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世界で一つだけの殺し方 [読書・ミステリ]


世界で一つだけの殺し方 (講談社文庫)

世界で一つだけの殺し方 (講談社文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 文庫


評価:★★☆

 文庫本で150ページ前後の中編2作を収めた作品集。
 探偵役として登場するのは、シリーズキャラである神泉寺瞬一郎。

「不可能アイランドの殺人」

 語り手は10歳の少女モモちゃん。両親と一緒に旅行にやってきた。
 しかし、到着早々母親が風邪を引いて寝込んでしまい、モモちゃんは父親と一緒にホテルの外に出る。
 そこは不思議なことが次々に起こる世界だった。

 屋台で売っている焼きそばがいつのまにか茶そばや明太スパゲッティに変わっていたり、警官に追われているスリが池の水の上を走って逃げていったり、掲示板に貼られていたポスターが一瞬で消滅したり、8両編成の列車がトンネルを抜けたら4両になってしまっていたり。
 でもパパがしっかり謎解きをしてくれて、モモちゃんは驚いたり感心したり。

 そして2人がホテルに帰り着いて見つけたのは、浴室で湯船に浸かったまま気を失っているママ。しかも全身に低温火傷を負っていた・・・

 ホテル周囲の ”不思議” の謎解きは、科学的には可能なのだろうけど、実際に本作の描写のように見えるかどうかはちょっと疑問。

 でもまあ、それはいいとしよう。でも、肝心のメインとなるトリックはねぇ・・・これ、絶対に○○でバレるよねぇ。そう簡単に消えるものではないと思うんだけど、どうだろう。関係者全員、○が○○だったりしないと成立しないんじゃないの・・・?

 瞬一郎は、モモちゃんと電話で話しただけで真相を見抜いてしまうなど相変わらずの名探偵ぶり。しかしモモちゃんもなかなかのキャラだ。
 地の文を読んでいると分かるが、年齢とは懸け離れた知識と知能を持ち合わせている。もうちょっと成長すれば探偵役も務まるんじゃないかな。ぜひ他の作品にも登場してほしいものだ。

「インペリアルと象」

 その動物園は月に1回、無料のピアノ・コンサートを行っていた。発案者は園長で、当初は無謀と思われたがふたを開けたら大評判となっていた。

 今回登場する坂巻繁雄は世界的なピアニストで、その演奏が動物園の入場料のみで聴けるとあって会場は満員となっていた。

 しかし予定の演目が終了し、アンコール曲を演奏中に事件が起こる。象が突然暴れだし、それに巻き込まれた飼育員が死亡してしまったのだ・・・

 瞬一郎は ”芸術探偵” の名に恥じず、今回は音楽についての蘊蓄が語られる。ただまあ、ミステリを読みなれた人なら、音楽の知識がなくてもメインのトリックというか象の暴走の理由は見当がついてしまうだろう。

 しかしながら、瞬一郎の語る知識の量には圧倒される。曲目、楽譜、そしてピアノに至るまで。音楽に詳しい人なら、さらに楽しめるのだろうなぁとは思うが、残念ながら私にはそんな素養はないのでねぇ・・・




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