クロニスタ 戦争人類学者 [読書・SF]
評価:★★☆
多くの人間が生体通信機能を脳に埋め込み、ネットワークでつながった近未来。五感、記憶、感情に至るまでライフログに保存され、それは巨大なクラウドの海にアップロードされる。
そこに誕生した ”集合自我” にアクセスすることによって言語、感情、価値観などが共有され、人間は民族という概念から解き放された。
これらの技術は ”自己相” と呼ばれている。
書いていながらよく分からないのだが(笑)、要するに人間というものが平準化されている世界なのだろう。それぞれの個性は維持しつつ、共通する基盤を持つ存在に。
しかしながら、そういう “自己相“ を受け入れない者たちもまた存在する。世界は2種類の人々に分断されつつあった。
主人公は日系人シズマ・サイモン。統合軍所属の文化人類学者だ。
学生時代の友人でもあるデレクは軍曹、フランチェスカは心理医官(カウンセラー)で、3人ともに南米ボリビアの内戦地帯に派遣されていた。
統合軍の目的は戦争の回避だが、やっていることは “自己相“ を持たない者に半ば強制的に移植を行い、自分たちの文化圏に彼らを取り込むこと。
その行為に疑問を感じていたシズマは、1人の少女に出会う。ヒユラミールと名乗ったその少女を、統合軍は抹殺しようとするのだが・・・
けっこうミリタリー描写や戦闘シーンが多いのは意外だった。
特に “自己相“ を ”活用” して戦うシズマはなかなかヒーローっぽい。クラウドからデータをダウンロードすることで、自分の反射神経速度を変えたり、兵器の知識を得たり。
このあたり、ちょっと『ジョー90』を思いだしたよ。うーん、例えが古い作品でゴメンナサイ。なにぶん古い人間なんでねぇ・・・分からない人はググってください(笑)。
完璧に思える “自己相“ にも、その構造ゆえに致命的な欠点が存在し、ヒユラミールの存在がその脅威となることが次第に明らかになっていく。
いかにもネットワークとクラウドの時代から生まれたであろうSF設定は、イメージ豊かに描かれ、面白そうではあるのだが、なかなか私の固い頭では完全な理解は難しいみたいです。
物語の決着の仕方もよく分からない。このあと、世界は変わるのか。変わらないのか。シズマの行動は世界に対して意味があったのか・・・
作者は柴田勝家というユニークなペンネームの人。
うーん、どうしようかな。もう1作くらい読んでみようかな。
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