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星系出雲の兵站 (第一部・全4巻) [読書・SF]

全9巻という大長編SF。
前半4巻が第一部、後半5巻が第二部というつくり。
今回は前半の第一部について書く。

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 林 譲治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: 文庫
星系出雲の兵站2 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 林 譲治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/10/31
  • メディア: 文庫
星系出雲の兵站 3 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站 3 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 林 譲治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: 文庫
星系出雲の兵站 4 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站 4 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 林 譲治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 文庫
時代は遙かな未来。地球を発した人類の播種船は
ある星系に到達、そこに新たな社会を築いていた。

その星系は ”出雲(いずも)” と名付けられ、
やがてAFD航法(いわゆる ”ワープ航法”)を開発した人類は
近隣の4つの星系、八島・周防・瑞穂・壱岐へ移民を開始、
それらは独立した国家群となり、5つの星系国家による
”人類コンソーシアム” が成立する。
このとき、播種船の地球出発から4000年が経過していた。

伝承によれば、異星人の脅威から人類を守るための
播種船計画だったという。そのため、
人類コンソーシアムの社会機構のいくつかは
異星人による侵略を前提に構成されているものもあった。

出雲星系から20光年離れた壱岐(いき)星系で、人類外文明の
産物と思われる無人衛星が多数発見されるところから物語は始まる。

やがて異星人のものと思われる宇宙船が現れ、
人類は彼らを ”ガイナス” と呼称することになる。

ガイナスは人類側からの呼びかけに一切答えず、
敵対的な行為を繰り返し、壱岐星系外縁を巡る
準惑星・天涯(てんがい)に接近する。

天涯は表面を氷原が覆っているが、地熱による液体の海も存在し、
鉱物資源も豊富な星で、ガイナスはそこを橋頭堡とするつもりのようだ。

第一部では、主に準惑星・天涯の争奪を巡る、
人類vsガイナスの一進一退の攻防戦が描かれる。
地上戦あり、艦隊戦あり、巨大兵器ありと
スペースオペラ・ファンの期待も裏切らない。

異星人の侵略を描いたミリタリーSFとしてひと味違うのは
タイトルにもあるとおり ”兵站” に焦点を当てているところだろう。

異星人との戦いの最前線となる壱岐星系は、
戦争遂行のための兵站の主力とならざるを得ない。

しかしながら壱岐星系の人類社会は能力よりも家柄が幅をきかせ、
男女別姓すら認めない男尊女卑の価値観に染まっている。
当然ながら工業生産的にも非効率極まりない旧態依然とした社会構造。

人類コンソーシアムが異星人との戦争を継続していくためには、
壱岐の社会的改革は避けて通れない。
星系国家・出雲はそれを実現するために画策するが
壱岐から見ればそれは内政干渉であり、
当然ながら改革に対して抵抗する勢力も現れる。

「人類vsガイナス」という ”表の戦い” と
「出雲vs壱岐」という ”裏の戦い” の、
2つのストーリーが並行して語られていくわけだ。

複数の星系にまたがる異星人との戦い、という
壮大なスケールの物語のため、群像劇の形式となっていて
全編を通しての主役というのはいないのだが
第一部でのメインキャラを挙げるとするなら次の6人か。

壱岐星系統合政府筆頭執政官・タオ迫水は
政権No.2なのだが、危機管理委員会の議長に就任、
ガイナスとの戦いでは壱岐星系の全権を握る。
有力家系出身ながら大局的な視点を持つ人物で
出雲星系からの圧力をかわし、壱岐星系の独立を守りながら
社会の改革に取り組んでいこうとする。

五星系によって構成されるコンソーシアム艦隊(いわゆる ”連合軍”)
参謀本部の水神魁吾(みずかみ・かいご)大佐、
軍務局の火伏礼二(ひぶし・れいじ)大佐は士官学校時代からの親友同士。

水神はやがて対ガイナス戦の最前線で指揮を執るようになる。
火伏は壱岐の工業社会をドラスティックに改革していこうとするキャラで
第一部においてはタイトルの ”兵站” の重要性を体現する人物でもある。

女性キャラも強力だ。

シャロン紫壇(しだん)は、降下猟兵部隊の中隊長。
降下猟兵とはいわゆる空挺部隊で、AS(armored soldier)も率いる。
 ASは人型の小型戦車とも言うべきもので
 『装甲騎兵ボトムズ』のATみたいなもの。
準惑星・天涯において、ガイナスの兵士と白兵戦を繰り広げる。

クーリア迫水はタオ迫水の妻。夫と同じく有力家系の出身で
父親のアーロン安久は、壱岐星系の旧体制の権化のような人物。
朽綱八重(くちつな・やえ)は火伏礼二の妻。
元軍人だが実は出雲星系の大企業総帥の娘。
この2人が、それぞれ夫の目的達成を支援するべく
権謀術数の限りを尽くすのも読みどころなのだが、
そのスケールが桁違い。なんと壮大な ”内助の功” であることか。
そして2人とも、夫婦仲は実に円満でラブラブでとってもよろしい(笑)。

彼ら彼女ら以外のサブキャラに至るまでしっかり描いてあって
個性的な登場人物には事欠かないのだけど書き切れない。

各シーンの終わりはほぼ毎回、キャラ同士の会話で締められるのだが
特筆すべきは、そこで交わされる台詞が
ユーモアとエスプリに富んでいて、実に洒落ていること。
いつもここでクスッと笑ってしまう。

さて、ガイナスは人類に対して極端なほど
自分たちの情報を与えないように振る舞っているのだが
幾多の戦いを通じて人類は少しずつ彼らについて知っていくことになり
やがてガイナス兵の意外な ”正体” が明らかになる。

しかし第一部全4巻が終わってもガイナスとの戦いは終わりが見えず、
意思疎通もできず、彼らがどこから来たのか、何を目的としているのか、
どんな社会体制を築いているのか、皆目わからない。
しかし4巻のラストでガイナスの母星系の位置が特定される。

第二部は、その星系へ調査艦隊が派遣されるところから始まる。

やっぱりスペースオペラは面白い。


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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-01-31 03:07) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-01-31 03:07) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-01-31 03:07) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2021-01-31 03:07) 

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