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怨み籠の密室 [読書・ミステリ]

怨み籠の密室 (双葉文庫)

怨み籠の密室 (双葉文庫)

  • 作者: 小島正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

岐阜県の謂名(いな)村に産まれた飛渡(ひわたり)優哉は
4歳の時に母・貴子と死別し、その直後に
父・草吾(そうご)とともに埼玉県へ移住してきた。

そして15年の歳月が流れ、昭和61年3月。
大学生となっていた優哉を残し、草吾もガンで死亡してしまう。
「謂名村・・・殺され・・・」という謎の言葉を残して。

生前、ほとんど故郷のことを語らず、里帰りしたことも一度もない父。
優哉は貴子の死因を「病死」と教えられてきたが
ひょっとして殺されたのではないか・・・という疑問に囚われる。

謂名村は岐阜県の山間にある、三方を山に囲まれた鄙びた里で
美濃焼という陶磁器の産地でもあった。

優哉は父の言葉の意味を調べようと、謂名村を訪れる。
両親と暮らしていた当時の家を見つけた優哉は、
周囲の住民に話を聞こうとするが、
みな「飛渡草吾」の名を出した途端に態度が一変する。
余所余所しくなり、過去のことについて一切口をつぐんでしまうのだ。

やがて優哉は、父・草吾が住民たちから ”村八分” 扱いに
なっていたことを知る。どうやら
「逆らってはいけない人に逆らった」のが理由らしい

 当時は昭和40年代。明治や大正の頃ならともかく
 終戦後20年も経って ”村八分” とは大時代だなあ、とも感じたが
 小さな集団だからこそ、権力者に逆らっては生き辛いというのは
 時代に関係なく起こりうることではあるかな・・・とも思った。

草吾の兄で、謂名村で医院を経営している伯父・文雄は
優哉に残された唯一の肉親だったが、彼の態度もまた素っ気ない。

文雄から貴子の死亡時の状況を知らされる優哉。
当時の彼女は美濃焼の工房「狩海(かりかい)窯」で働いており、
遺体もそこで発見された。死因は心筋梗塞だったという。

優哉はそれ以上の調べを断念していったん埼玉へ戻り、
旧知の探偵・海老原浩一と共に再び謂名村を訪れるが、
そこで殺人事件と遭遇する。

被害者は能代貴和子。貴子の陶芸の師匠で
「狩海窯」の経営者である能代勲の妻だった。
現場は完全な密室状態で、警察は自殺と判断するのだが・・・

ガチガチの本格ミステリを書く人なのだけど
本書も気合いが入っている。

密室トリックもなかなか○○いし、
草吾が ”村八分” に至った経緯、というか
飛渡家内部の確執がドロドロしていて凄まじい。

冒頭に登場人物一覧が載っているのだけど、
なにせ20年にもわたる事件であるし、
途中でお亡くなりになっている方も少なくない。
つまり、実質的な登場人物はさほど多くないのだけど、
それでも、この結末を引っ張り出してみせる手腕はお見事。

「意外な真相」というのはミステリの常套句で
読者はいろんな可能性を思い浮かべながら謎解き部分を読む。
ダマされないぞ、って身構えているわけなんだが
このラストには見事にハメられてしまいました。脱帽です。


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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-06-06 10:45) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-06-06 10:45) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-06-06 10:46) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-06-06 10:46) 

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