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私を知らないで [読書・ミステリ]

私を知らないで (集英社文庫)

私を知らないで (集英社文庫)

  • 作者: 白河 三兎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/10/19
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公は中学2年生の黒田慎平。
父親が頻繁に転勤をするので2~3年ごとに転校をくり返してきた。

慎平は、新たに転入したクラスで不思議な美少女と出合う。
周囲から「キヨコ」と呼ばれ(これは本名ではない)、
あからさまな虐め行為はないが全員から無視されている、という存在。

クラスは、三田(ミータン)という女子を頂点とした
カーストを形成していて、慎平はその ”権力構造” に配慮しつつ、
キヨコとは距離を取って学校生活を始めていく。

この慎平という少年が一筋縄ではいかない。
転校をくり返してきて、距離が遠くなれば、それまでの友人たちとも
簡単に疎遠になってしまうことを何度も経験している。
だからいつも醒めた目で周囲を見ていて、転入先のクラス内の人間関係や
担任の性格などを素早く見抜く能力にも長けている。
信条は、なるっべく他人と係わらず、目立たぬように生きること。
そのためには、時として冷酷にも見える行動を取ることもある。
要するに、他人に対して一片の期待も持っていないのだ。
こういう主人公は困る。読んでいてなかなか好きになれないから(笑)。

 もっとも、彼がそうなってしまったのには
 ちゃんとした理由があるのだが
 それが明かされるのはかなり後の方になる。

そこへ新たな転校生・高野が現れる。
彼は慎平とはおよそ対極的な熱血漢だった。
転校初日から、慎平に対してもどんどんと踏み込んできてくるのだが、
ある話題をきっかけに、慎平は高野から殴られてしまう羽目に。
それは、キヨコを巡る「ある噂」だった。

しかしその日を境に、2人は奇妙な友情で結ばれることになる。

慎平のことを「一筋縄ではいかない」と書いたが
キヨコも高野も負けず劣らずだ。

キヨコが悲惨な家庭環境にあることは序盤から語られているが、
読者は同情こそしても、頑ななまでに他人を拒絶するその態度に
積極的に好きになれる人は少ないだろう。

デビュー作『プールの底に眠る』でも感じたが
作者の創造するキャラクターはみな、
わかりやすさとは無縁の、屈折した性格の持ち主ばかり。
でもまあ、それが作者独特の持ち味ともなっているのだけど。

慎平と高野は、キヨコを巡る「噂」の真偽を確かめるために
休日のキヨコを尾行することを企てるのだが・・・

物語は、この3人を中心に展開する。
彼らの行動が結果的にクラスの雰囲気をも変えていくことになる。
中盤での文化祭のエピソードは青春小説としては感動的だが、
そこがゴールではない。

その後に訪れるクライマックスでは、
キヨコが抱えこんできた、ある秘密が明らかになる。

このあと、ラストについて書く。
ネタバレしないように書くつもりだけど、
これから本書を読んでみようという人は、読まないほうがいいかな。

終盤、キヨコを ”窮地” から救い出すために作者の用意した方法は
正直言って ”意表を突く” どころのものではなかった。
予想の遥か斜め上というか、ウルトラ級の高難易度の技というか・・・
読んでいて、最初は意味がよく分からなかったよ。

キヨコに ”幸福の最大値” を与えるため、なのだろうが
実際には、かなり実現可能性の低い方法だとは思う。
フィクションとしてならば「あり」なのかもしれないが・・・

でもねえ・・・私はちょっとこの結末は好きになれませんでした。

それは、慎平や高野のように、中学2年生の視線から
物語を見ることができないからだろう。
彼らの行動は純粋で、それ自体は理想なのだろうけども。

でも、私はどうしても、彼ら彼女らを取り巻く
大人の立場から考えてしまう。そうすると、この結末には
なかなか受け入れがたいものを感じてしまうんだよねぇ・・・

それは私が、アタマの固いオジさんだから、なのだろうなぁ・・・


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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-02 01:10) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-05-02 01:10) 

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