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殺し屋、続けてます。 [読書・ミステリ]


殺し屋、続けてます。 (文春文庫 い 89-3)

殺し屋、続けてます。 (文春文庫 い 89-3)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/11/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

 個人事業主としてコンサルティング会社を営む富澤充。しかし彼は「殺し屋」という ”裏の仕事” を持っていた。1人につき650万円で人殺しを請け負っているのだ。ちなみにこれは東証一部上場企業の社員の平均年収なのだという。

 彼は依頼人とは直に接触しない。間に仲介者を挟んで仕事を受けるから。だから富澤は、”標的” がなぜ殺されるのか、その理由を知らない。
 しかし、時として監視中の ”標的” が取る奇妙な行動や、依頼の内容の不可解さに疑問を抱いてしまい、その理由をあれこれと推理し始める・・・

 というわけで、殺し屋が探偵役というユニークなシリーズの第2巻である。
 今作では、富澤と同じように「殺し」を請け負う ”同業者” が現れる。


「まちぼうけ」
 標的は女子大生・高松桃華。行動パターンを知るため監視を始めた富澤は、彼女の奇妙な行動を知る。大学から帰る途中、最寄りの駅前でずっと立っているのだ。それも毎日、午後6時から9時まで。彼女は誰かを待っているのか・・・?
 意外な真相と、ラストに待つキレのいい捻り。上手い。

「わがままな依頼人」
 標的は向井憲宏。40歳のサラリーマン。しかし指定した場所で殺してほしいという ”オプション” 付き。しかし富澤は断る。場所の条件が悪いからだ。しかし再度、依頼が来る。今度は殺害武器が指定されて・・・
 2つの条件から依頼人の意図、さらにはその正体まで読み解く富澤。

「双子は入れ替わる」
 富澤の恋人・岩井雪奈の行きつけのファミレスに「来島」という双子の女性店員がいる。彼女らは曜日で入れ替わる。片方は月/水、もう片方は火/木。しかしある木曜日、雪奈は今日の「来島さん」が ”火/木の来島さん” ではなく、”月/水の来島さん” であることに気づく。そして数日後、双子の一方が殺されてしまう・・・
 雪奈から話を聞いた富澤は、意外な真相を引き出していく。

「銀の指輪」
 ネット販売業を営むシングルマザーの鴻池(こうのいけ)。彼女には「殺し屋」という ”裏の仕事” があった。1人につき550万円で人殺しを請け負っている。
 今回の標的は若木佑馬(ゆうま)。33歳既婚のサラリーマンだ。彼は会社帰りに、自宅と反対方向の店で若い女性と会っている。しかし奇妙なことに、そのとき彼は必ず結婚指輪をしているのだ。普段は外しているにもかかわらず・・・
 指輪の謎も納得だが、それ以上に依頼人の正体の方が驚き。

「死者を殺せ」
 富澤の今回の標的は丸岡真弓。35歳の会社員。しかし調査をすると彼女は2年前に登山中の事故で死んでいた。それを理由に断ると、依頼人は別の標的を指定してきた。しかし新たな標的・春田つかさもまた、真弓と同じ事故で死んでいたのだ。それを知らせると、さらに新たな標的が指定されて・・・
 依頼人の執念というか狂気にぞっとする。

「猪狩り」
 新進ベンチャー企業・白物電機の社長・榎は650万円支払って殺人の依頼をする。標的は加山淳吾。白物電機の副社長だ。彼とは一緒に起業した仲だったが、密かに裏切りを画策していたのだ・・・
 珍しく第三者が語り手を務めているのだが、これが結末になって効いてくる。

「靴と手袋」
 富澤の今回の標的は小橋朱美。28歳のOLだ。監視を始めた富澤は彼女の奇妙な行動に気づく。毎週火曜と金曜、彼女は仕事帰りに「サークル」に通っているのだが、途中、ある路地を通るときだけビーチサンダルに履き替えるのだ・・・


 3つめの短編「銀の指輪」で、新たな殺し屋・鴻池が登場するのだけど、実は彼女の登場はこの作品だけではない。あまり書くとネタバレになるのだが、他の短編にも姿を見せている。
 今のところ、富澤と鴻池はお互いの顔を知らない(他の殺し屋が介在しているらしいのは認識しているが)。

 近い将来、出るであろう第3巻では、2人が出会うことになるのか? そのとき、何が起こるのか? まあ、2人とも普通なら畳の上では死ねないような稼業だからね。意外と壮絶な話になったりして(おいおい)。



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