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迷路の花嫁 [読書・ミステリ]


迷路の花嫁 (角川文庫)

迷路の花嫁 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/10/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

 横溝正史・復刊シリーズの1冊。
 金田一耕助ものなんだけど、今回の主役は彼ではない。
 本書で堂々の主演を張るのは、駆け出しの若手小説家・松原浩三だ。

 ある夜、閑静な住宅街を歩いていた浩三は若い女に出くわすが、彼女は踵を返して逃げ去ってしまった。その場に血染めの手袋を残して。

 さらに浩三は、目の前の暗闇の中に男がいることに気づく。それは足が不自由な物乞い・千代吉だった。
 彼によると、目の前の家から若い女が出てきた。そして家の中からは「人殺し・・・助けて・・・」という声が聞こえたという。

 駆けつけた警察が見つけたのは、5匹の血染めの猫とともに横たわる女の刺殺体だった。女はこの家の主で、霊媒師の宇賀神薬子(うがじん・くすりこ)。

 薬子は、弟子の宇賀神奈津女(なつめ:本名・横山夏子)たちと暮らしており、日本橋の滝川呉服店の主人・滝川直衛(なおえ)の後援を受けていた。
 さらに薬子は、心霊術師・建部多門(たけべ・たもん)の愛人でもあったらしい。

 物語は一転、明治記念館の結婚式場に移る。
 その日は滝川直衛の娘・恭子の婚礼の予定であったが、そこへ警察が現れる。現場で発見された血染めの手袋が恭子のものと思われたからである。

 しかし新たな死体が発見され、恭子が犯人との決め手も見つからない。
 等々力警部は金田一耕助に助力を求めるのだが・・・

 今回の金田一耕助は物語から一歩引き、つかず離れずの位置取りだ。その行動の意味はラストで分かるのだが・・・

 代わって物語の中心になるのは松原浩三だ。彼は「横山夏子に惚れた」と称して彼女に近づいていく。さらに、千代吉をはじめ、殺人事件の関係者たちにも接触を図るなど謎の行動を示すようになる。

 物語が進むにつれて、建部多門という男が、女性の弱みにつけ込んで恐喝と陵辱をほしいままにする、悪逆非道の悪人であることが判明してくる。
 薬子も夏子もその被害者であり、新たな標的として恭子が狙われていたことも。

 やがて浩三の行動は、多門の罠に落ちてしまった人々に救いの手を差し伸べ、さらには新たな悪巧みを未然に防ぐことが目的であることが分かってくる。
 このあたりの彼はダークヒーローっぽくて、なかなか痛快なのだが、同時になぜそんな行動をとっているのかも疑問として浮上してくるが・・・

 ミステリというよりは、多門vs浩三の対決を描くサスペンスという趣き。
 横溝正史のストーリーテラーぶりを楽しむ作品、というところか。



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