夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳 ミステリ傑作選 [読書・ミステリ]
夜光亭の一夜 (宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選) (創元推理文庫)
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2018/08/10
- メディア: 文庫
評価:★★
創元推理文庫の、作家別時代ミステリ集の第3弾。
探偵役となる辰(たつ)親分の二つ名である ”宝引(ほうびき)” とは、いわゆる ”福引き” のことで、辰親分はお上からいただくお手当だけでは食えないので、副業として福引きの景品作りをしている、という設定だ。
収録作は13編。
「鬼女の鱗」「辰巳菩薩」「江戸桜小町」「自来也小町」「雪の大菊」「夜光亭の一夜」「雛の宵宮」「墓磨きの怪」「天狗飛び」「にっころ河岸」「雪見船」「熊谷の馬」「消えた百両」
いくつかの作品にコメントを。
「辰巳-」は奉公人と遊女の切ないラブストーリー。
「雪のー」は、冬に季節外れの花火が上がった謎を解く。
「夜光亭ー」はたった一言の失言を聞き逃さずに辰親分は犯人を見つけ出す。
「雛のー」は、飾られた雛人形が倒されるたびに、店の中で不審な出来事が。
「墓磨きー」は、古い墓を何者かが磨いて綺麗にして回るという魅力的な謎。
「にっころー」は、切られた首を抱く女や、消失する鎧武者とかホラー風味。
「熊谷のー」は不可能犯罪ものなんだけど、解決はちょっと拍子抜け。
各短編とも、事件の関係者が語り手になっている、という共通点がある。時代小説というのもあるかも知れないが、毎回語り手が異なる(年齢や職業、経歴が異なる)のは、読む方からするとややとっつきにくいところがあるように思う。
語り手が事件の中でどんなポジションにいて、登場人物たちとどんな関わりを持ってるのかを理解するまでが手間だと感じる人もいるだろう。少なくとも私はそうだった。
そして、語り手が辰親分といつも一緒にいるわけではないので、捜査の様子も知りにくいし、彼の推理の筋道も時々分かりづらいこともある。評価の星の数が少ないのも、そのへんが主な理由。
そう考えると、 ”ワトソン役” っていうのは画期的な ”発明” だったんだなあと思う。
また、当事者ゆえに語り手と特別な関係にあった者が犯人だったりすることもあり、そこがドラマのキモになることも多い。ミステリ要素もあるけれど、このシリーズの本質は ”人情もの” にあるのだろう。
辰親分は基本的には情に厚い人のようで、そのあたりも ”名探偵” という雰囲気じゃないんだな。
あ、名探偵みんなが ”人でなし” という意味ではないので念のため(笑)。
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