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忘却城 鬼帝女の涙 [読書・ファンタジー]


忘却城 鬼帝女の涙 (創元推理文庫)

忘却城 鬼帝女の涙 (創元推理文庫)

  • 作者: 鈴森 琴
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/07/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

 異世界・亀珈(かめのかみかざり)王国。
 ここは死者を蘇らせる ”死霊術” によって栄えた国だ。死霊術士たちの長は「名付け師」と呼ばれ、当代は縫(ほう)という92歳の男が務めている。

 この「名付け師」の代替わりを巡り、王都で開かれた死霊術の祭典・幽冥(ゆうめい)祭での騒乱を描いたのが前作『忘却城』。

 そして本書はその続編ということになる。とはいっても前作の主役だった青年・儒艮(じゅごん)や重要キャラだった金魚小僧も登場しない。

 代わって主役を張るのは、これも前作でのメインキャラの一人だった異民族の女戦士・曇龍(ウォンロン)。
 前作から数ヶ月後、今は死霊術士たちの総本山である霊昇山に身を寄せ、幽冥祭以来ずっと昏睡状態にある千舞蒐(せん・ぶしゅう)の世話をしている。

 ちなみに名付け師・縫の弟子たちは ”御子(おこ)” と呼ばれており、千舞蒐はその中で唯一の女性である。

 前作でもそうだったが、今作でも御子たちは仲が悪い。上位の弟子たちは次の名付け師の座を目指してお互いがライバルであるのだが、そうでない弟子たちも総じて小競り合いを繰り返している。まあ、死者を蘇らせようなんて考える時点で普通の感覚ではないのだろう。

 しかし本書に登場する千魘神(せん・えんしん)は珍しくまっとうな若者らしい。物語の中では、彼が曇龍の相棒となって活躍する。


 前作と同じく、複数のストーリーラインで物語は綴られていく。
 物語の序盤では各登場人物の様子が点描される。何せ登場人物一覧には30人以上の名前があるんだから(笑)。

 ダブル主役の曇龍と千魘神、縫の一番弟子の千魍千(もうせん)と二番弟子の千魎千(ろうせん)の角逐、王国の辺境・剥(はく)州の女領主・白芍(びゃくしゃく)とその周囲の人々、など。
 そしてそれらの合間に、亀珈王国とは別の大陸で暮らす、異民族の少女テオドラの数奇な、そして悲しい物語が挿入されていく。

 前作でも感じたが、イメージが豊かというか、豊かすぎて(笑)読んでいて時々迷子になってしまう。個々のシーンやキャラクターの印象は強いのだが、それが全体の中でどんな意味や位置づけにあるのかがなかなか把握しづらい。
 このへんは私のアタマが悪いのが原因の大部分だろうけど(おいおい)。



 さて、亀珈王国の辺境各地には、過去の大戦を通じて ”二十四大鬼” と呼ばれる、退魔不可能とされる強力な ”魔” たちが封印されている。
 その一人、”鬼帝女(きていにょ)” に復活の兆しがあるという。

 霊昇山に退魔の要請が入るものの、名付け師の力をもってしても倒すことは叶わないという。そのミッション・インポッシブルを買って出たのが千魘神で、彼と曇龍が鬼帝女と対決するのがクライマックスになる。

 複数のストーリーラインが終盤に向けてきれいに収束していくのも前作通り。昏睡状態の舞蒐も、意外な形で物語に関わってくる。このあたりの構成力はやっぱりスゴいと思う。


 さて、次作では儒艮も金魚小僧も再登場するようだ。近々読むつもり。



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