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戦争獣戦争 [読書・SF]


戦争獣戦争 上 (創元SF文庫 や 3-2)

戦争獣戦争 上 (創元SF文庫 や 3-2)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/18
  • メディア: 文庫
戦争獣戦争 下 (創元SF文庫 や 3-3)

戦争獣戦争 下 (創元SF文庫 や 3-3)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/18
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

 1994年の冬、IAEA(国際原子力機関)の職員・蒔野亮子(まきの・りょうこ)は北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の核処理施設の査察団に加わっていた。

 使用済み核燃料が沈むプールの中に、彼女は2体の異形の生物を目撃する。
 全長15センチほどで鱗に覆われ、節足動物のように全身がいくつもの体節に分かれ、体節ごとに2本ずつ足が生えている。私のアタマに浮かんだイメージは ”ゴツいムカデ” (笑)。それが核燃料プールの中を、足を使って泳いでいたのだ。
 それは、”戦争” を糧に成長する四次元生命体〈戦争獣〉だった・・・という印象的な導入部から始まる。


 物語はそこから時を遡り、あるいは下りながら語られていく。

 まずは1950年。
 広島のヤクザ・石嶺夏男、その友人の彪牙(ひょうが)冬二、華麗島(モデルは台湾かと思われる)の製鉄所で働く憑生智(フォン・ジョンジー)、東京の病院で下働きをしている女性、オ・ジオン。

 彼らの共通点は ”異人(ホカヒビト)” であること。華麗島の山奥に暮らす漂流叛族(はんぞく)出身の彼らは、体に彫られた入れ墨を実体化させて使役することができ、さらに、世界に2体だけ存在する〈戦争獣〉の存在を感知することができる。

 その年に起こった朝鮮戦争を皮切りに、太平洋戦争末期である1945年、1968年のベトナム戦争などを舞台に、彼ら ”異人” たちの過去から未来までが綴られていく。

 戦争が起こるたびに〈戦争獣〉はその力を増していく。その先には、ついにはすべての人類と文明を滅亡させる最終戦争が待っているらしい。
 何せ2体の〈戦争獣〉同士だって、時空を超えて戦い続けているという設定なのだから、首尾一貫しているというか徹底してるというか。


 1994年に始まり、過去の出来事が語られ、終盤では1995年に帰ってくる。
 ここで、過去の断片が組み合わさって、1995年の状況と登場人物たちの行動に綺麗につながっていくのは、ミステリ作家としても優れている山田正紀らしいとはいえる。


 「想像できないことを想像する」
 山田正紀が、かつて語った言葉である。
 本書の中でも、とくに〈戦争獣〉の登場するシーンは、作者が想像力の限界に挑戦したかのような描写で、正直言って「私のアタマはついて行けてない」って感じることも多々。

 若い頃の山田正紀は、「進化」「時間」「戦争」とかの、ど真ん中のSFテーマを扱っても、それを読みやすく消化しやすいエンタメとして仕上げてきたのだが、やはりいつまでもそこで止まってはいないのだなぁと思った。
 同じことを繰り返していては進歩がないと感じたのかもしれないけどね。
 それでも、やっぱり昔の山田正紀の方がよかったなあと思ってしまう私は、アタマが堅いのかも知れないが。



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