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テンペスタ 最後の七日間 [読書・ミステリ]


テンペスタ 最後の七日間 (幻冬舎文庫)

テンペスタ 最後の七日間 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/10/07
  • メディア: 文庫


評価:★★★☆

主人公は30代後半の独身男・賢一。
東京で大学の非常勤講師をしているが、その薄給を補うために翻訳のアルバイトで糊口を凌ぐ日々。

ある日、田舎で暮らす弟・竜二から頼まれ、
一人娘のミドリを夏休みのあいだの1週間、預かることになる。

タイトルの ”テンペスタ” とは、”嵐” を意味するイタリア語のようだが 
”ヒロイン” であるミドリを形容する言葉として誠にふさわしい。

小学4年生で美少女といえる容姿ながら、口を開けば毒舌が飛び出す。
東京にやってきた彼女が最初に賢一にねだったのは、江戸時代の罪人の処刑場巡り(おいおい)とおよそ10歳の子どもとは思えない趣味嗜好の数々。

年齢不相応な知識も蓄えているようで、かなりの耳年増のようだ(笑)。

性格は自由奔放ながら、正義感もまた人一倍。
大人の事情で見過ごされがちな ”世の理不尽” にも敢然と異を唱えて噛みついていく。

さぞかし、学校では浮いているんだろうなぁと思わせるが
本人はケロリとしたものである。

先入観に囚われない子どもが、ものの本質を突く言動をする、
というのはよく見かけるパターンではあるが、本書はそれが文庫で300ページにわたって繰り広げられる。

中でも、西洋の有名絵画の画集を見せられたミドリが、
名画の数々をケチョンケチョンにこき下ろすシーンは痛快だ。

彼女の保護者を押しつけられた賢一こそ災難で、
ミドリに振り回されてさんざんな目に遭うのだが、その中で新たな刺激も感じるようになっていく。

さて、本書はミステリであるから、当然それだけでは終わらない。
ミドリと一緒に過ごす日もあと1日となった6日目の夜、ある ”事件” が起こる。しかしこれはまだ序の口。最後の7日目に至って、さらにとんでもない衝撃が賢一を襲う・・・

どちらの ”事態” も、物語の序盤からあちこちに伏線が張ってあり、
それがきれいに回収されていくのはお見事。

台風のような小娘に翻弄される中年男の悲哀(笑)を描いた
ユーモア小説のはず、だったのだけど、ラスト70ページでは雰囲気は一転、涙で文字が滲んでしまう展開に。
いやあ、こういうのには弱いんだよなぁ・・・


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