない気もするが・・・まあ面白ければいいか(えーっ)。


 本編の進行と並んで、聡介とマリィの関係も進展していく。「-幻の最終回」で、マリィが残していった婚姻届が聡介の手違いによって役場で受理されてしまい(本来、戸籍も苗字も持たないマリィとの婚姻が成立するはずはないのだが、そこはそれ "魔法少女" ですから)、だんだんと外堀を埋められていく聡介の周章狼狽が笑いを誘う。

 往年の海外ドラマ『奥様は魔女』では、娘が生まれてからのエピソードもあったはず。聡介とマリィも、数年後のエピソードが読めたら楽しそうなんだけど。



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