SSブログ

ノッキンオン・ロックドドア [読書・ミステリ]

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

  • 作者: 青崎有吾
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/03/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

「不可能」犯罪の解明を得意とする探偵・御殿場倒理(ごてんば・とうり)、
「不可解」事件の解明を得意とする探偵・片無氷雨(かたなし・ひさめ)。
タイトルの「ノッキンオン・ロックドドア」とは、
この2人の経営する探偵事務所の名前。ここに持ち込まれる事件を
解決していく2人の活躍を描くシリーズの第1弾。

彼ら2人とトリオを組むのは、大学時代の同級生にして
警視庁の女性警部補、穿地決(うがち・きまり)。

「ノッキンオン・ロックドドア」
画家の霞蛾(かすみが)英夫が殺される。
現場となったアトリエは内側から鍵のかかった密室状態、
遺体の周囲には彼の描いた6枚の風景画が散乱し、
そのうちの1枚は真っ赤に塗りつぶされていた・・・

「髪の短くなった死体」
小劇団『キクラゲ』のリーダー、善田ミカが殺される。
現場はマンションの一室、遺体は服を脱がされ、
さらに犯人は被害者の髪を切り取り、現場から持ち去っていた・・・

「ダイヤルWを廻せ!」
『死んだ祖父の残した金庫を開けてほしい』
『父の死に不審な点があるので調べてほしい』
同時に2つの依頼を受け、御殿場と片無は二手に分かれて
それぞれの事件を担当することになるが・・・

「チープ・トリック」
大手通信教育会社の重役・湯橋が射殺された。
自宅の窓の外から狙撃されたのだが、
彼の部屋には常に分厚い遮光カーテンがかかっており、
外から内部の人間を狙い撃つことは不可能だった・・・

「いわゆる一つの雪密室」
研磨工場の社長・茂呂田が殺された。
心臓を包丁でひと突きされ、即死だったと思われたが
現場は雪の積もった空き地の真ん中で、被害者以外の足跡はない・・・

「十円玉が少なすぎる」
『十円玉が少なすぎる。あと5枚は必要だ』
探偵事務所のアルバイトである、女子高生の薬子(くすりこ)さんが
登校時に耳にした言葉だ。話していたのはスマホで電話中の男性。
御殿場と片無は、この言葉から推理を巡らせていくが・・・
いわゆる『九マイルは遠すぎる』のパターンだね。
○○○○がらみってとこまでは誰でも想像がつくと思うんだけど
そこから先がもうひとひねり。

「限りなく確実は毒殺」
落選中の元衆院議員・外様(とざま)寛三が殺された。
資金集めパーティーの席で口にしたシャンパンに毒が入っていたのだ。
しかも、彼が手に取ったグラスが載っていた盆には
他にいくつものグラスがあったにも関わらず、
毒が入っていたのは被害者のものだけだった。
犯人はどうやって彼のグラスに毒を入れたのか・・・

どれも文庫で40ページ弱とコンパクトなつくり。
事件の内容も「密室」「足跡のない殺人」など
ミステリではポピュラーなテーマを扱ったものが多い。
今まで数え切れないくらい書かれてきたテーマだけど
作者はひねりを効かせて、新しい切り口を見せてくれる。

上にも書いたが、1編あたりのページ数が少なく、
事件の発生から探偵の介入までがざっくり端折られて
そのぶん、真相の解明に注力しているようだ。

とは言っても無味乾燥な雰囲気がしないのは、
登場するキャラたちが個性豊かだからだろう。

得意分野も異なり、見た目もかなり違う(表紙イラスト参照)という
探偵2人がコンビを組んでる、って設定はかなりユニークだろう。

常に駄菓子を手にしながら登場してくる穿地警部補も面白い。
今度は何を食べてるのだろう?と気になってしまう(笑)。

そして、ホームズに対するモリアーティ教授のように、
シリーズを通しての悪役も登場する。
御殿場・片無・穿地と大学で同期だった糸切美影(いときり・みかげ)は
本書では事件の黒幕として間接的に関わってくるのだが
次巻以降では直接対決することもあるのだろうか。

個人的に一番気になったのは、アルバイトの女子高生・薬師寺薬子さん。
「くすりこ」というネーミングもびっくりだけども
気立てのいい、至って素直な女子高生として描かれてる。とは言っても、
若い男2人の家政婦代わりに身の回りの世話をしているわけで
親御さんは心配にならないのかなぁ・・・などと変に気を回してしまう。

彼女の家庭環境や、この事務所で働くことになった経緯なども知りたいが
一編が40ページもないシリーズなので、
そこまで枚数(字数)を割けないのかも知れない。

続巻があるようなので、そちらでは
彼女の出番が多くなることを期待したい(おいおい)。


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント