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にぎやかな落葉たち [読書・ミステリ]

 

にぎやかな落葉たち (光文社文庫)

にぎやかな落葉たち (光文社文庫)

  • 作者: 真先, 辻
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/02/09
  • メディア: 文庫

 

 


評価:★★★☆

 

 



 北関東の山間にある高齢者向けグループホーム「若葉荘」。しかしその冬一番の雪の日に、密室殺人事件が起こる。積雪で警察が現場に来れない中、住み込みで働く17歳の浜坂綾乃は鋭い洞察力を示して真相に迫っていくが・・・

 

 



 口の悪い人からは「落葉荘」と呼ばれる、高齢者向けグループホーム「若葉荘」。オーナー兼世話人をしているのは野末寥(のずえ・りょう)。20年前、高校3年生の時に短編小説で入賞し、天才少女小説家ともてはやされた。

 しかしその後は伸び悩み、両親の介護をしながら20代を過ごした。そして5年前に一念発起して「若葉荘」を建てたのだった。

 


 主人公は「若葉荘」に住み込みで働く浜坂綾乃・17歳。両親を失い、引き取られた先の親類の家では疎まれ、「若葉荘」に入居している伯父・添田の伝手でここで働くことになった。

 


 「若葉荘」の近くを高速道路が通る計画が持ち上がり、ある冬の日に市会議員・五十嵐規矩(いがらし・きく)がやってくるが、彼女は銛(もり)で射殺された状態で発見される。現場は密室状態で、外部から銛を打ち込むことは不可能だった。

 


 おりしも降雪によって外界と隔離された「若葉荘」。綾乃は元刑事の添田の助けを受けながら事件について調べ始めるが、やがて第2の殺人が起こる・・・

 

 



 入居者には70代・80代の者もいるが、彼ら彼女らも実に生き生きとして描かれていて、全然 "枯れて" ない。このあたりは作者の年齢もあるのだろう(本書の執筆時はなんと83歳!)。

 


 そして主人公の綾乃さんがまたいいキャラだ。不幸な環境で育ったせいか、とっても逞しい。肝が据わっていて働き者で、頭の回転もいいと三拍子そろったお嬢さん。か弱さなんかかけらもない、といったら言いすぎか。

 添田の後輩の若手刑事・名倉と恋仲にあるという設定なのだが、彼女の旦那は生半可な覚悟じゃ務まらなさそう(笑)。

 


 「若葉荘」の住人をはじめ、登場人物はほとんどが地元で育ってきている。同年代の者たちは同じ学校に通い、同じ思い出を共有している。しばしば過去の回想シーンが挿入されるが、どれも事件の背景と切り離せない重要なもの。一見してバラバラな出来事だったものが、最後にはきれいにつながって隠された事実が明らかになっていく。このあたりは流石の職人芸だ。

 


 読み終わってから冒頭を読み返すと、もう既にあちこち伏線が蒔かれているのがわかる。まさに「老練」という言葉が実感できる作品だ。

 

 


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