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田嶋春にはなりたくない [読書・ミステリ]

田嶋春にはなりたくない (新潮文庫nex)

田嶋春にはなりたくない (新潮文庫nex)

  • 作者: 三兎, 白河
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/12/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公は田嶋春(たじま・はる)。法学部に通う女子大生だ。
表紙のイラストにあるように、美人の部類に入るくらいの容貌だが、
周囲の者は彼女を煙たがる。なぜなら彼女は ”正論モンスター” だから。

新入生歓迎会で、参加者全員の学生証を調べて年齢を確認する。
もちろん未成年の学生に飲酒させないためだ。

彼女が主張するのは正論。だから誰も面と向かって反論できない。
「空気を読まない」というか「同調圧力に屈しない」というか
日常的に ”なあなあ” で済ませていることにも容赦なく介入する。

でも、そんな彼女だからこそ、キャンパスで日々起こる
些細な事件の裏に潜むさまざまな事情に気づくことができる。

本書は章ごとに、春以外の誰かが語り手となっていて
基本的に一話完結形式なのだけど、全体がゆるやかにつながっている。

「第一章 肩を濡らさない相合傘」
管野は田嶋春と同じサークルの上級生。
朝の通学でたまたま春と遭遇し、そのまま大学へ向かう。
二人の前を歩いていたのは、春の同級生の女子・河本。
彼女の持っている傘を見た春は、管野に
「彼女は諦めた方がいいですよ」と言い出す・・・

「第二章 自作自演のミルフィーユ」
大学職員の深井は、看護師である妻とのすれ違い生活に疲れ、
女子学生と不倫関係になっていた。
そんな妻から、久しぶりの外食を提案される。
食事中、突然「いま、恋をしているでしょう?」と言われる。
「怒らないから話して」とも。そこで正直に不倫のことを打ち明けると
突然烈火のごとく怒りだし(まあ当たり前だが)その学生を呼べという。
仕方なく女子学生に連絡をするが、レストランに現れたのは
春(もちろん彼女が不倫相手ではない)だった・・・
この作品は、何かのミステリーのアンソロジーにも収録されてたはず。

「第三章 スケープゴート・キャンパス」
一浪して大学に入った髙橋奏(かなで)は、サークルの新入生歓迎会で
田嶋春のモンスターぶりに接して以来、彼女を目の敵にしてきた。
なんとかして彼女をサークルから追い出そうと算段を巡らすが、
春と同じように周囲から敬遠されている学生がもう一人いた。
それは「歌子」という名の50代の女性だったのだが・・・

「第四章 八方美人なストライクゾーン」
春の所属するサークル『N・A・O』は、野球愛好会『TOUCH』と
部室の使用権を賭けて野球の試合をすることになった。
双方とも助っ人を呼ぶのはOKである。
『N・A・O』は、田嶋春のバイト先の先輩を助っ人に呼ぶことにする。
彼は関西の甲子園出場常連校の出身だというのだが・・・

「第五章 手の中の空白」
語り手の ”俺” は遊園地で観覧車の運転員をしているが
ゴンドラに密かに盗聴器を仕掛け、一周する15分間の
客たちの会話を聞くこともあった。
ある日、”俺” と一緒に観覧車のアルバイトをしている田嶋春から
彼女がサークル『N・A・O』の前代表・八代たちと
観覧車デートをすることを聞く。しかしその前日、
その八代たちが観覧車に乗りに来た。
不審に思った ”俺” は、彼らの会話を盗聴するのだが・・・

田嶋春という、なかなか特異なキャラにまず戸惑う。
正論をぶち上げ、場の空気を読まず、よかれと思えば
相手がどんなに嫌がろうが「善意の押しつけ」も躊躇わない。

まあ現実にはこんな人はいないだろうし、
もしいたら絶対お近づきにはなりたくないだろう。

かといって嫌いかといえばそうでもない。
しばしば天然ボケとしか思えないリアクションも返ってくるし
第三者から見れば愛嬌があるお嬢さんでもある。
それになんと言っても「かわいい」は正義だ(笑)。

このシリーズはまだ継続しているみたいなので、
続きが出たら、たぶん読んでしまうんだろうなぁ・・・


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