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スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]


スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬 七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/07/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

 「法医昆虫学」とは、死体を摂食するハエの幼虫(いわゆるウジですね)などの昆虫が、人間の死体の上に形成する生物群集の構成や、構成種の発育段階、摂食活動が行われている部位などから、死後の経過時間や死因などを推定する学問のこと。  (by wiki)

 しかし日本ではまだまだ発展途上の分野らしい。
 本シリーズの主人公・赤堀涼子は、日本で法医昆虫学を確立させるべく、日夜捕虫網を振り回して研究に没頭する博士号を持つ昆虫学者。
 ちなみに36歳独身、小柄で童顔(笑)。

 彼女が捜査一課の岩楯祐也警部補とコンビを組んで、難事件に取り組むシリーズの第7作。


 東京都杉並区の住宅地で72歳の独居老人・飯山清志の絞殺死体が発見される。

 赤堀と岩楯は司法解剖に立ち会うが、そのさなか、遺体の周囲にいた人間たちに発疹、出血、そして猛烈な痒みが発生する。
 「ひょっとして未知の伝染病か!?」とばかり、パニック状態に陥る面々。

 赤堀によってその原因が判明する。通称『小黒蚊(シャオヘイウェン)』と呼ばれる超小型の吸血虫だった。遺体に巣くっていたこの昆虫が、解剖中に飛散したのだ。しかし、『小黒蚊』の原産地は台湾で、日本には棲息していない。

 さらに、被害者の部屋からはカバキコバチグモが発見される。しかしこれも、イネ科の植物があるところにしか棲息しないため、杉並区のような住宅街で発見されることはないのだという。

 ちなみに、このクモは有毒生物ランキングでは世界でもトップ5に入ろうかという猛毒を持っているとか。日本中に棲息しているが、ヒトの生活圏には入らないので被害が出にくく、毒の量も少ないので死亡例もないのだと。
 このシリーズを読んでると、こんな面白い(?)知識も身につくようになる(笑)。

 赤堀は、この2つの昆虫の出現理由の究明に取りかかるが、これが事件の真相解明に直結していくのは、お約束のパターンである。

 一方、岩楯とその部下・深水彰のコンビは被害者の私生活・交友関係を洗っていくが、なかなか有力な容疑者が見つからない。

 さらに、被害者宅の周辺ではカラスが何羽も殺されるという事件が起こっていた。その犯人は中盤で判明するのだけど、これが殺人事件につながる重要な手がかりとなり、タイトルの「スワロウテイル」(燕の尾)の意味も明らかになる。


 赤堀は今回も通常運転で(笑)、おおいに暴れ回るのだけど(おいおい)、今作は脇役陣も充実している。

 前作で設立され、赤堀も所属することになった「捜査分析支援センター」。
 前回はプロファイラーの広澤春美が大活躍だったけど、今作はもう一人のスタッフである、鑑定技術開発の専門家・波多野充晴が赤堀の ”助手” として行動を共にする。偏屈だけど、なかなか楽しいオジさんだ(笑)。

 そして特筆すべきは、岩楯とともに捜査に当たる深水彰巡査部長。
 ”曲者” という表現がぴったりで、一筋縄ではいかない。傍若無人な言動を繰り返し、岩楯にも再三注意を受けるのだが、馬の耳に念仏。
 彼がそうなってしまった理由も後半で描かれるが、とにかく ”濃いキャラ” が満載の本作にあって、まったく霞んでない。というか、一番印象に残るキャラになってるかも知れない。
 たぶん、今後のシリーズにも再登場してくるだろう。

 容疑者の中から犯人を絞り込んでいく、というタイプのミステリーではなく、「何が起こったのか」「なぜ起こったのか」を少しずつ解き明かして作品なのだけど、遺体の状況や周囲にいた昆虫の謎、そして終盤になって判明する意外な動機など、最後まで興味を持たせて読ませる。



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